サン・ダミアーノの面影

2014-04-28 21:32:29 | 片倉の家

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「片倉の家」は、最寄駅を降りてから、なだらかな坂道をずうっと歩いていった先にある、丘の上に建つ家です。一部の工事を残して、ほぼすべてできあがりました。最後は現場も慌ただしくなってしまったけれど、それでも、この現場に来ると感じられる静かな雰囲気が好きでした。

施主にお会いし、いろいろなお話を聞いて設計をすすめるなかで、いつしか心の奥底の方で、あるひとつの史跡のことが明滅するようになりました。

中部イタリア アッシジの街はずれにある修道院、サン・ダミアーノ。聖フランチェスコに師事した尼僧 聖キアラが生涯暮らした、簡素で小さな修道院です。この場所のことをよりよく知ったのは、エリオ・チオルの写真集「アッシジ」や、作家・須賀敦子さんの著作によってでした。須賀さんにとってサン・ダミアーノは特別な場所だったそうです。

今も当時の面影そのままに残るこの修道院についての写真を見ていると、一見どうということはなさそうだけれど、しばらくすると「効いて」くる独特の雰囲気があります。この場所があればいい。そんな風に思えるような雰囲気に満たされていました。漠然としたそのようなイメージに近づこうとしながら家の設計をするのはとても難しかったのですが、そのようなイメージを体現できたかどうか、少し時間をかけながら感じ取りたいと思います。

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この家では一日の時間の流れが、太陽の動きとともにゆっくりと感じられます。午後になり陽がゆっくりと傾いて西の方から光がやってくるようになると、障子を通した光は、室内の勾配天井に独特の穏やかな色調をもたらしてくれます。そういえばアッシジの街並も、夕日を受けて独特の趣きをもつということを、須賀さんが美しい文章に書いていたっけ。もう一度、読み返してみたくなりました。

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春の中庭

2014-04-16 23:44:16 | 自由が丘の家

最近は急に暖かくなってきて、庭の草木が一気に芽吹いてきました。冬の間に少し寂しかった庭も、にぎやかになってくるのが楽しいですね。

オノ・デザインのアトリエは、小さな中庭を囲むように建っていて、その中庭に向けて、小さな木製の小窓がひとつ、開けられています。窓は小さいのだけれど、シマトネリコの木が間近にあるので、窓を開けると、もう枝に触れるようになりました。

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アルミサッシではなく、木でできた窓と、草木は、やはり並んでみても馴染みがいい。窓を開けて、まだツヤツヤしている新芽を触るのも気持ちいいものです(笑)

小さな中庭には独特の情緒があります。デッキやタイルを敷くほどのスペースはなく、ピンコロ石で造られた古い花壇があるだけ。そこに「光の影」のようにしてゆらゆらと樹影が遊んでいるのを、なんとなく眺めているだけで、気持ちが落ち着いてきます。

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CH47がやってきた

2014-04-07 20:55:45 | 日々

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我が家にCH47が届きました。ハンス・ウェグナーが1965年にデザインしたダイニング・チェアです。

ずっと使い続ける相棒のような椅子をどのようなものにするか、ずっと考えてきて最終的に選んだのがこれでした。ハンス・ウェグナーがデザインしたことそのものよりも、やはり椅子そのものの在り方が、ぼくにとってとても魅力的に思えたのでした。

シェーカー家具をベースにしたような朴訥としたデザインの雰囲気でありながら、その木の曲がり方などに優美さも感じられます。そしてとにかく、座面の幅が広くとってもゆったりと座れるのが気に入りました。通常のダイニングチェアに比べると、少し座面が沈んで感じられるのも、落ち着きがでてよいところ。

座面の材質はハンス・ウェグナーお馴染みのペーパーコードで、長年の間に擦り切れて張り替えの時期もくるでしょうが、しっかり手作業で張ってある感じが気持ちいい。

木の材質はオークのオイルフィニッシュ。即物的に飛び出た脚の上面も少し丸く削られていて、座りながら手のひらでぐりぐりと撫でたくなる感じが、愛着がわきそうです。

次第に黒ずんできて味がでてくるのを楽しみに、毎日使っていこうと思います。身の回りのものを、いかに愛着がもてるか、という尺度で選ぶと、日々の暮らしがぐっと楽しみを増すように思います。

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