ヘリンボーンの床

2019-03-27 22:28:06 | 古木のある家


「古木のある家」より。
カーペット敷のウォークインクローゼットから廊下に出ると、ほの暗い空間にヘリンボーン張りの床が黒光りしています。
古い庭木をなるべく残して建て替えたい、そんなご要望から始まった家だから、打ち合わせを重ねるうちに、全体的にクラシックというか、古色ある気分に包まれた家になりました。

小ぶりなサイズのヘリンボーン用のフローリングを、大工さんがひとつずつ丁寧に組んでいきます。角度が合わなくなるときれいに張れないので、大工さんの腕が肝要になります。
コツコツコツ・・・と音を響かせながら、大工さんが黙々と作業を続けていたのを思い出します。

新築の家だけれども、以前からずっと在り続けたような佇まい。
新しくもあるし、古くもある。
個性的でもあるし、凡庸でもある。

昔に読んだ、画家・有元利夫への評で、暗闇があると同時に光が溢れ出す不思議さ、というようなことが書いてありました。
切れ味よい言葉で表現されるコンセプトから遠く離れて、あらゆるものが同時に在ることををきちんと表現できたらいいな、と思います。
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ふたつの現場にて。

2019-03-22 23:02:08 | 進行中プロジェクト


川口の現場。1階が鉄筋コンクリート造、2,3階が木造の混構造の建物です。
2世帯住宅に加えて、ギャラリーやアトリエの用途が併設されて、住宅としては大きな規模の建物です。
市街地の真っ只中に建つ家ですが、喧噪から離れて奥行きをつくること、そしてそのなかに様々な雰囲気の居場所をつくりだすことを目指してきました。
現場ではコンクリートの型枠工事が進行中ですが、中庭の明るい気配が、求心的な気分をもたらしてくれます。



隣接する蕨市での、小住宅の現場。
現場ではちょうど棟上げをしたばかり。好天に恵まれて順調にすすんでいます。
1階では、窓辺に面したダイニングキッチンが気持ちの良い場所になりそうです。
オノ・デザインで多く設計してきた木製の窓枠を、この家でも採り入れています。
施主のご実家に隣接し、昔から慣れ親しんだ庭木を望む、静かで落ち着いた空間を目指しています。




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コルトーナの街で

2019-03-02 22:17:14 | 旅行記


3月になると、これまで行った旅行のことをよく思い出します。
なぜか3月に旅行に行くことが多いのですが、それはたぶんオフシーズンで旅費が安いとか、観光客も少なくてゆっくりできるとか、そんなこともあって、まだ寒く身も引き締まる思いで旅に出ることが多かったように思います。

写真は10年近く前に行ったイタリア・トスカーナの街 コルトーナ。
初期ルネサンスの至宝とされる宗教画などもあるものの、小さくて静かな山の上の街。

あたりまえのものが持つ美しさ、そんなものに僕は心惹かれます。
コルトーナの街を歩くと、写真のような佇まいによく出会います。
地元で採れる石でできた壁と、木の分厚いドア。
ドアノブは開けやすいように大振りで、何度も握られてすっかり摩耗していい味になっている。
少し模様のつけられた床の舗装は、素朴だけれども、樹影を引き立てています。

自然素材を多く使える風土というのはうらやましい限りとはいえ、これみよがしなデザインがないのに、この美しさはなんだろう。
ここで暮らし、この家のなかで仕事をし、晴れた日にはこのテラスに椅子とテーブルを出して休憩する。


さして特別ではない、でも気に入ったものに囲まれた静かな生活。
そんなあたりまえの日常の光景を思い描くだけで、なんだかじんわりと幸せな気持ちになります。
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