昨日は久しぶりのJIMS部会。まずは金城さんの「商品信頼のネットワークと属性」という発表を聴く。商品への信頼の要因として,情報源への信頼が重要であることはおそらく,社会心理学などで主張されてきたことだと思われるが,この研究のユニークな点は,複数の情報源の信頼性が相互に依存し合っていると考える点だ。それを測定するため商品の情報源に加えて,「情報源の情報源」が調査される。こうして商品と情報源(メディアや他人)をノードとするネットワークが構築され,その間の信頼性の相関がネットワーク自己相関モデルで分析される。
ここから「信頼の連鎖反応」が分析されるようになれば,大変面白いと思う。だがぼくには,この研究で重要な位置を占める「情報源どうしの関係」がいまいち理解できなかった。そこでは,ある情報源で別の情報源のことが取り上げられるという「参照関係」を通じて,それらの信頼が相関すると考えられているようだ。ぼくにはむしろ,複数の情報源で共通の情報が取り上げられるという「共起関係」に基づき,信頼性なり説得性が相関すると考える方が自然なように思われる。その場合,複数の情報源が商品信頼に及ぼす交互作用という,別の話になる。
次いで桑島さんの「社会ネットワーク分析から見た映画のクチコミ伝播」。映画に関する電子掲示板から,お気に入り登録に基づきユーザ間ネットワークを作り,特定の映画への投稿タイミング(映画を見た時点に近いとみなす)と関係づけていく。すると,イノベータから始まるロジャーズの採用者類型と,ネットワーク上の立場を比較することができる。今回の事例では,お気に入り登録された数の多いユーザほど書き込み時期が早い,という傾向は見られなかったという。それが偶然でないとしたら,なぜみんなに参照されているのかが謎として残る。
一方,今回の映画の初期採用者と初期多数派の間では,相互にお気に入り登録している確率が高いという。この事例だけでは一般化できないが,ここに何らかのクラスタがあるように思われる。そこはどちらかというとスモールワールドで,ハブが存在するわけではないのかもしれない。もちろん,それがいえるためには「お気に入り登録」ネットワークがユーザ間の安定した参照関係を反映しており,映画への情報探索の基本になっていることが裏づけられなくてはならない。だとしたら,あとは事例を増やしていけば,一般性のある知見が得られるだろう。
というわけで,博士号取得直前の若手から意欲的な研究を聴くことができた。二次会でも,気がつけば30歳前後の研究者たちばかりが集まっていた。何の拍子か忘れたが,自分は40歳だと口走ってひんしゅくを買ったが,一瞬そう錯覚するほど元気になれたということで許してもらいたい。それにしても,ネットワークというコンセプトに基づき研究をすると,伝統的な専門領域を超えたネットワークが生まれていくという不思議な効用があるように思う(もっとも,社会ネットワーク分析の大家Y先生が,私は社交的ではない,とおっしゃっていたのも事実である・・・)。
ここから「信頼の連鎖反応」が分析されるようになれば,大変面白いと思う。だがぼくには,この研究で重要な位置を占める「情報源どうしの関係」がいまいち理解できなかった。そこでは,ある情報源で別の情報源のことが取り上げられるという「参照関係」を通じて,それらの信頼が相関すると考えられているようだ。ぼくにはむしろ,複数の情報源で共通の情報が取り上げられるという「共起関係」に基づき,信頼性なり説得性が相関すると考える方が自然なように思われる。その場合,複数の情報源が商品信頼に及ぼす交互作用という,別の話になる。
次いで桑島さんの「社会ネットワーク分析から見た映画のクチコミ伝播」。映画に関する電子掲示板から,お気に入り登録に基づきユーザ間ネットワークを作り,特定の映画への投稿タイミング(映画を見た時点に近いとみなす)と関係づけていく。すると,イノベータから始まるロジャーズの採用者類型と,ネットワーク上の立場を比較することができる。今回の事例では,お気に入り登録された数の多いユーザほど書き込み時期が早い,という傾向は見られなかったという。それが偶然でないとしたら,なぜみんなに参照されているのかが謎として残る。
一方,今回の映画の初期採用者と初期多数派の間では,相互にお気に入り登録している確率が高いという。この事例だけでは一般化できないが,ここに何らかのクラスタがあるように思われる。そこはどちらかというとスモールワールドで,ハブが存在するわけではないのかもしれない。もちろん,それがいえるためには「お気に入り登録」ネットワークがユーザ間の安定した参照関係を反映しており,映画への情報探索の基本になっていることが裏づけられなくてはならない。だとしたら,あとは事例を増やしていけば,一般性のある知見が得られるだろう。
というわけで,博士号取得直前の若手から意欲的な研究を聴くことができた。二次会でも,気がつけば30歳前後の研究者たちばかりが集まっていた。何の拍子か忘れたが,自分は40歳だと口走ってひんしゅくを買ったが,一瞬そう錯覚するほど元気になれたということで許してもらいたい。それにしても,ネットワークというコンセプトに基づき研究をすると,伝統的な専門領域を超えたネットワークが生まれていくという不思議な効用があるように思う(もっとも,社会ネットワーク分析の大家Y先生が,私は社交的ではない,とおっしゃっていたのも事実である・・・)。