日々 是 変化ナリ ~ DAYS OF STRUGGLE ~
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話題の経済書を手にとってみた。
著者のモハメド・エラリアン氏、かなりの経歴。
世界最大の債券ファンドのCEOで、IMFに15年務め、理事まで務めた方。
原題の、When markets collideは「昨日の市場」と「明日の市場」が衝突する様を表現しているのだろう。


読んでいくと、その「昨日の市場」と「明日の市場」とは、アメリカ主導の世界 vs 力をつけてきた新興国がからむ世界を意味していることを理解できる。
過去にないフェーズに世界経済が突入しつつあることを説明している、

そしてメインは、第5章、「新たな行き先」まではいばらの道。
ただ、現在の環境を生んだ原因を理解するという点でいうと、切れの良さ、整理力または翻訳でない分のわかりやすさか「すべての経済はバブルに通じる」の方が優れていると思うが。
まあファンド会社のトップなので、徹底的に突けないというのもあるのだろう。


だがこの本ならではというところもある。
それは、作者がIMFに15年にいた人ならではの視点で、政府の行動に言及しはじめる第7章以降。
IMFのリポートの引用から論述している、以下の記述が印象的だったので引用したい(P.304 改行筆者)

「興味深いことに、グローバル化は所得格差を拡大するとは限らず、全体としては中立であることが判明している。 
 国際貿易が活発になると所得格差が現象する。 
 新興国で労働力に対する需要が増大し、過剰労働力を抱えた農業部門から高所得の工業部門へ労働力が移動するからだ。
 しかし一方で、国境を越えて金融取引が活発になると所得格差が拡大する。
 新興国では、十分な冨と所得を得ている富裕層がまず金融市場のグローバル化の恩恵を受け、試算運用を有利に行えるためだ。

 以上の研究結果を踏まえると、各国政府が教育や医療などの分野へ重点的に財政支出を振り向ける形で、社会政策に力を入れる必要性が出てくる。
細部は各国で異なるとはいえ、大枠では社会政策は技術進歩の機会を与え、技術を工場させるほか、今まで以上に用意かつ効果的に教育や医療の利用を可能にする。
これによってグローバル化の恩恵をより多くの国民にもたらし、多くの国でなお反グローバル化を唱える勢力に対抗できる.。
この過程で各国政府は、スタンドアローン型社会福祉政策の重要目標の達成に向け、さらに前進するのである」

そしてこの章の最後に、IMF改革に向けた7つの提言を行っている。
これは他の人には書けない内容だと思うので、ここだけでも読む価値があったなと思わせた。


作者が何度も言っている、異常現象に出くわしたとき、安易に「無意味なノイズ」と見なさず、世界経済の構造的な大転換の中にあることを示す「シグナル」である場合を見逃してはならない。
こう21世紀を歩きたいものである!



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