Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

伝承「ワイン飲み競争」の絵

2004-12-30 | 歴史・時事
 2004 03/31 編集

この町には、「ワイン飲み競争」の絵が伝わる。その原画は、役所ロビーに飾られている。それを模写して首だけをすりかえた大きな絵が、あるレストランの壁一面を占める。後方の分厚い壁の窓から日が差し込む板張り床の室内の様子が描かれている。正面に修道師マントの男と中世平民服の男がワインマグを片手に机を背に向かい合う。机の脇には、それらを囲むように平民服三人がこの競争を見守る。左奥の入り口の修道服が心配そうに中の様子を窺う。

旅篭の親仁とおかみさんが試みる絵の説明は各々違うが、首だけは間違いなくこの店の家族と常連さんである。二人の食い違う説明を纏めてさらに解釈を加えると次のようになる。スパイヤーの大司教区に属する隣町のリンブルク修道所が、ローマ人のワイン畑を所有もしくは管理していて土地の平民にその畑からの収穫と醸造を委託していたらしい。その見返りに十分の一のワインを奉還させていたようだ。これが飲み競争の背景となる。競争を制することによって、物納がどのような理屈で増減するのかは解らない。ただ明らかにこの絵に描かれている修道長は、右手に持ったマグの赤ワインを床へとぶち撒き、敗戦が濃厚である。

この旅篭の夫婦は、家族で乗馬競技をする。娘さんも落馬するまでは将来を嘱望されていた。親仁の姿勢の良さに、乗馬だけでなく、先祖がユグノーの戦で活躍したような面影を見る。数年前に病気をするまでは、一日中ビールを注ぎながら沸き上がる泡を自分のグラスへと移し自らもビールの売り上げに大きく貢献していた。そして今も、昼夜繰り広げられる常連席の談義で、上の絵にある様に審判の役を買って出るのである。おかみさんも注文が通るたびに文句を言いながらも厨房を切り盛りする。町の出来事を十分に把握しながらも、それでいて詮索好きなところがない。大雑把な肝っ玉母さんと髭面の歩兵隊長のような印象をややもすれば与える二人だが、実はなかなか細かな配慮と心遣いを垣間見せるてくれる。
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