今週の土曜の午後は、日本マーケティング・サイエンス学会研究大会に参加した。午前中は、関東学生マーケティング大会を聴講していたが、早稲田と茗荷谷は直線で結ぶとかなり近いことを今回初めて知った。昔の学生なら、おそらく、歩いて行ける距離だったのだろう・・・。
最初のセッションで、私と桑島由芙さんの連名で「イデオロギー・価値観・消費」というタイトルの報告を行う。政治心理学者として高名なイングルハートの価値尺度と、保守-リベラル、右-左というイデオロギー軸が、いくつかの消費項目とどう関連するかを分析した。
米国では保守-リベラルの軸と消費・ライフスタイルの関係がよく論じられる。日本でもそうした視点に立つ本が出始めており、それがどこまで通じるかを、データを使って検証したのが本研究である。
一言でいえば、イデオロギー自体よりは、それとはほぼ独立の、イングルハートの「自己表現的価値」がかなりのケースで消費行動やライフスタイルと関連していた。まれにイデオロギーと関連する項目もあり、何がそうした偏相関を生んでいるのか、個人的には興味深い。
もう少しきちんと分析して(ただしコメンテータの杉田善弘先生が仰った SEM は用いずにw)いずれどこかに投稿したい。もっとも、そうするには既存研究のレビューや理論構築に時間を取られそうである。何といっても、イデオロギーも価値観も完全な門外漢なのだから・・・
予想されることだが、多くのマーケティング・サイエンスの研究者にとって、イデオロギーなどというものは全く別世界の話題だし、価値観ですら古臭い概念かもしれない。とはいえ、フロアからイングルハートとシュワルツの交流に関するコメントをもらうなど勉強になった。
今回の大会の目玉の1つは、東大の星野崇宏さんが始めた「行動経済学と産業組織論にマーケティングモデルの深化」という部会だろう。今回は名古屋大学の安達貴教先生が、耐久財の保証で生じる advantageous selection をデータに基づき解析した結果を報告されていた。
advantageous selection とは、簡単にいえば、保証が必要のない(きちんとした?)ユーザほど有償の保証延長をするので、企業は儲かる一方、という話だ。マーケターはこれを肯定的に捉えるかもしれないが、消費者厚生(つまり経済学)の観点からは、ゆゆしき問題だ。
安達さんからは懇親会の席で、われわれの研究に関するコメントもいただいた。なんでも、選挙での投票に離散的選択モデルを適用する研究をされたことがあり、それに対する経済学会でのコメントを教えてもらうなど、興味深い話を伺った。異分野の参入はいつも刺激的である。
米国ですでに起きているように、経済学者のマーケティング・サイエンスへの参入は今後日本でも増えるに違いない。同じ現象に、ほぼ同じデータを用いて分析しながら、関心の持ち方が微妙に違う点が、面白いケミストリ−(ときには爆発w)を生むのではないかと期待したい。
他にもいくつか興味深い発表を聴いたが、長くなるので省略したい。それにしても、会場で、知らない顔の聴講者を見かけることが多くなり、世代交代が着々と進行している印象も受ける。ただ、規模が大きくなっているように見えないのは、よいことなのか、悪いことなのか・・・。
自分が最も関心を持つ複雑系科学、エージェントベース・モデリングなどの研究仲間が増えない(ほとんどいない)ことも残念。もっとも、そういう本人が、回帰分析を用いたイデオロギーの研究などを発表しており、一貫していない。ともかく JIMS、しばらくお暇いたします(笑)。
最初のセッションで、私と桑島由芙さんの連名で「イデオロギー・価値観・消費」というタイトルの報告を行う。政治心理学者として高名なイングルハートの価値尺度と、保守-リベラル、右-左というイデオロギー軸が、いくつかの消費項目とどう関連するかを分析した。
![]() | Modernization, Cultural Change, and Democracy: The Human Development Sequence |
Ronald Inglehart , Christian Welzel | |
Cambridge University Press |
米国では保守-リベラルの軸と消費・ライフスタイルの関係がよく論じられる。日本でもそうした視点に立つ本が出始めており、それがどこまで通じるかを、データを使って検証したのが本研究である。
一言でいえば、イデオロギー自体よりは、それとはほぼ独立の、イングルハートの「自己表現的価値」がかなりのケースで消費行動やライフスタイルと関連していた。まれにイデオロギーと関連する項目もあり、何がそうした偏相関を生んでいるのか、個人的には興味深い。
もう少しきちんと分析して(ただしコメンテータの杉田善弘先生が仰った SEM は用いずにw)いずれどこかに投稿したい。もっとも、そうするには既存研究のレビューや理論構築に時間を取られそうである。何といっても、イデオロギーも価値観も完全な門外漢なのだから・・・
予想されることだが、多くのマーケティング・サイエンスの研究者にとって、イデオロギーなどというものは全く別世界の話題だし、価値観ですら古臭い概念かもしれない。とはいえ、フロアからイングルハートとシュワルツの交流に関するコメントをもらうなど勉強になった。
今回の大会の目玉の1つは、東大の星野崇宏さんが始めた「行動経済学と産業組織論にマーケティングモデルの深化」という部会だろう。今回は名古屋大学の安達貴教先生が、耐久財の保証で生じる advantageous selection をデータに基づき解析した結果を報告されていた。
advantageous selection とは、簡単にいえば、保証が必要のない(きちんとした?)ユーザほど有償の保証延長をするので、企業は儲かる一方、という話だ。マーケターはこれを肯定的に捉えるかもしれないが、消費者厚生(つまり経済学)の観点からは、ゆゆしき問題だ。
安達さんからは懇親会の席で、われわれの研究に関するコメントもいただいた。なんでも、選挙での投票に離散的選択モデルを適用する研究をされたことがあり、それに対する経済学会でのコメントを教えてもらうなど、興味深い話を伺った。異分野の参入はいつも刺激的である。
米国ですでに起きているように、経済学者のマーケティング・サイエンスへの参入は今後日本でも増えるに違いない。同じ現象に、ほぼ同じデータを用いて分析しながら、関心の持ち方が微妙に違う点が、面白いケミストリ−(ときには爆発w)を生むのではないかと期待したい。
他にもいくつか興味深い発表を聴いたが、長くなるので省略したい。それにしても、会場で、知らない顔の聴講者を見かけることが多くなり、世代交代が着々と進行している印象も受ける。ただ、規模が大きくなっているように見えないのは、よいことなのか、悪いことなのか・・・。
自分が最も関心を持つ複雑系科学、エージェントベース・モデリングなどの研究仲間が増えない(ほとんどいない)ことも残念。もっとも、そういう本人が、回帰分析を用いたイデオロギーの研究などを発表しており、一貫していない。ともかく JIMS、しばらくお暇いたします(笑)。