Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

キュリー夫人の母国で

2008-06-23 19:18:08 | Weblog
昨夜(現地時間)は,ワルシャワ工科大学の女子大生の案内で「ショー」を見に行く。場所は一昨日食事したレストランの隣り。参加したのは6人。日本からの交換留学生,発表に来た修士のお母様なども含むこのグループ自体が,まさに非線形現象としかいいようがない。狭い空間に老若男女のポーランド人がびっしり座っている。むし暑い。狭い舞台に次々に男や女が現れては歌って踊る。おそらく恋の歌なんだろうけど,ポーランド語なので意味は全くわからない。

ショーは1時間ちょっとで終了。観客は激しい拍手を送っている。エンタテイメントというものはその土地の文化のなかで進化するものであり,異邦人にはその真価を理解することは難しい(・・・なんてことを考えていると「エンタテイメント」プロジェクトのことがちらっと頭をよぎる)。だが,ここを紹介してくれた学生は,ポーランド語で川端康成を読んで日本文化が好きになり,愛知万博のポーランド館で働いた経験があるという(いまの専攻は物理学だが・・・)。つまり,文化の壁が簡単に越境されるのまた事実である。

ショーが終わったのは夜8時過ぎだが,外はまだまだ明るい。しかし,この日は大人しく部屋に帰り,帰国後に待っている仕事の準備をする。今回の訪問では,ワルシャワの目玉である旧市街に行くことができなかった。形のあるものはいつか見ることができる ・・・というのは,この日小野崎さんが吐いた名文句だ。いつかまた,ここに来ることがあるだろうか・・・ かなり微妙だが,発展途上にある国だからこそ,今後どのように変化していくかわからない。近い将来,白タクが激減していることを祈りたい・・・。

翌朝,ワルシャワ空港に向かう。セキュリティ・チェックを終えてからポーランド通貨を円に換えるつもりだったが,なかにある銀行がなぜか閉まっている! しかし,この通貨を他国で交換できそうにないから,すべて土産物に使うことにする。時間がないので単純に値段だけを見て,最後はオーストラリアの赤ワインを購入して帳尻を合わせた(その価格に見合ったワインかどうか・・・)。さらにまた,スキポールへの到着が大幅に遅れたため,成田へ向かう便へ大急ぎで移動。着いたらほとんど乗客が座っていて,日本の新聞はとっくになくなっていた。

狭いエコノミーシートに身を置き,よくいえばテキパキしたKLMの客室乗務員と接していると,自分がまるで家畜のように思えてくる。旅の終わりには必ずこの苦役が待っているのだ(しかも,年を取るにつれ,ますます苦痛が強まっていく)。ぼくは一生,エコノミークラスの客として終わるのか・・・ 航空料金を倍払えば(あと20万円出せば)ビジネスクラスに移ることができるが,公費で行く以上それはできない。では私費で・・・明日死ぬと思えばそうもできるが,まだその踏ん切りはつかない。

今回の出張では,これまでマーケティングその他の学会で見かけることがあった,目から鼻に抜けるスマートさを持った人々とは違う,ひたすら愚直に知的探求を目指す人々と触れることができ,エモーショナルな部分で大きな影響を受けたように思う。ポーランドが生んだ最も有名な人物はショパンだが,その次にコペルニクスやキュリー夫人といった科学者の名前が来る。「科学」ということばを使う以上,それに相応しい生き方をしなくてはならない,と思ったりする。