Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

衝突する伝統からの確立

2020-09-04 | 
「清教徒」二幕三幕と通した。結論は指揮者が良ければまだまだ音楽を出来る作品だ。歌手もしっかりすれば、それだけでは終わらない。

因みにまともな指揮者がこの作品を振っているのか調べてみる。有名なところではカラスの伴奏をセラフィンが振っている。実況の悪い録音で若いムーティがフィレンツェで振っている。それ以外ではあまり見付からない。勿論サザーランドの伴奏を旦那のボニングとかパバロッティと録音している。

今話題の女流指揮者レニヴがなぜこの作品をレパートリーに入れているのかはよく分かるのだが、同じ意味でムーティがこの辺りをレパートリーにしていたのは本当に賢いと思う。フィルハーモニアでも制作録音していた。実況盤はあっても制作ものはネットになかったのでセラフィン盤を使いたい。スカラ座の制作録音だが、出だしの所だけ聴いてもその作品の価値が全く異なる。
MARIA CALLAS Bellini I PURITANI Studio 1953 integrale


だから場末の歌劇場で二流指揮者の公演を聴いても作品の片鱗に一切触れることすら儘ならないのだ。何十回経験しても作品に触れたことにはならない。だからオペラ劇場通い程無駄なことは無いのである ― 芝居の方が経済的で価値がある。年金生活者の暇つぶし以上のものでは無い。欧州に住まなければ分からなかった最大のことである。

そのことはフランクフルトで今回の「清教徒」が全く売れていないことに関係している。初日は300人も入っていない様子だ。いい席が完売しているのでプレスの招待はあったのだろう。しかしさっぱりである。他日も売れていない。一昨年の新制作時には演出へのブーは出たようだがとても成功している。だから再演に入らない理由は無い。

やはり我々の様にリニヴが同じ女流のマルヴィッツがそれ以上に直ぐにでもドイツの音楽界で重要になる存在だとは巷の人は気が付いていないのだろう。玄人筋での評価付けはある程度定まっていても、まだまだ一般の市場にまで届いていないということだ。同劇場ではデビューであるから当然かもしれない。

劇場のヴィデオが出たが、残念ながら内容は薄かった。重要な点は王党派のアルテューロと作曲家が同一視されるということで、作曲家自身の周りの女性が共和派のエルヴィラに代表されていて、作曲家の自己矛盾がこの役になっているというのだ。演出は最後に暗転させてしまうような黒ロマンになっているのは批評にもはっきりと書いてあった。

二幕などは、恋仇のリッカルドとおじさんのディアローグでシュツットガルトでは殆どコメディーになっていた。なぜそうなるかは音楽のドラマテュルギ―を丁寧に構築していないからで、単純にジンタを刻んでいれば浅草オペラにしかならないのは必然ではなかろうか。やはり、以前はフランクフルトと交互に賞を取っていたような州立劇場でもまともな支配人がいないと簡単にその水準は下がってしまう。

ベルリンのシーズンオープニングのペトレンコへのインタヴューを観た。私が言及しているように「新たなブラームス像への確信」であるが、意外に評論家諸氏はそこにまで言及していない。それはペトレンコ自身が語っているようにベルリナーフィルハーモニカーには独自のブラームス演奏の伝統があって、場合によっては相反するからそう簡単には完成しないという事だろう。私はミュンヘンでやりたい放題の演奏実践を聴いているので、またヴィーンでは更に大きな壁があったのでその事情は分かっている。

そのことをここでペトレンコ自身が語っている。恐らく翌日のザルツブルク、そして二回目のベルリンでの演奏、更に11月での再演で徐々にその真価が知られてくると思う。もう個人的にはシェーンベルク編曲のピアノ五重奏曲どころの話しではなくなっている。ペトレンコのブラームスルネッサンスになると思う。そしてバーデンバーデンでも企画してくれると思う。しかし、マイニンゲンでの初演での伝統がどのように伝授されているかの具体的な話しが無かった。フリッツ・シュタインバッハ指揮が録音されていないのは当然として、パート譜への書き込み等が保存されているという事か ― シュタインバッハの弟子のノートには言及があるが、校訂版とはどう異なるのか。それをしてベルリナーフィルハーモニカーペトレンコのブラームスの確立と言っていたが、まるで私の書いたものを読んでいるかのような物言いだ。



参照:
ブラームスの交響曲4番 2017-10-08 | 音
楽師さんの練習法 2020-09-03 | 生活
マスク禁止運動を展開! 2020-09-02 | 生活

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