ボッロミーニという人

2019-08-27 21:43:08 | 旅行記


17世紀のローマに、フランチェスコ・ボッロミーニという建築家がいました。
ルネサンス時代の後に現れた、過剰な造形のバロックという様式時代。
ボッロミーニは建築一本の人でした。作品数は多くなく、その作品の造形密度から察するに、ひとつひとつの仕事にまさに全身全霊をかけたであろう人です。

同時代に、ジャン・ロレンツォ・ベルニーニという建築家がいました。
同じ通りに数軒はさんで両者の作品は立ち並び、ローマ市中のとある広場でも作品が競合。ライバルとして、犬猿の仲として言い伝えられています。

ベルニーニは、建築家であるだけでなく、彫刻家であり画家でもあり、どの分野でも超一流と言われました。
器用な人だったのですね。バチカンの列柱回廊のデザインも彼の手によるものでした。
洗練された作風とともに、多くの仕事の引き合いがあったようです。

ルネサンス様式の街並みのなか、ボッロミーニのデザインした教会は迫りくるような造形で異彩を放っています。
端正であったり、上手であるという評価とは別の、独特の存在感。それをなんと表現したらよいのでしょうね。

写真はボッロミーニ作 サン・カルロ・アッレ・クワトロ・フォンターネ聖堂。内部がまた、ものすごいんです。


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サンタサビーナ

2019-08-22 19:39:57 | 旅行記


眼も眩むような暑い陽射しの屋外から、室内にはいったとたんに訪れる陰りと静寂。そんな空間体験があると思います。
かつて、暑いローマのサンタサビーナ聖堂でも、そんな体験をしました。
ローマでも最も古い聖堂ですが、空間造形が古拙である分、どすんと溜まる闇や、光の戯れを、ずっと体験していたくなるような空間と時間でした。

技術が発達し、いろいろなことが実現可能になって、空間体験も多種多様になっているはずなのに、やはり惹かれるのは古拙なもの。
古ければ良いということではありませんが、やはり物事のあり方が無垢なのだと思います。
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特等席のキッチン

2019-08-18 11:28:56 | わらびの家


先日、打合せにお見えになった建て主の方が離されていたのですが、京都の桂離宮に行かれておもしろい印象をもたれたとのこと。
たとえば、通常はウラ方になるようなものが、わざわざオモテから見えるようになっている、というようなことなどです。
「かまど」や棚板など、いわゆるキッチンにあたるものが、大きな庭園に面した側に配されています。
そのような話の流れで、最近ブログに掲載した「わらびの家」のキッチンのデザインのことについても印象的な話をしていただきました。

「わらびの家」では、キッチンの位置が特徴的で、家のなかの一番の「特等席」に配されていて、庭に面していて明るいスペースです。
昔であれば、キッチン(というより台所)は、中廊下を挟んで北側の寒い位置に配され、お風呂や洗面などの水回りもすべて北側にひとまとめにしてあったものです。
でも、料理をしたり、洗濯をしたり、そんな日常的な家事をいかに楽しくするかをイメージすると、家の間取りや作られ方も変わってくると思います。

「わらびの家」のキッチンの脇には屋根の掛かったテラスがあり、たとえば庭に植えたハーブをちょっと取りに行く、ということ自体が、なにか楽しいと思えるものになるといいなと思います。
そこにある素材は、木の窓枠や、くすんだ風合いのタイル、開けたまま使えるウォルナット製の吊戸棚、大きなコーリアンのカウンターなど、見た目と実用性を考えて選んであります。
その分、家全体の建設コストの配分にはいろいろと気を配りましたが、そのようにしてできあがったキッチンスペースは、とっても愛着のわくスペースになったように思います。

桂離宮の松琴亭や月波楼といった庵に備わっているキッチンは、庭に面していてすこぶる気持ちの良いスペースになっています。
調理の時間や光景をエンターテイメントにする。江戸時代に、そんなイメージをもつことはとても斬新だったと思います。



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夏の日の引き渡し

2019-08-05 21:24:26 | わらびの家


暑い夏の日、蕨市ですすめてきた住宅を引き渡しました。本当に、終わるのが名残惜しくなるような素晴らしい現場でした。
どちらかというと小住宅の規模ですが、ぎゅっと思いが詰まった密度の高い仕事となりました。
皆で作り上げた作品。そんなふうに呼びたい気がします。

庭に面した特等席にキッチンが配され、そして窓辺のコーナーに大きなダイニングテーブルが置かれます。
姿かたちが特徴的、という家ではないけれど、間取りや物事の配され方に、暮らし方への意図がはっきり表れた家になりました。

街道に面した界隈に建つ家。
その奥に静かな居心地の良い場所ができあがったように思います。

この場所があればそれでいい。
そんなふうにじんわりと思える気がして、満ち足りた気持ちになりつつ、現場を後にしました。
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