Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

極端のなかにある普遍性へ

2009-06-04 23:57:51 | Weblog
今日のCマーケティングの授業では,ビジネス・エスノグラフィの専門家,田村さんをゲストスピーカーにお招きした。エスノグラフィ(民族誌学)は,元々は異文化の理解を参与観察などによって行う人類学的な方法論であったが,いまやビジネスの最前線だけでなくマーケティングの研究テーマとしても注目されていることは,このブログでも書いたことがある。消費者理解という,本来マーケティング・リサーチが行うべきことが,新たな学問によって担われている。

田村さんによれば,マーケティング・リサーチの限界は,もっぱら消費者の購買意思決定に関わる面だけに注目してきたところにある。「生活者」ということばがマーケティングの世界で語られるようになって何十年も経つが,それを実践にどう組み込むかについては,まだまだ課題が多いということか。ビジネス・エスノグラフィはソフトウェア業界で生まれ,最近ではOA業界を筆頭にさまざまな業界に浸透している。意外とカタい業界と相性が良さそうなのが面白い。

ビジネス・エスノグラフィの方法論といえば参与観察が思い浮かぶが,もう1つ興味深いのは,平均値の近傍にない「極端なユーザ」に注目する,という点だ。それは,通常なら異常値として捨てられる部分である。田村さんによれば,そうした極端なユーザの意識や行動のなかに,実は普遍的な問題が顕著に現れるという。つまり,極端のなかに普遍性を見出すのが,エスノグラフィだといえる。そこには,おそらく観察された情報以外の知識や直観が重要になると思う。

さて,いろいろ刺激を受けたその夜に,JIMS部会で経済物理学者の高安美佐子先生のお話を聞く。これまた刺激的な話であったので,あらためて別のエントリにしたい。
 

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