Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

2010年の「世のなか」を振り返る

2010-12-31 22:43:50 | Weblog
この1年の「世のなか」を振り返ると,政治のことを語らざるを得ない。なぜなら,一昨年の夏の政権交代がさまざまな政治的争点を浮き上がらせ,有権者がその都度,態度を問われるようになったからだ。事実,これほど頻繁に世論調査が行われたことは過去になかったと思われる。そして,内閣の支持率がこれほど激しく乱高下することもなかったのではないか。

民主党政権は一昨年の総選挙で圧勝した。それは一時的な現象ではない。自民党長期政権をそろそろ終わらせたいという気分が,有権者のなかにずっと以前からあったと考えられる。だが有権者の間に,それ以上の具体的な合意はなかったのではないだろうか。残念なことに民主党内部にさえ,ポスト自民党政治への一致したビジョンがなかったように思われる。

変革を望む国民の気持ちはかなり強かったので,鳩山内閣,菅内閣への支持率が低下しても,民主党への支持率はさほど下がらなかった。だが,最近になってそれもなくなり,自民党への支持率は民主党への支持率を少し上回るようになった。一方,みんなの党への支持率は伸び悩んでいる。次の政治的多数派がどんなものになるのかは,まだ不透明である。

民主党への失望が明確になったいまこそ,有権者が民主党へ託した夢は何であったかを問い直す必要がある。それが「仕分け」をより徹底して,巨大な官僚制度をスリム化することなら,みんなの党が政界再編成の軸になる。子ども手当等の社会のセーフティネットを強化したいなら公明との連立,財政再建を重視するなら民自大連立が支持されるだろう。

有権者は実際のところ,どのような政策を支持するのだろう?あるいは,もっと好ましい,実行可能な政策パッケージがあるだろうか?多くの有権者は公務員のリストラ,政府のスリム化を支持する一方で,自分の業界や地域への政府の手厚い援助を望んでいる。このような連立方程式を解くことは,どのような政権にとっても非常に難しいはずである。

こうした閉塞状況を外から打ち破ろうとしているかのように見えるのが,大阪府の橋下知事や名古屋の河村市長である。そこに東京都知事選への立候補が噂される東国原氏が加わるかもしれない。彼らは,既存の議会,政党を飛び越して市民とつながろうとする。既存の政党に飽き足らない層の支持を得て,彼らが無視できない政治勢力になるかもしれない。

その意味で,春の統一地方選挙は注目に値する。それは「政治のイノベーション」につながると期待したくなる。しかし,ぼくはそれ以上に懸念の思いが強い。既得権益にまみれた議員と役人,そこに大胆に切り込んでいく改革の旗手たる首長,という単純化された構図に落とし穴はないか。健全なる保守主義,漸進主義の立場を再評価したいと考える。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。