Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

2011年 研究の抱負

2011-01-01 22:52:52 | Weblog
自分は何を研究しているのだろう。それをキーワードにまとめると Complexity と Creativity の2つに集約される。そのことを Twitter でつぶやいたところ, Simplicity を加えなさいと師匠から助言いただいた。それは,研究が最終的に到達する境地を指すように思われる。そこで

 Complexity * Creativity → Simplicity

という式で整理することにした。

ここでいう Complexity とは「複雑適応系」の研究であり,矮小化すれば Agent-Based Modeling (ABM) になる。限定合理的な主体による相互作用をシミュレーションする,という方法論でマーケティングと消費者行動を分析する。この異端的な考え方に,いっそう没入したいと思っている。

消費者間の相互作用を研究するという意味で,いま最も旬なソーシャルメディアの研究は,今年の研究活動の中心の1つになるだろう。これについては膨大なデータが入手可能になる一方,肝心の情報が抜けていたりする。そこで「構成的アプローチ」が一定の役割を果たすと考えている。

とはいえ,正統的な計量的研究から完全に足を洗うわけではない。選択モデルの発展のために,共同研究を通じて「最後のご奉公」的な仕事をしたいと思っている。もう1つは,科研費申請中の経済政策と世論形成に関する研究。経済学,政治学,社会学等の研究者とコラボがどうなるか楽しみだ。

Complexity は基本的に社会関係から生まれる。しかし,人間の頭脳という「心の社会」にある Complexity も重要だ。博論以来のテーマ「選好の進化」の研究に立ち返るためには,認知科学的な Complexity へのアプローチを考える必要がある。その最終目標に少しでも近づくことができるか。

Creativity については,研究よりは教育での取り組みが先行している。しかし,クリエイティブ・ワーク/ライフ,インサイト獲得,アイデア発想支援,デザインと製品開発といった,Creativity と関連する新旧の研究プロジェクトがある。少しは結果を世に出していかなくてはと思う。

ソーシャルメディアの研究を,世のなかに役立つ方向で発展させるという構想もある。ソーシャルメディアは人々をつなぐ。しかし,大きなカスケードを生むには物語が準備され,それを受け入れる空気が醸成され,最後に仕掛けが必要になる。これは,Complexity と Creativity が交錯する領域に入る。

もうひとつ,C で始まるプロジェクトも準備中だ。Carp Assisting Research Project,略して CARP というもの。その話をすると苦笑する人が多いが,メンバーは真剣そのものだ(少なくともぼくはそうだ)。とはいえ,現状はあまりに基礎がないので,そこから勉強を始めなくてはならない。

これら以外に現在進行中あるいは保留中の仕掛品が多数ある。そして今後も,さまざまな日常業務に追われるはずである。その結果,今年の年末には,ここで抱負にあげたことの一部しか実現できていないだろう。しかし,その歩留まりが少しずつ改善されていけばよい。とにかく賽は投げられた!

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2 コメント

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本年も宜しくお願い致します (ふーた・ろーさ1号)
2011-01-02 09:18:59
意欲的な研究の抱負ですね(微笑)。
その中の2つ(1.5??)に関わらせて頂けるのがすごくうれしいです!!
先生と一緒に、今年も良い研究ができることを楽しみにしております(再微笑)。
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具体から抽象へ (mizuno)
2011-01-02 16:36:55
今回は抱負を抽象的に語ることにしました。
成果を検証しにくくするためか,
大事な原則を銘記させるためか・・・
今年もよろしくお願いいたします。
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