午前中は「ロングテール・ビジネス」プロジェクトの中間報告。そこで判明した問題点を踏まえ,次のステップに進むことに。午後は「取材」を受ける。夜は「企業・産業の進化研究会」に出かける。進化経済学会と東大MMRC が共同で開催する研究会だ。塩沢由典先生を筆頭とする進化経済学会のメンバーと,藤本隆宏先生を筆頭とする実証志向の東大の経営研究者を中核にしつつ,約20人ほどの研究者や院生が集まった。マーケティングを専攻する人も数人いた!
参加者たちの自己紹介や今後の運営方針についての議論のあと,藤本先生が Lean Capability Building and Product Architectures - An Evolutionary View and Its Application と題する発表をされる。冒頭,経済学が「経済-産業-企業」というトライアングルを扱うのに対して ,経営学は「産業-企業-現場(field)」というトライアングルを扱うと指摘。これらのトライアングルは産業-企業という辺で接するが,こと産業論に関しては,経営学が貢献する余地が大きいという。
藤本先生の話はその後「能力構築とアーキテクチャ」というメインパートに入っていく。この会の趣旨にふさわしく,そこで進化論的な枠組みがいかに有効であるかが論じられる。製品-プロセス・アーキテクチャの本質は「デザイン情報」にある。そう考えると,「ものづくり」の原理は狭義のモノに限らず,サービスのような無形財にも拡張可能となる。そうした拡張の成功事例として,イトーヨーカドーやハーレダビッドソン(ジャパン)の分析が紹介される。
質疑応答でぼくは,日本の製造業ではものづくりの能力が非常に高いのに,市場での高付加価値性が低く,低収益に甘んじているという藤本先生自身が『日本のもの造り哲学』などですでに指摘している問題を挙げ,それが上の議論でどう説明されるかを聞いてみた。それに対する答えは,それはブランド力の問題で,結局本社の能力が現場に比べて劣っている,つまり「強い現場,弱い本社」が問題だというもの。確かに上述の本にそう書いてあった。忘れていた。
そのあと,会場での議論はすぐ「管理会計」や「原価企画」の話に向かった。ここに集まった人々の少なくとも何人かは,マーケティングよりは会計学のほうに関心を持っているようである。しかしながら,企業や産業に対する進化論的なアプローチを目指そうとするプロジェクトにおいて,マーケティングに出番がないなんてことはないと信じたい。というのは,まさにサービスがそうであるように,顧客をビジネスシステムのなかに組み込まざるを得ないからだ。
消費者選好の進化・・・ ぼくにとっては博士論文以来のテーマであり,この会がそこに本格的に回帰する契機となるかもしれない。問題はそれによって,産業とか企業とかいう,このところずっと避けようとしてきた要素に,結局向き合うしかなくなることだ。そうなると,これまで逃げまくってきた会計学などについても,勉強しなくてはならなくなるかもしれない。
参加者たちの自己紹介や今後の運営方針についての議論のあと,藤本先生が Lean Capability Building and Product Architectures - An Evolutionary View and Its Application と題する発表をされる。冒頭,経済学が「経済-産業-企業」というトライアングルを扱うのに対して ,経営学は「産業-企業-現場(field)」というトライアングルを扱うと指摘。これらのトライアングルは産業-企業という辺で接するが,こと産業論に関しては,経営学が貢献する余地が大きいという。
藤本先生の話はその後「能力構築とアーキテクチャ」というメインパートに入っていく。この会の趣旨にふさわしく,そこで進化論的な枠組みがいかに有効であるかが論じられる。製品-プロセス・アーキテクチャの本質は「デザイン情報」にある。そう考えると,「ものづくり」の原理は狭義のモノに限らず,サービスのような無形財にも拡張可能となる。そうした拡張の成功事例として,イトーヨーカドーやハーレダビッドソン(ジャパン)の分析が紹介される。
質疑応答でぼくは,日本の製造業ではものづくりの能力が非常に高いのに,市場での高付加価値性が低く,低収益に甘んじているという藤本先生自身が『日本のもの造り哲学』などですでに指摘している問題を挙げ,それが上の議論でどう説明されるかを聞いてみた。それに対する答えは,それはブランド力の問題で,結局本社の能力が現場に比べて劣っている,つまり「強い現場,弱い本社」が問題だというもの。確かに上述の本にそう書いてあった。忘れていた。
日本のもの造り哲学藤本 隆宏日本経済新聞社このアイテムの詳細を見る |
そのあと,会場での議論はすぐ「管理会計」や「原価企画」の話に向かった。ここに集まった人々の少なくとも何人かは,マーケティングよりは会計学のほうに関心を持っているようである。しかしながら,企業や産業に対する進化論的なアプローチを目指そうとするプロジェクトにおいて,マーケティングに出番がないなんてことはないと信じたい。というのは,まさにサービスがそうであるように,顧客をビジネスシステムのなかに組み込まざるを得ないからだ。
消費者選好の進化・・・ ぼくにとっては博士論文以来のテーマであり,この会がそこに本格的に回帰する契機となるかもしれない。問題はそれによって,産業とか企業とかいう,このところずっと避けようとしてきた要素に,結局向き合うしかなくなることだ。そうなると,これまで逃げまくってきた会計学などについても,勉強しなくてはならなくなるかもしれない。
ところで、研究会メンバーが「マーケティング」に興味がないなんてありえないとおもいます。これまでそういう報告者が見つかっていないだけです。ですから、次回は水野さんがぜひ名乗り出てください。
このプログの最初に「ロングテール・ビジネス」プロジェクトの中間報告とありますが、これはすでに終了しましたか。
じつはわたしもロングテールに興味があって、今度の『関西経済論 原理と議題』
http://shiozawa.net/chosho/index.html#kansaikeizairon
の第2章第8節でロングテール・ビジネスを扱っています。もちろん、水野さんとは視点が違うとおもいます。わたしの考察は、まったくの憶測/仮説に基づくものですが、こういう分析がなかったことが経済発展の理解を大きくゆがめてきたというのがわたしの考えです。その意味では、ただある話題としてロングテールを扱ったというものではないつもりです。
もし水野さんが次々回の報告に名乗りを上げるなら、わたしに前座を勤めさせてください。