今年は例年以上に、日本人による本格的なマーケティングの研究書が出版されたように思う。そのいくつかは、著者からご恵贈いただいた。ありがたいことである。時間が経ってしまったが、年末に当たり、お礼を兼ねて簡単に紹介したい。
最初に、慶応大学の清水聰先生の『日本発のマーケティング』を取り上げたい。マーケティングの実践も研究も米国から輸入されたものだ。とりわけマーケティング研究は、米国発のモデルを修正・精緻化することで進められてきた。
しかし、清水さんは「日本発」にこだわる。たとえば新製品の成功を占うのに、モデルや推定方法を高度化するのではなく、データの大元、つまりどの消費者に注目すれば予測精度が上がるか、というような発想の転換を行っている。
AIDAS、AIDEES、SIPS といった、日本のマーケターが提案したコミュニケーション・モデルを包括した実証分析に取り組んでいる点もユニークだ。もちろん、こうした概念を国際的に認知させるには、相当な苦労を要するだろう。
清水さんの研究には「そら耳」「目利き」「死神」といった独自の概念が登場する。こうした、日本的ともいえる概念を駆使して日本人の消費行動を分析する試みは、和辻哲郎や九鬼周造の研究に通じるものがあるように思う。
日本的経営が称揚された90年代ではなく、いま、日本発のマーケティングを語ることは、なかなかチャレンジングである。しかし、日本に基盤をおくマーケティングの研究者としては、その可能性を問う価値は十分あるはずだ。
最初に、慶応大学の清水聰先生の『日本発のマーケティング』を取り上げたい。マーケティングの実践も研究も米国から輸入されたものだ。とりわけマーケティング研究は、米国発のモデルを修正・精緻化することで進められてきた。
しかし、清水さんは「日本発」にこだわる。たとえば新製品の成功を占うのに、モデルや推定方法を高度化するのではなく、データの大元、つまりどの消費者に注目すれば予測精度が上がるか、というような発想の転換を行っている。
![]() | 日本発のマーケティング |
清水聰 | |
千倉書房 |
AIDAS、AIDEES、SIPS といった、日本のマーケターが提案したコミュニケーション・モデルを包括した実証分析に取り組んでいる点もユニークだ。もちろん、こうした概念を国際的に認知させるには、相当な苦労を要するだろう。
清水さんの研究には「そら耳」「目利き」「死神」といった独自の概念が登場する。こうした、日本的ともいえる概念を駆使して日本人の消費行動を分析する試みは、和辻哲郎や九鬼周造の研究に通じるものがあるように思う。
日本的経営が称揚された90年代ではなく、いま、日本発のマーケティングを語ることは、なかなかチャレンジングである。しかし、日本に基盤をおくマーケティングの研究者としては、その可能性を問う価値は十分あるはずだ。