Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

困った時の時計職人の技

2005-04-07 | 雑感
昨年の5月だったが、初めて鍵の掛かった車に締め出されてしまった。四輪車歴はそれ程長くは無いが初めてのことだった。旅行を控えて、チューリッヒで幾つかの数珠繋ぎのアポイントメンツをこなしている中で起きた。次の待ち合わせの時刻を見ながら、陽が強く照るオペラ座のテラスで気持ちよく対談していた。時間も経ったので席を立ち、話し相手と一緒に車のところへ行き、渡し物をトランクルームから取り出し、挨拶をして別れた。そして、急いでトランクの蓋をばたんと閉めた時、トランクの中に残されている鍵に気付いた。

それからが大変だった。携帯電話は車のコンソールに戻すために手に持っているが、財布はトランクのアタッシュケースの中だ。幸い携帯電話のROMから助けを求める事が出来た。しかしプリペイドカードなので高価なローミングがどれぐらい使えるか分からない。何度も掛け直させたりして、結局半時間ほど待つ事になった。折からの帰宅ラッシュ時が始まり、道は込んでくる。ズルヒャー・ゼェーの湖面から気持ちの良い風が吹く。為す術も無く交差点で人待ちをしながら、この美しい光景に染まっていた。

こうして40分ほど経った時、スイスの自動車クラブの救援がやって来た。サイドの窓から試みたが開かない。彼は合鍵を取りに帰れないかと聞く。その日のうちに戻ってこれる可能性も疑わしい。そして翌々日は飛行機に乗らなければならなかった。如何しても無理である。幸運にもサンルーフが斜めに開けてある。ここから試みて貰った。そしてドアが開いた。

集中制御なので、今度はそこからトランクルームにあるアタッシュケースを開けなければいけない。幸いにもスキースルーを取り外せた。その穴から彼はアタッシュケースの蓋を開け、鍵を探らさせた。おぼろげな記憶を頼りに鍵を救出出来たのは殆んど奇跡あった。感心したのは、彼が「傷をつけるならなんでもないが、それでは意味が無い。」と言うような仕事振りであった。スイスの高級機械時計職人の精妙な仕事を絶賛して、一時間半以上遅れて次の面会を果たした。
コメント (2)
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