Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

TV局の合併で番組が多様化する?

2010-03-12 10:38:07 | Weblog
DIAMOND online の「日本のテレビ業界が復活するには 「キー局の合従連衡」が待ったなし」という記事に注目。著者はコンサルティング会社「A.T.カーニーのメディア研究チームであるメディア・プラクティス」のメンバー。民放キー局が現在の経済的苦境を脱するには,合従連衡しかない,というのだが,その理由は,コスト削減効果以外に,番組編成を全体として多様化させ,テレビ視聴者を増やすことで,広告費を再び呼び戻すことができる,という点にある。

著者たちは裏づけとして,現状でも番組ジャンルが多様な時間帯は全体として視聴者が多い,という相関関係を示す。他の変数を考えなくていいか等々,統計学の授業のネタになりそうな話だが,それはまあ横に置いておこう。では,なぜ局が減ると番組が多様化するといえるのだろうか?それは,チャンネルの総数は減らないから,各局が複数のチャネルを扱うようになるからだという。なるほど・・・と思わず頷きそうになる。

ホテリングの定理によれば,2社が同一空間上で差別化競争を行なうと,結局同じポジションに行き着く。つまり,両者の製品はほとんど同じになってしまう。では,各社が複数の製品を出す場合,どうなるのか?社内で同じような製品を作ってもカニバリが起きるだけなので,それとは異なる特性の製品を出して,新たな顧客を獲得したほうがよい。したがって,会社内の多様性は増加するだろう。しかし,会社間ではどうなのか?

テレビ業界では,少数の局が同じバリエーションで対決することにならないか?つまり,どの局もバラエティ/ドラマ,ニュース,スポーツの3本だてになるとか。すると,以前に比べて多様性が増したといえるか微妙である。このへんの分析は,ゲーム理論が得意とする。ただし,強い仮定がおかれるので,分析結果はそのまま現実に適用できないだろう。視聴者の嗜好とか各局の資源とか,考慮すべき要素はいろいろある。

また,キー局の合併を政府が認めるだろうか?仮に番組は多様化しても,言論が多様化するのか?ネットの勢力圏が拡大すれば,そんな心配は無用なのか?昨日のエントリでも触れた週刊東洋経済2/20号で,日本テレビの氏家会長は「キー局が2~3社へ絞られる時期は早まっていますか」と聞かれて,名言はしていないものの否定もしていない。現在の視聴率を見ると,上位3社は日テレ,フジ,テレ朝の3社だ。さて・・・。