パンダ イン・マイ・ライフ

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音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

山本一力 八つ花ごよみ

2023-09-17 | 山本一力
NHKが今年度2023年4月からFMで「朗読の世界」を放送し始めた。また、長年続いてるラジオ第1の「朗読」も同様にレギュラー番組となった。
その「朗読」で、4月は、俳優の渡辺いっけいが山本一力の短編「西應寺の桜」(「八つ花ごよみ」に収録)を放送するとあったので、初めて読んだ。

山本一力の「八つ花ごよみ」は、2009年平成21年刊行。2007年平成19年から2009年平成21年にかけて月刊文芸誌に掲載された8つの短編集だ。

「路ばたのききょう」P28
薬種問屋の老舗岡崎堂の柳之助の内儀よしえが「呆け」にかかった。娘は徘徊する母を暖簾にキズが付くといい、座敷牢を作れと言い放つ。しかし、よしえは時々正気に返る。そのひと時が柳之助にはいとおしい。よしえは橋の袂から家に持ち帰った桔梗を元に戻そうと柳之助にいう。

「海辺橋の女郎花」P 28
鳶の次郎は58歳。女房のおみよは三つ下の55歳。子供はいない。次郎は親方を数回代わり、賭場で借金をつくる。住まいも何度か変えた。二人は喧嘩しながらも36年間夫婦として暮らしている。そのおみよが倒れる。頭の血管が切れた。かいがいしく次郎は看病を続ける。朝の日課は、滋養のつく山羊の乳の買い物だった。その道すがら橋のたもとに女郎花が咲いていた。

「京橋の小梅」P 29
京橋で寿司屋を営む親吉は、4代続く寿司職人。3代目が店を構え、繁盛していた。女将はおみさ。向島から嫁に来て、京橋小町といわれた7つ年下の女房だ。先代の女将が店に小梅を植え、小梅の梅干しも評判になる。新吉は17歳のとき、ふとしたことから火消にあこがれるが、その火消が火事でなくなったことから、その火消の言葉に従い、絵描きを目指す。画材屋を訪れ、錦絵の稽古を始める。そこで向島の老舗料亭の次女のおみさと出会う。

「西應寺の桜」P 27
摺り屋の夕星屋の主人、邦太郎は4代目の当主。紙問屋の娘、千代と夫婦になり、50を過ぎても仲の良さは周囲もうらやむほどだった。その千代が、孫の七五三の年の瀬に倒れる。頭の血管が破裂したのだ。邦太郎は、車いすを仕立て、千代と外出することにする。夕星屋の菩提寺の西應寺へも桜見物に出かけた。邦太郎は体が動かなくなった千代の看病に専念するため、息子に家督を譲り、田舎で智用に専念する。しかし、再度千代が倒れ、身動きができず、しゃべることもできなくなった。再度、桜見物に出かけるが、千代の表情に変化はない。邦太郎は、西應寺へ出かけることにする。

「佃島の菖蒲」P28
将棋盤づくりの榧ノ木屋の4代目、祐五郎は漁師町の佃町の家に菖蒲の池を作った。祐五郎は先代夫婦が急死し、23歳で家業を継いだ。妻みのが19歳の時だった。残された職人5人のうち古参の2人が引き抜かれた。切磋琢磨して家を守る祐五郎。長女のさの、次女のしのが生まれる。そして長女が病死する。先代の死から6年。500もの将棋道場が参加する3年に一度の王将戦が近くの寺で開催されることになる。寺の住持は、その将棋盤と駒の製作を榧ノ木屋に頼む。しのは21歳になった。

「砂村の尾花」P 27
砂村の薄が原。117年続く柏屋は、初代が4町歩もの土地を借り受け、ススキの栽培を行っている。お守り、月見、商売繁盛、屋根葺きなど多岐にわたる用途を初代が思いついた。 その月見の十五夜の8月15日が近づいていた。初代から月見のススキは当日朝、刈り取る習いだ。5代目伊兵衛は、それを変えようとしない。しかし強風は収まりそうもない。腕利きの空見師の晴屋健次郎は、前日に一昼夜に及ぶ祈祷を行う。見守る足頭の葦五郎、伊兵衛の娘しづ。

「御船橋の紅花」P 27
甚兵衛長屋の泰蔵は独り者で還暦を迎えた60になる。提灯やろうそく。火打石の担ぎ売りをしている。暑かろうが寒かろうが、決まった道を決まった時間に歩く。暮らして20年になるが店賃が遅れたことがない。その泰蔵が、御船橋のたもとに1年前から出ている人気の屋台の天婦羅に通うようになった。差配の甚兵衛は、泰蔵と天ぷら屋のおひで48歳を縁付けようと、御船橋を仕切るてきやの猪蔵のもとを訪れる。

「仲町のひいらぎ」P 28
深川門前仲町の松江藩の什器を扱う仙石屋。その6代目が亡くなる。54歳。妻のとみえは51歳。31年連れ添った。そのとみえは因島の生まれ。家族が江戸で煙草屋を始め、看板娘となり、一目ぼれした6代目と結婚した。とみえは姑に気に入られ、厳しくしつけられた。子どもも結婚し、孫もできた。ただ、とみえは瀬戸内育ちで、山陰の魚の味に馴染めなかった。

どの作品も27ページから29ページ仕立てだ。

その作品群は、一文一文が短い。そして、小気味いいセンテンスがある。実際に声に出して読んでみる。その気持ちのよさにびっくりした。
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