Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

WI2研究会@阪大中之島センター

2010-03-16 23:01:58 | Weblog
月~火と,大阪大学中之島センターで開かれた電子通信学会「Webインテリジェンスとインタラクション研究会」(WI2)を聴講した。その目的は, twitter に関する情報工学的研究の最先端を知ることだ。この研究会で twitter を扱った発表は全体の3分の1を占める。そのタイトルを列挙すると以下の通りである(著者名は省略)。

01. Twitterにおける人工無脳とのインタラクション
02. 書き手の属性を考慮したTwitterにおける注目トピック検出手法の提案
03. USTREAM 中継されたカンファレンスに関連した Twitter 発言の分析
04. Twitterハッシュタグに基づくTweet群からの変化抽出
05. リンクを含むつぶやきを中心としたTwitterの分析
06. Twitterにおける情報伝播経路の抽出法
07. Twitterがもたらす報道機関への影響
08. 影響伝播モデルIDMの線形代数表現とTwitter分析への応用
09. Breaking News Detection in Twitter
10. 既存コミュニケーション基盤を前提としたグローバルセンサデータマイグレーション
11. 街に着目したTwitterメッセージの自動収集と分析システムの提案と試作

全体的な印象として,twitter に関する研究の多くはまだ萌芽的な段階にあるように思えた。いくつかの報告は,事例研究に近いものであったが,それは現時点では必要な作業だろう。なぜなら,いま twitter を誰がどう使っているのか,ほとんどわかっていないからだ。この学会では,リアルタイムで twitter 上にコメントがアップされていた。しかし,こうしたヘビーユーザは,世間ではごく稀な存在なのだ。

ルディー和子さんは,ブログで「Twitter(ツイッター)はクチコミ媒体ではない」と指摘している。米国での調査結果によれば「ツイッターのユーザーは、じつは、それほどソーシャル(社交的・・人が互いに交わる)ではない」「1対1の双方向コミュニケーション・ネットワークというよりは、1対多数の一方通行の発信サービスである」という。つまり,マーケティング的にはマスメディアに近い存在だと。

これは現状認識としてはほぼ正しいと思う。ただ,twitter をめぐる現実は激しく動いている。ぼくも最初の数ヶ月は,数人の友人と有名人をフォローしているだけであったが,いまは1日に数件 tweet あるいは retweet (RT) するようになった。双方向の会話は今後もそう多くは起きないとしても,RT による情報拡散は無視できない影響を持つのではないだろうか。

ではその影響をどう測るのか。松村さん(阪大)は,Reply や RT に IDM (Influence Diffusion Model) を適用し,ことばを単位として影響伝播を分析している。twitter 上での影響を明示的に知ろうとしたら,確かにそこしかない。twitter が面白いのは,それを両者のフォロワーが見ていることだが,彼らが最低でも次に何かをつぶやいてくれないと,効果を推測できない。

twitter は導入期から成長期に入りかけたにすぎず,個別事例を超えて一般化することはまだ難しい。他方,SNS はかなりのレベルまで普及したために,研究は一般化の方向に向かっている。そのことは,本研究会の招待講演の1つであった,鳥海さん(名大),和泉さん(産総研)による「大量 SNS サイトの構造と成長分析」という報告が如実に示している。

最後に言及した2つの研究は「消費者行動のダイナミクス研究会」で4~5月にご発表いただく予定だ。「双方向的に」研究を伺う機会が来るのが待ち遠しい。