Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

環境音への考慮

2024-05-03 | アウトドーア・環境
自動車のサウンドで気が付いた。メルセデスの最高級車マイバッハに迄採用されているブルメスターオーディオシステムのことである。採用されたのはブガッティーやポルシェに続いて2009年からのことらしいので、全く知らなかった。ギターのアムプから初めて大した製品を作っていた訳ではなさそうだが、今どれほどの売り上げ規模かは調べないでも分かるが、百人の従業員を抱える有限責任会社である。

売りは3Dから4Dであると分かると、その技術的な背景が分かった。3Dを研究していて卒論作成を手伝ったバーゼル音大のサウンドデザインの人がそのものベルリンで仕事を始めていたのを知っている。恐らくその仕事が製品化になっている筈だ。名刺での名前はこの会社ではなかったと思うのだが、全くそのものの研究だった。

四半世紀前のことなので既に50歳に近くなっていると思われるが、クラインバーゼルの路地で拾ってから近くの下宿に行くまでの間に、今は学生で車もないけどと話していた。さぞ大成功して素晴らしい車を走らせていると想像するが、正しく運転席で仮想の音響場を完成させているだろう。

同時に三人が乗っていれば各々がそうした仮想空間を同時に体験できるという基礎的な研究でもあった。こちらの関心事はそうしたフェークな空間を創出させることにはあまり関心がなく、そして今回の車の批評にも後部席と前ではその迫力が違うというのもあった。勿論そのPA的な音響再現には椅子に幾つも埋め込んだ振動体でバスのボディーソニック効果を加えるとそれが4Dとなる。批評にもあったようにこうした車のオーナーが後部座席でクラシックを聴くとなると百万円もの投資はその価値に至らないというのが正しいだろう。その様なことは上の彼の研究から分かっていた。

しかし引き続き興味を持っているのは、音の認知に関してであって、その仮想空間はノイズキャンセリングを用いても全く容易には解決されないという問題である。例えば車内音だけにおいても風切り音と低域のエンジン音を防音ガラスで抑えても車外音の存在自体がエンジン音も遥かに大きい航空機とはまた異なり環境の一つとなっている。

古いディーゼル車のような音の四気筒エンジン音を防音グラスで抑制しようとしても高速で吹かすと嫌な音が乗る。それを誤魔化すことと、上のオーディオ装置が組み合わされているのである。だから迫力があるのだが長い旅行で振動を伴う音が煩わしくなるという批判もあった。

ダイムラー社が何を考えたか。このオーディオシステムをエンタメ主要要素の一つと位置付けて、ディスコのような音に合わせたカラーリングとも組み合わせた。現在のSクラスのインテリアなどを見ると益々質が悪くなっていて、北米や中華市場に合わせたようなところも窺われる。

雨音を抑えると同時にオーディオサウンドの外部へ漏れを防止する防音グラス自体には興味もあるのだが、上のシステムと組み合わされていて、更にエンジン音より先の排気音の作り方等にとても疑問が残る。その背景には欧州では最後のハイブリッドという打ち上げ花火的なものもあるのだが、環境音を考察するとコンセプトの危うさを感じさせる。



参照:
オーディオ的考察の叩き台 2024-04-27 | 音
夜の歌のレムブラント 2022-10-22 | 音

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