隙間のギャラリー

2021-07-24 22:08:04 | M's ark


川口市に建つ複合建築「M's ark」に撮影で久々に訪問。
この建物は住宅にギャラリーやアトリエ、そして茶室が併設されています。
川口駅にほど近く利便性はありますが、準工業地域のちょっと退廃的な喧噪のなかに建っています。
敷地はとても奥に細長く、都会の隙間に建つような感じ。

道路からずっと路地が引き込まれるようになっていて、その奥に中庭があります。
乾いた界隈のなかで、ほっと息が抜けるような場所。
その中庭に面して小さなギャラリーをつくりました。

新しく建物を建てると、どうもきれいになり過ぎる、と思うことがあります。
そこでここでは、あえて無造作な雰囲気でコンクリート壁を仕上げました。
実際にはコンクリートの調合や鉄筋など入念な確認のもとで造られているのですが(笑)



ギャラリーでは、無造作コンクリートと、節のある無垢の木の床材が、展示物と不思議な呼応をしてくれます。
窓から遠くに見えるのは錆びた鉄骨階段や剥がれた壁など、ちょっとハードな街の裏方の光景。
でもこうして中庭に緑が植えられ、自然光が柔らかく入ってくると、守られたような安心感であったり、不思議な居心地の良さがあります。
そして、置かれた聖母像の素朴な深淵さに促されるように、静けさに誘われます。

都会の真ん中に、廻りの環境と切り離して、静かで奥行きのある居心地よい場所をつくりたいと考えながら設計していました。
私淑する建築家ルイス・バラガンが、メキシコの街なかに埋め込むようにしてつくった自邸を脳裏によぎらせつつ。
そんなイメージがどこか去来するような空間になってくれました。
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障子のあるキッチン

2020-10-17 22:42:33 | M's ark


川口市に建つM's ark のキッチン。工業系の地域にあり、周囲環境は雑然とした雰囲気の界隈です。
そんな環境から距離を置き、静かな雰囲気の空間になることを求めてインテリアをデザインしました。

キッチンには窓があり、そこには障子がはめられています。
キッチンに障子!?と思われるかもしれませんが、大きな窓だけれども外部からの視線も気になりませんし、カーテンやブラインドなどを吊るす必要もないので、むしろ実用的でもあります。
障子の紙はアクリルでコーティングされているものを選んでいるので、水拭きもできます。



実際にできあがってみると、しんと静かな雰囲気のキッチンは、凛とした雰囲気も漂います。
赤く見える床はブラックチェリーの無垢フローリング。障子を通して入ってくる抑制された自然光のおかげで、無垢板の質感や、扉の取っ手の輝きが際立ちます。

外への眺めは閉じられているけれども、これもひとつの窓辺の空間かなと思います。
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中庭を望む窓辺

2019-12-28 23:34:38 | M's ark


今年の最後に、川口市ですすめてきた住宅が完成しました。
完成といっても、まだ少し残りの工事もありますが、引っ越し前のつかの間、できあがった空間を独り占め(笑)

この住宅は駅近くの雑踏のなかに建ちます。すぐ傍を通る電車の音が時折ゴォーッと響き、隣のコンビニの空調機がうなり、放置自転車が丸見えで、ビル、ビル、ビル・・・。
「準工業地域」というなかなかハードな環境のなかに、喧噪から離れて落ち着いた室内をつくりたい、というのが設計当初からの考えでした。

そうしたできあがったリビングの空間。細長い敷地の真ん中に中庭をとり、このリビングは中庭に面しています。
大きな窓は北向きで、直射日光は入らないけれども、穏やかな自然光に満たされてとても明るくなりました。
壁沿いにはソファが置かれる予定。家族や来客で囲むのが楽しくなるように、窓辺にはベンチを造りつけました。
中庭に植栽が植えられ、窓から緑が見えるようになると、この空間はしっとりと落ち着いた雰囲気になりそうです。
街の中に、暮らしの傍に、すこしでも緑を。

タモ材のベンチや、カラマツの無垢フローリングのもつ木目や風合いが美しく浮かび上がるように、壁や天井はグレージュがかったトーンで塗装しました。
なにか特別なものをデザインしたいのではなくて、身のまわりにある物事に、趣きを感じられるような雰囲気をつくることが目的です。
日常が、じんわりと良いものになるように。

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引きたてる色

2019-11-28 23:04:18 | M's ark


川口で進行中のM's ark の工事もいよいよ大詰め。内装も徐々に仕上がってきました。

写真のリビングは、タモ材を用いた造作が見ごたえのある空間になりました。
タモ材のもつ色味や風合いを引き立てるように、壁や天井の色をどのようにするかを、いろいろと思案しました。
結果選んだ色がこれ。

いわゆる白ではなく、グレーベージュのような色。少し赤味も帯びています。
余白のある大きな壁と、大工さん渾身の木の造作家具。床はざっくりとした風合いの唐松。
養生シートが外れて、すべての調和があらわれるのが楽しみです。
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コンクリートの誘惑

2019-05-31 21:34:03 | M's ark


川口M'S ARKの現場。型枠が外れ、コンクリート躯体の全貌が現れました。
内装が行われる前の、今しか体験できない空間です。細長い敷地に合わせて長く延びるコンクリートの壁のなかに、中庭がつくられています。

外から内へ。
内から外へ。

出たり入ったりしながら場面が豊かに展開し、不思議な空間体験です。
コンクリートだけの静けさと仄暗さが、より一層神秘的な雰囲気を醸し出しています。
すでに建築家の手から離れ、確固たる物として自立しているような印象を受けます。
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