Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

期待しないドキドキ感

2018-08-25 | マスメディア批評
第七交響曲イ長調をお勉強していた。もう一つ呑み込めていないところもある。音資料を探しているうちに、トスカニーニとハイティンク指揮のYouTubeを見つけた。前者は期待していたが全くいい加減な譜読みで失望した。あれはトスカニーニ読みなのだと分かった。逆にそこから当時のイタリアのオペラがどのように演奏されていたかが分らないだろうか。ヴェルディやプッチーニがどのように鳴っていたかと、それが正しいのとはまた違うかも知れない。フルトヴェングラーに比較するまでも無くトスカニーニの指揮はアーティキュレーションがなっていない。
Toscanini's Best Beethoven Recording! - Symphony No 7 (1936)


そこで騙されたと思って、今やハイティンクオタクの私が観たのは十年前のコンセルトヘボーでの演奏会だ。あの会場の階段からどのような感じで現れるのかと観ていると、横の扉が開いて付き添いに抱えられるようにして杖を突いた爺さんが出て来る。これには驚いた。確かに先輩のブロムシュッテットのような健康状態は期待していなかったが、まさかと思った。まだ80歳少しであった。指揮者のような体を動かす商売では無く、その辺りの年金生活者で体の不自由な人でしかなかった。まさか、あれだけ活躍している人が何級かの身障者とは知らなかった。

驚いたと同時にその指揮台にまで上がる儀式は人々を感動させるに十分な序章である。あれから十年、この五月にも倒れていることから、これは異常に元気なブロムシュテット翁とは違う、感動がプログラミングされているようだ。これだけ足の不自由な指揮者を私は知らない。痛風か何かだろうか?さて指揮者に上ってタクトが下ろされ音楽が始まるとこれまた異常に意気溌剌とした印象だ。テムピもメトロノームを意識していて、決して悪くはない。よくそのテムポで振れるなという印象もあって、例の主題提示部の二主題への移行部分が誰よりも最もペトレンコ指揮のプローベに近く舞曲化している。これはどういうことだ。それ以外にもレガートとアクセントの使い方も意識していて、あのブラームスでの失望を跳ね飛ばしてしまった。

特に三楽章以降は名演で、嘗てからブレンデルの伴奏で見せたような鳴りがコンセルトヘボーと会場の音響からとても立体的に鳴る。その管弦楽団の巧さは欧州ピカ一であることは言うまでも無く、フィリップスのレコーディングがロンドンのフィルハーモニー管弦楽団で行われた不幸を改めて思う。なるほどこの十年間ほどのこの指揮者の演奏会は玄人筋でとても評判が良かったことを裏付けている。兎に角、よく鳴ると同時、カラヤンサウンドのように低中音部がマスキングされることも無いので、とても各声部が生き生きしていて尚且つ伸びやかに鳴り切るのが素晴らしい。ある意味大管弦楽団でのベートーヴェンの理想なのかもしれない。充分に今日的だ。なるほどサイモン・ラトルが尊敬する訳で、彼の指揮でのフィルハーモニカーの演奏との芸術の格差は大きい。絶賛される筈だ。仕事師である。まるで足取りも覚束ないのに時速300㎞でポルシェで飛ばす爺のようだ。
Beethoven - Symphony No. 7 (2009)


その反面、当時の反響を知っていても、ポピュラー名曲演奏会のような頭の悪そうなプログラムの演奏会には出掛けなかったのだが、それは今でもフランクフルトまでべートヴェンを聞きに行く気持ちにはならない。アムステルダムまでとなれば猶更で今後とも一度も生を聞くことなく終わった指揮者の筈だったが、今回はMeToo騒動のお陰で急遽ルツェルンで初ライヴ体験となる。私自身、殆どランランとハイティンクのファンではないかとも思える。

さて、ペトレンコ指揮のフィルハーモニカー、初日の事故は避けられないかもしれない。何時もの通り出来も期待しない。可成り追い込んで来るのではなかろうか。怖いもの見たさの気持である。編成の大きさはハイティンク指揮ともそれほど変わらないのではないかと思う。管などの自然倍音はどうなるのか。やはりフィルハーモニカーがどこまで鳴らせるかに掛かってくると思う。ラトル指揮で全く響かなかった音響と音楽の膨らみこそが期待されるのだ。

私はドキドキしながら20時からのラディオのディレー生中継に専念する。ARD夏のフェスト特集として平素以上の高音質の中継を密かに期待している。メムバーは全く変わらないと思うので、土曜日にTV中継映像でそれを確かめるぐらいだ。デジタルコンサートの無料クーポンは生では観れないワンのルツェルン中継録画に取っておこう。



参照:
手塩にかけるイヴェント 2018-08-23 | 料理
血圧急上昇の晩夏 2018-08-21 | 女

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