松井剛さんの新著は、タイトルや帯のコピーの印象から、ビジネスパーソン向けに易しく書かれたマーケティング入門書のように見える。しかし、私の印象では、本書は「消費者行動論を通して人間と社会に関する諸学説を学ぶ本」といったほうが正しい。だから、マーケティングとの関わりを超えて、幅広い読者(特に若者)にオススメの本である。
たとえば「解釈とゲシュタルト」「象徴的自己完結と役割移行」「文化資本と経済資本」「脱エスニック化とピザ効果」という概念が、ふつうの意味で「いまさら聞けないマーケティングの基本」なら、世の多くのマーケターは失業するだろう。さらには「マズローはあんな三角形を描いてはいません」と上司に指摘すると嫌がられるかもしれない。
が、しかし、本書に盛られたマーケティングや消費者行動に関する諸概念(その多くは普通の教科書には出てこない)を知っていることは、教養として日々の生活を楽しくするだろうし、マーケターにとっても密かな武器となるはずである。実際、優秀なマーケターほど、一見ビジネスとは無関係のような、多様な教養を身につけているものなのである。
松井さんは当初「マーケティングはモーケティング」というタイトルを考えていたという。こういうユーモアに富んだネタが全編に溢れていて、すいすい読める感じの本である。個々の概念に興味を持った読者が次に読むべき本のリストなどがあるとさらに便利と思ったが、検索エンジンが発達した時代には意味がないかもしれない。探求は自らの力で。
![]() | いまさら聞けない マーケティングの基本のはなし |
松井剛 | |
河出書房新社 |
たとえば「解釈とゲシュタルト」「象徴的自己完結と役割移行」「文化資本と経済資本」「脱エスニック化とピザ効果」という概念が、ふつうの意味で「いまさら聞けないマーケティングの基本」なら、世の多くのマーケターは失業するだろう。さらには「マズローはあんな三角形を描いてはいません」と上司に指摘すると嫌がられるかもしれない。
が、しかし、本書に盛られたマーケティングや消費者行動に関する諸概念(その多くは普通の教科書には出てこない)を知っていることは、教養として日々の生活を楽しくするだろうし、マーケターにとっても密かな武器となるはずである。実際、優秀なマーケターほど、一見ビジネスとは無関係のような、多様な教養を身につけているものなのである。
松井さんは当初「マーケティングはモーケティング」というタイトルを考えていたという。こういうユーモアに富んだネタが全編に溢れていて、すいすい読める感じの本である。個々の概念に興味を持った読者が次に読むべき本のリストなどがあるとさらに便利と思ったが、検索エンジンが発達した時代には意味がないかもしれない。探求は自らの力で。