北京オリンピックを目前に,テレビでは中国の現状がしきりに取り上げられている。北京の大気汚染は相当ひどい,地方では暴動が頻発している,などなどネガティブな話題が多い。だが,オリンピックが始まると今度はポジティブな報道一辺倒になるのかも…。などと思っているとき,中国研究者の友人から新著が送られてきた。
この本が類書と違うのは,中国のメディア産業やサブカルチャーの最先端をフィールドワークすることで,中国社会の変化を読み取ろうとしている点だ。メディアのあり方は政治構造に大きく縛られるとともに,それを突き動かす可能性を秘める。それは中国だけのことではない。だから,ぼくは読者として中国事情の本として読むだけでなく,より普遍的な読み方をしたいと思う。
ほぼ同時に献本いただいたのが,以下の本である。そこでは,コピーが技術的にコストなしに行えるという性質を持つデジタル・コンテンツが,どのような経済的・経営的帰結をもたらすかが各分野の専門家によって論じられている。学術研究をベースにしながらも,「ですます」調の平易な文章で書かれており,実務家や学生にとって読みやすくする配慮がなされている。
こうしたテーマはいろいろな思惑が絡んで,ときとして感情的な議論に陥りがちだ。そんなとき,計量経済学的な実証分析が頭を冷やすのに役立つのではなかろうか。著者の一人,田中辰雄氏の分析によれば,ネット上に私的コピーが流通しても,それが CD や DVD の売上げを阻害するという証拠は見出せなかった。つまり「業界」は,フリーコピーの脅威を過大視していることになる。
コピーといえば,最初の本が取り上げていた中国は海賊版が横行していることで有名だ。それはデジタル・コンテンツにとどまらず,有名ブランドグッズからテーマパークのキャラクターまで多岐に及ぶ。こういう広範囲の不法コピーの問題は,デジタル財のフリーコピーの問題とどう関係づけられるのだろう? まったく別の話といっていいのだろうか?
…より一般的な文脈で,ホンモノとニセモノの競合-共生関係について考えてみると面白いかもしれない。
これらの2冊はいずれも,いま最もホットな「現実」に取り組んでいる。自分の周囲でこうした研究が行われているということは,大いに刺激になる。昨日~今日と「採点」作業をしながら思ったのは,学生の多くは「興味がある現実」抜きに,抽象的論理から出発しても,なかなか理解できないということだ。面白い実証研究や応用があってこその方法論なのだ。
この本が類書と違うのは,中国のメディア産業やサブカルチャーの最先端をフィールドワークすることで,中国社会の変化を読み取ろうとしている点だ。メディアのあり方は政治構造に大きく縛られるとともに,それを突き動かす可能性を秘める。それは中国だけのことではない。だから,ぼくは読者として中国事情の本として読むだけでなく,より普遍的な読み方をしたいと思う。
変わる中国 変わるメディア (講談社現代新書 (1951))渡辺 浩平講談社このアイテムの詳細を見る |
ほぼ同時に献本いただいたのが,以下の本である。そこでは,コピーが技術的にコストなしに行えるという性質を持つデジタル・コンテンツが,どのような経済的・経営的帰結をもたらすかが各分野の専門家によって論じられている。学術研究をベースにしながらも,「ですます」調の平易な文章で書かれており,実務家や学生にとって読みやすくする配慮がなされている。
フリーコピーの経済学―デジタル化とコンテンツビジネスの未来日本経済新聞出版社このアイテムの詳細を見る |
こうしたテーマはいろいろな思惑が絡んで,ときとして感情的な議論に陥りがちだ。そんなとき,計量経済学的な実証分析が頭を冷やすのに役立つのではなかろうか。著者の一人,田中辰雄氏の分析によれば,ネット上に私的コピーが流通しても,それが CD や DVD の売上げを阻害するという証拠は見出せなかった。つまり「業界」は,フリーコピーの脅威を過大視していることになる。
コピーといえば,最初の本が取り上げていた中国は海賊版が横行していることで有名だ。それはデジタル・コンテンツにとどまらず,有名ブランドグッズからテーマパークのキャラクターまで多岐に及ぶ。こういう広範囲の不法コピーの問題は,デジタル財のフリーコピーの問題とどう関係づけられるのだろう? まったく別の話といっていいのだろうか?
…より一般的な文脈で,ホンモノとニセモノの競合-共生関係について考えてみると面白いかもしれない。
これらの2冊はいずれも,いま最もホットな「現実」に取り組んでいる。自分の周囲でこうした研究が行われているということは,大いに刺激になる。昨日~今日と「採点」作業をしながら思ったのは,学生の多くは「興味がある現実」抜きに,抽象的論理から出発しても,なかなか理解できないということだ。面白い実証研究や応用があってこその方法論なのだ。