パンダ イン・マイ・ライフ

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音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

山本一力 蒼龍

2023-09-24 | 山本一力
平成14年2002年4月に刊行された山本一力の「蒼龍」。5作の短編からなる。

のぼりうなぎ
指物職人の弥助は独り者の32歳。独り立ちして11年になる。日本橋の呉服の大店、近江屋の七代目、養子の九右衛門は、弥助に、店の通い手代になってほしいと頼み込む。近江屋には一元の客には目もくれず、客を粗末にする家風が染みついていた。久右衛門は、いずれは店が傾くと、仕事ぶりが丁寧で驕ったところのない弥助を、店の気風を変える起爆剤にしようと考える。そんな弥助に店の番頭や手代は冷ややかな対応を取る。孤立する弥助。

節わかれ
灘の酒だけを取り扱う酒問屋の稲取屋。60歳になる三代目勝衛門の妻暁代が病に倒れ、灘の酒が凶作で手に入らなくなる。150の取引酒屋は、34軒に減り、窮地に立たされる。高価な灘の酒の安売りを思いつくが、思うように売れず、飲屋とのトラブルも。そこで、息子の高之介が店主となり、稲取屋の直営の小料理屋を出す。そこに寛政の改革で札差の武家への借金を帳消しにする棄捐令が出され、景気が悪くなるが、縄暖簾の町場の飲屋は持ちこたえる。

菜の花かんざし
房州勝山藩の剣術指南役の堀家。晋作はその三代目。妻の柚木乃、10歳の真之介と6歳のかえでと幸せな暮らしをしていた。そこに江戸にいる馬屋番の晋作の実弟が手綱を持つ馬があばれ、藩主の世継ぎが亡くなったこと、実弟を罵倒した用人を惨殺したことが知らされる。晋作は一家断絶、血縁皆殺しを受け入れる。しかし、深川のうなぎ屋から嫁入りした柚木乃は、子どもたちの命を守ると晋作に言う。武士の体面を重んじる晋作と命の尊さを説く柚木乃。晋作は悩む。

長い串
土佐藩の江戸留守居役、世襲の7代目、森勘左衛門51歳と一回り下で森が目をかけている吉岡徹之介39歳。徹之介は森の命によりが藩主の土佐への帰藩の道中奉行に命ぜられる。徹之介から刻々と寄せられる道中の便り。勘左衛門は、松の盆栽が縁で、掛川藩の江戸留守居役の甲賀伊織と親しくなる。掛川は藩主山内家の元所領だった。川止めの島田宿で行った藩主隣席の川越人足と土佐藩士の相撲大会を、同じく帰国途中の人吉藩が大目付に訴えた。家老は。勘左衛門に徹之介に詰め腹を切らせよと告げる。

蒼龍
深川冬木の裏店に女房のおしのと暮らす大工の弦太郎。むすめのおきみが生まれた。そんな折、弦太郎は博打に手を出し、5両の借金を背負う。さらにおしの兄が、店の金50両に手を付け、いなくなる。ふたつの借金を背負う弦太郎は、絵を描くのが好きな特技を生かし、瀬戸物の大店、岩間屋の茶碗湯のみの新柄の募集に応募する。1年目、2年目と入選はするものの、決定には至らない。3度目も入選となる。

「蒼龍」は処女作で、1997年平成9年にオール読物新人賞作品となる。
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