ハンマースホイ、再び。

2021-06-13 22:26:12 | 大磯の家


観てしばらくしてから、じわじわと「効いて」くる絵画というものがあると思います。
ぼくにとってそのひとつは、ヴィルヘルム・ハンマースホイ(Vilhelm Hammershøi)の絵画。
フェルメールの画風からの影響もいわれる北欧の画家です。

モノトーンが基調となった静かな画風。室内画が多く、ドア越しに向こう側の空間が垣間見え、連なっていきます。
そこにある事物と光と影だけが淡々と描かれたような画風。
何を主題にしているのかがはっきりわからないぶん、そこにある事物の存在感が、記憶のなかでなんだか不意に脳裏をよぎるのです。

「大磯の家」でも、そんな空間が不意に現れました。
地山の自然と雑木の庭を堪能することをテーマにつくられた家ですが、その余白というのか、外が見えない廊下の先に、ハンマースホイのような空間が現れてくれたのです。
障子を通して片側から入ってくる光に照らされて、ヘリンボーン張りの床がこんなふうに感じられるとは。

ヘリンボーン張りの床材は、施工もとっても大変。
コツコツと根気強く位置調整をしながら大工さんが張っていきます。
ベッドが置かれたら床が見えなくなっちゃうんじゃないの?せっかく張ったのにぃ。
と大工さんに言われた気もしますが、いやいやこの感じ、最高です。


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窓辺に寄り添う

2021-05-18 16:58:53 | 大磯の家


新緑の季節の光景を写真におさめたく「大磯の家」の撮影に伺いました。
この日の天気は雨交じりの曇り空。静かで、しっとりとした落ち着いた雰囲気。新緑の緑がより鮮やかに引き立って見えました。

暮らしの場の中心として、庭に寄り添うようなダイニングがいいなあ。
家の設計にあたり、施主からはそんなふうなリクエストをいただいていました。

デザインの方針を決めていくときに、コンセプトを打ち立てて言葉で進めていくことも大事だけれども、経験的に培ってきた素材を選ぶ感覚や寸法感覚がやはり要になるのだと思います。
この日は、植栽がはいって初めてダイニングにゆっくり座って過ごしました。

鳥の声が聞こえる。
仄かに雨音。
濃色に塗られた窓枠越しに、新緑がぐっと迫ってくる感じ。
造園家が丹念に植えた優しい雰囲気の草花。
アンティークの家具。
天井に宿る陰影。
そんなひとつひとつが、この場所で過ごす居心地の良さと安堵感につながっていくように思いました。

窓辺の本棚には絵本がたくさん入っていて、いずれお孫さんが来た時に賑やかになるのを待っているよう。
施主のセルフビルドによるバーべーキュー台もあったりして、これからの楽しい生活に開かれています。

今後は、晴れた日にも来て、木漏れ日を体験してみよう。


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大磯の庭

2021-03-10 21:52:36 | 大磯の家


「大磯の家」の庭づくりも、いよいよ大詰め。
庭づくりを担当してくれているのは、相模原を拠点に活動する「アトリエたね」さん。
住宅設計の早い段階から打合せに参加してもらい、予算管理も含めて協働してきました。

雑木の庭を楽しむことが、この家のデザインテーマでした。
僕なりに庭づくりのイメージも考えてみたけれど、やはり造園の専門家のイメージやデザインは素晴らしいものでした。
提案は押し付けがましくもなく、施主のご意向も柔軟に採り入れながら、それでいて芯がある感じ。脱帽ですね。
見て美しく、過ごして楽しい庭になりそうです。

建物は完成したものの、しばらくの間は主役の庭がぽっかりと空白だったけれども、これでついに完成した感じがします。
でも、完成と同時に、これから家や庭を育てていく楽しみが始まったところですね。

雑木の庭と、地山に包まれた平屋の家。
なかなかこのような環境を楽しみながら家はつくれないだろうなあ。
ぼくにとっても、設計を満喫した感じがします。

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風景を切り取る

2020-12-08 22:11:54 | 大磯の家


「大磯の家」ができあがり、お引渡しとなりました。この日は朝から小雨で、家の背後の地山は雨に煙っていました。
東京から離れ、このように山が身近に見える環境は、その日その時に一期一会の風景の見え方があります。
端的に言えば、この家の設計は「一期一会」の風景をいかに楽しむか、ということにあったように思います。
朝起きて最初に見る風景であるとか、顔を洗っている時とか、昼間に和室で新聞を読んでいる時とか、一日のなかにありふれているごく些細な時間が、豊かなものであるように。



庭と建物が一体となった家。それが家づくりの当初からのコンセプトでしたので、計画の初期段階から造園家を交えて庭づくりの打合せも重ねてきました。
こうして建物はできあがったけれども、庭がこれからだから、まだできあがった感じはしません。
年明けから始まる庭づくりが楽しみです。

そんなことを、東京で建設中のお施主さんとお話しした際に、「家ができあがってもまだ楽しみが残ってるなんて、いいですね」と言われたのが印象的でした。
完成した時が一番良いのではなくて、だんだんと良くなっていく家って、いいですね。
そうすると、家のなかで使う道具や器も、気に入ったものを選びたくなる。
良い道具や器は、長く使うのに耐えるだけの質感があります。
身の回りの身近なものが、じんわりと趣きをもって感じられるような場所。
そういう場所をつくりあげるのが理想です。


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和室の造作

2020-10-22 22:26:36 | 大磯の家


現場の話が続きます。今回は「大磯の家」。
大工さんの作業も大詰めを迎えています。
本丸ともいうべき、和室の造作がほぼできあがりました。

杉の磨き丸太に、フスマや障子の枠が別方向から絡んでくる納まり。
図面で描くとあっさりしたものですが、実際に造作するとなると、とても手間がかかります。

それもそのはず、というのも、丸太は根元と上の方で太さが違います。
枠材には溝が彫られていて、それが上下で少しでも位置が狂えば、戸の開け閉てがうまくいきません。



素材がそのまま仕上がりになりますので、失敗はできません。
「間違って切っちゃったりとかないんですか??」なんてバカでヤボな質問を大工さんに投げかけてみたところ、「そりゃ、トリプルチェックだよ!」との答え。
3歩すすんで2歩下がるような地道な調整の果てに、ようやくできあがる造作。
でもできあがったら、あっさりすっきり見えてしまう。
本当に質の高い仕事は、そういうものなのだと思います。

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