Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

眠れなくなる射幸心

2019-06-06 | 試飲百景
日曜日の試飲会はそれなりに価値があった。昨年は忙しくて日程を忘れていた。だから数週間前に試飲していたのにも拘らず売り切れてワインを買えなかった。それどころか人のためにいいワインを勧めておきながら、その価値の分からぬような人間がワインを購入して自分自身が買えなかった。いい加減、そやつの口にワインの瓶を押し込んで流し込んで込んでやりたかった。そんな不条理なことは許せない。結局秋にお慰め程度に下から二番目のリースリングだけを六本別けて貰った。勿論それ以上は要らなかった。

そして今年は2018年という暑い年のリースリングに拘わらずそれなりに満足した。つまり昨年のように収穫量が少なく、貴重な神の雫をバカ者が口にしてしまうような不条理は起きない。しかしあまりにも親しみやすいリースリングとなっているので、選択がより難しくなった。このナーヘ側の上流にあるデーノッフ醸造所は昔のアイスヴァインなどに定評があって、有名人が押し寄せる。今回もバイロイトでも有名な歌手に会えて声を掛けれるかと思ったが日曜日には来ていなかった。以前見かけた時には誰か分からなかったが、既に数晩はキリル・ペトレンコ指揮で聞いている。

ベーシックなグーツヴァインも悪くは無かったが、流石に薄造りでミネラルも控えめだ。そして結局二番目のトーンシーファーが気に入った。アルコールも12.5%とと高めだが、2017年産のイガイガ感が全く無く、その完熟した果実の酸と同時に清潔さとシーファー土壌のミネラルが清涼感にさえなっていて、更に価格が12.8ユーロと大変お得だ。秋にもまだ残っている可能性があるが9本購入した。先代の奥さんがまた端をまけてくれたので、一本12ユーロ以下でこれだけの質の高アルコールのリースリングを購入した。充分に地元のオルツリースリングを地元価格で別けて貰ってもこれだけのミネラルは味わえない。要するに飽きが来ないということだ。

酸がどうしても効いていないのはゲストに来ていたラインガウのキュンストラー醸造所のそれで明らかだった。それからすると先月の同じナーヘのシェーンレーバー醸造所の2018年よりも酸が良く効いていた。やはり谷の冷え方も違うのだろう。そこで先日会った親仁がまた来ていた。「どこで会いましたかね」から始まって、親仁を追いかけまわした。オペルのデザイナーのようで、地元で案内してやるからと名刺を渡しておいた。その他に前々日にレープホルツ醸造所で出会った夫婦にも声を掛けた。

やはり人の話を聞くことは自身の選択の根拠をはっきりさせるためにも役に立つ。何事もそうであるが、考えの道筋をつけておくことは何事にもまして重要だからだ。でなければ試飲会などに出かけても無駄でしかない。しかし上の親仁を二回しか会っていないのにとても気に入ったのはオタクを超えた典型的な数寄者だからだ。

親仁はオークションにも札を出すのだが、その締め切りを前にして夜も眠れ無いと語る。嫁さんが「あんた何をしているのよ」と質すと「どうしようか、ああ幾らにしようか」とあれやこれや考えて眠れないのだ。もうこれを聞いただけで、一人でやらせておけないと思ってしまうのだ。あんたも好きねとしか言えない。差し詰め、音楽ファンならば、どの日にどの辺の席を狙おうかとか思ってあれやこれや考えて眠れなくなるのと似ている。オークションもネット販売もよく似たところがあり、簡単に手に入らないとなると余計に射幸心を煽るのだ。先日知り合ったモーゼルのリーザ―醸造所にも奥さんを運転させて早速訪問したという。我慢がならなかったのだろう。

さて重要なグローセスゲヴェックスの品定めである。新たにグランクリュ指定された「クローテンピュール」と「ミューレンベルク」はもう少し様子を見てみなければいけないが、火山性の「フェルツェンテュルムヒャン」が珍しく癖が無かった。通常は何年か寝かしてバランスが取れたところで味わうリースリングだが、これほどすんなりと楽しめそうな年度は初めてだ。要するに葡萄の熟成が健康極まったのだろう。すると「デルヒェン」も更にどんな食事にでも合わせ易そうでよかった。最も複雑で完成する「ヘルマンスホェーレ」はその分拮抗する内部バランスが弱く感じられた。一本50ユーロ近くするグローセスゲヴェックスであるから何もそういった年度に無理して購入する必要はない。

ほかの甘口などは決して良くなく、オークションリースリングの辛口「ブリュッケ」も良くは無かった。総じて、逃した2017年産よりは遥かに清潔で、ミネラルも充実しているが、酸がどこまで効くかだけだ。少なくとも現時点で弱く感じていなければ、こなれた酸であれば弱ることは無いので大丈夫だと思う。但し寝かして放って置いたら思いがけなくよくなったということはなさそうだ。ミネラルが開いたところでお楽しみである。



参照:
2018年産最初の試飲会 2019-05-05 | 試飲百景
ラインガウワーの印象 2018-05-19 | ワイン
しぶいゼクトを購入 2018-09-20 | 試飲百景

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