Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

裏町のパブリックな対応

2008-02-18 | 試飲百景
町裏にある醸造所を訪ねる。昔からのワイン醸造所や業者が居並ぶようなその道は嘗て散策したことがあるのだが、今回初めての訪問となる。ネットで幾つかの情報を集めて、夜ハイデルベルクに行くまでの時間に試飲をして、ワインの地所を歩く事にする。

お昼十三時まで開いていることから、十二時前に到着して、三台分のある駐車場に車を停める。最近は、ドイツ国内では初めて訪問の醸造所へ行くことは少なく、前調べのみならずラインガウにあるヘッセン州立の醸造所の姉妹醸造所なので事情は知れ、凡の検討がついているながら、少し期待が高まるのである。

試飲の対応をしてくれるのは予想通りの女性で、ワインのみならず試飲後に散策する地所や組織機構について訊ねても、充分な情報が提供出来るようになっているのは流石である。

そのような前口上に続いて、辛口のリースリングを中心に試飲グラスが並べられる。先ずはリッターヴァイン、シェーンベルガー・ヘーレンヴィンゲルトと呼ばれる地所の二割かたグラウブルグンダーの交じるリースリングである。2007年産なので新鮮なのは良いが、やはり混ぜものをする利点は感じられない。両方の葡萄の種の味が分かる者にとっては、度の違う眼鏡を覗くように落ち着かなく、気持ちが悪い。しかし、なにも考えない愛飲家にとって旨いのかどうか?二つ目は、ラインガウのように「クラッシック」と呼ばれる辛口でも半辛口でもないリースリングで、地所は明記されていない。2006年産の物であったが味が充分に凝縮していない。

三つ目はシェーンベルガー・ヘーレンヴィンゲルトのリースリングであるが2006年産でここのラインガウのワインにもあるような個性の無さが、ベルクシュトラーセのリースリングの味の特徴と相俟って逆に個性となっている。さて、そこで出されたのが、ベンスハイマーのカルクガッセと石灰の名が入っている地所である。そこは、ヘーレンヴィンゲルトとともに、かつて散策したこともあり想像しながら楽しむ。その横に五つ目のヘッペンハイマーツェントゲリヒトをおいてくれて、2006年産のこの二つを比べるように勧めてもらう。

なるほど前者がカルクを少し交えた土壌で単調なベルクシュトラーセリースリングとしては充分に土壌の個性が出ている。そのためか口当たりが甘く感じるのだが、さらっとして薄っぺらいのがまた面白い。そして後者こそが典型的なこの地方の殺風景なリースリングを凝縮したような味でそれなりに味が濃くボディーがあるのだ。なかなか良いリースリングである。

それを更にシュペートレーゼとして濃くしたのがヘッペンハイマーのシュタインコップのシュペートレーゼである。アルコール12.5度の2006年産のワインは、この醸造所の実力を示していて、尚且つ8.5ユーロの公共性をもった価格に感動させられるのである。私立ならばこの価格では決して売らないであろう。

試飲している間、一件は試飲無しに特定のワインを取りに来て、そして子供づれでこれまた試飲無しでワインを取りに来る父親などがいたが、始めにヴィノテークに入った時にいたお客さんが赤ワインを試飲していたのをみて、ベルクシュトラーセのシュペートブルグンダーを思い出す。そこでこれも一通り試飲させてもらう。

先ずはリッターヴァインである。アルコール度13.5%は魅力であるが、単純な赤ワインにありがちな甘みがあり、決して価格6.3ユーロのCPは悪くないのだが、態々買う必要は感じない。二本目はヘッペンハイマー・ツェントゲリヒトで、これは2005年産でもまだタンニンが利いていて、充分な力強さがある。13%のアルコール度と酸は流石に2006年度の銀賞に輝くだけのことはある。また8ユーロの価格は大変嬉しい。

同じ地所の同じヴィンテージのシュペートレーゼは、上のものを更に強くしたもので、通常はレストランなどで飲むことが出来ない質のシュペートブルグンダーである。まだ十年ほどは置けると同時に今飲んでも14度のアルコール度はどんな肉料理にも負けないだろう。ワイン街道においても南の方ではアルコール度の高いこうしたワインが作られているのであるが、土壌の味からどちらに軍配が上がるか、またバーデンのカーザーシュテュール周辺のものと比べてどうかなど、興味は尽きないのである。明確に言えるのは、ワイン街道のハールトの土壌は、こうした素っ気無い味のピノノワールを栽培するには果実風味があって旨すぎると言うことではないか、などと考えながら、このワインを贈り物の一本として選ぶ。兎に角、10.5ユーロはお買い得商品に違いない。

最後に試したQbAのバリックは、上手に木樽の味を付けているがそれ以上のものではなかった。

そして国内に進物として送りたいと相談をしにくる高齢のオヤジさんへの懇切丁寧な対応を見ていると、州立醸造所のベルクシュトラーセの支店は民生委員を兼ねている感じするぐらい、パブリックなものであるのが知れるのである。



写真:先日の州議会選挙で争点となったビブリスの原子力発電所を名うての地所キルヒベルクから望む。管制塔やタービンなどを見学してあそこの従業員食堂に招かれたのは良い思い出である。老朽化で取り壊しの早い施設であるが、この辺りにはフィリップスブルクとビブリスの両原子力発電所を望める地点が多くあるようだ。



参照:
ドイツ旅行記第2日目(8/18)その2(DTDな日々)
地所の名前で真剣勝負 [ 試飲百景 ] / 2006-02-06
葡萄の地所の名前 [ ワイン ] / 2006-01-21
コメント (2)
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