煙るリスボン

2022-10-02 18:35:53 | 旅行記


建築をやっていると、個人旅行でいろいろなところへ見に行きたくなります。
16年前に行ったポルトガル・リスボンは、独立して事務所を立ち上げたばかりでヒマだったこともあって、10月の気持ちのよい季節での旅行でした。

リスボンは新市街と旧市街がはっきり分かれた街です。それまで、アラン・タネール監督「白い町で」や、ヴィム・ベンダース監督「リスボン ストーリー」などで、ノスタルジックな雰囲気に溢れるリスボンの街並みを期待していましたから、空港からの道すがら最初に見たリスボンの新市街の無味乾燥さには、少々がっかりしたのでした。

その足でメトロに乗り、旧市街へ。深い地下ホームから延々とエスカレーターに乗って地上に向かう、タイムスリップしていくような不思議な感覚。
そして投げ出されるように突如地上へ。
そうして最初に出会う風景がこれ。

夕方、煙る街。エレクトリコと呼ばれる市電がけたたましい車輪の軋む音を立てながら走り去っていきます。
この煙、道端で魚を焼いている煙なのです。え、今の時代に道端で魚焼き!? と少々カルチャーショックを受けつつ、遠いところへ来たなあとしみじみ実感したのを覚えています。
匂いや音といった、目に見えないものが意外にも、物事のイメージを決定づけるように思いました。
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ハイライン ニューヨーク

2022-07-12 22:48:45 | 旅行記


ニューヨークを訪れたときに、ここは素晴らしいなと胸躍った場所がありました。それはハイラインと呼ばれる「空中散歩道」です。
昔、貨物輸送のための高架線となっていたところが、時代の変遷で廃線となり、荒廃し、植物が繁茂し、治安も悪くなり・・・
いわばニューヨークのお荷物のようになってしまったそうですが、その空間性こそ魅力だとして再開発し、都市公園として整備されたものだそうです。
廃線跡が歩道として整備されているのですが、そのデザインが素晴らしく、明るくキレイにし過ぎないところがポイントです。
倉庫街やビルの裏側をうねうねと道は続き、かつてそうであった雑草が繁茂した退廃的な雰囲気もいい感じで再現されているのです。



ニューヨークは街全体としてみると、現代的というよりも古典的、クラシックな雰囲気が多勢を占めます。
まだ現役の木製の高架水槽、レンガ積のビルの外壁、分厚い木の窓枠・・・。
素朴な材料が今でも残り、個性を主張するというよりも、調和があります。
ハイラインを歩いていると、そんな素朴な街並みの風情を間近に感じられるのも楽しいところ。
残したいものがたくさんある。そんなふうに思える街は素敵ですね。
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魔女の宅急便

2022-04-30 21:39:47 | 旅行記


昨晩 TVで「魔女の宅急便」がやっていて、ついつい見入ってしまいました。
Yahooコメントかなにかで、何十回観ても飽きない、と書かれていましたが、ストーリーも知っているのに何回でも観たくなるというのは、いったいどういうことなんでしょう。
ぼく自身も、何回か観たことがあるような気が(笑)
なんだか幸せな気持ちになるんですよね。お馴染みのストーリーもさることながら、背景の美しい街並みや、魅力的なパン屋さんにも。

モデルとなった街並みは、実在するいくつかの街並みのイメージをミックスしているそうですが、そのなかのひとつにポルトガルの港町ポルトも入っているそうです。
もう15年以上前ですが、旅行で初めてポルトの街に訪れたときには、遠い街に来たなあと感慨にふけった記憶があります。
電車の終着点サン・ベント駅は、石とタイルで覆われた建物で、いい具合に摩耗した雰囲気が、ぼくにはとてもしっくり感じられました。

ポルトの街は、道路の舗装も、建物の壁も、家具も、何もかも、昔から存在する古い素材でできている街。単純に言うとプラスチックとかビニールとかが無いのかな。
どちらかというとそういった素材に囲まれた東京に暮らす身からすると、とても羨ましくなりました。

道すがら出会ったパン屋さん。店構えは石造り。そのガラスショーケースのなかにはパンがゴロゴロ。パンまでもが石やガラスと同じような「素材」に見えてくるから不思議です。
パッと見には石ころのような固そうなパンなのですが、実際に買って食べてみると、ふんわり柔らかくて美味しいこと!

「魔女の宅急便」でキキが店番をするパン屋さんは、また別の街に実在するパン屋さんがモデルになっているそうです。
店の外から眺めて楽しく、ドアを開けてその香りで幸せになる、という様が、映画のなかでも活き活きと描かれています。
斬新な何かを描き出すというよりも、これまでの人生で見たり聞いたりしてきたあらゆる「記憶」が、映画を観ながら去来するような感覚がもたらされます。
メランコリックな気分のテーマ曲や、空をホウキにまたがって浮遊するシーンは、すべて「記憶」という儚いものに繋がっているような気もします。
そんなところにも、この映画の飽きない魅力があるのでしょうか。

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Patina

2022-01-28 19:20:42 | 旅行記


写真はイタリア中部のコルトーナという小さな街の、とある小さな教会。
堂内には古びたベンチがあって、長く使われ続けて表面が摩耗し、独特の味が出ていました。
床の舗装石もすっかり擦り減って、いい雰囲気になっていますね。

木や石や鉄などが色あせ、摩耗し、錆びるなどの経年変化した様子をPatinaパティナ というそうで、日本語では「古色」という表現がしっくりくるそう。
新しいものではなく、古びたものに現れる美しさって、ありますよね。
ふだんぼくが家や建物を設計しているときも、できあがってピカピカのかっこいい姿というよりも、使い古された状態をイメージしています。
そんな雰囲気をイメージするとき、どうしても欠かせないのが「自然光」の効果です。
物に趣きを与えパティナたらしめるのは、そう、自然の光なのだと思います。
この小さな教会の堂内でも、小さな窓から印象的な自然光が差し込んでいました。
木が、石が、自然の光を受けて静かに息づいています。
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サン・ダミアーノ

2021-12-31 20:41:41 | 旅行記


数年前にイタリア中部のアッシジを旅行したとき、サン・ダミアーノという修道院を訪れました。
イタリア在住時の記憶を珠玉のエッセイにしたためた須賀敦子の著作や、エリオ・チオルの写真集などの影響で、僕にとっては訪れる前からかけがえのない場所でした。
ですが大学の建築学科の授業や専門書ではまったく登場しない場所です。そういうものなのですよね、本当に「効いてくる場所」というのは。
実際に訪れてみると、僕にとっては理想とも思える場所でした。

集まって暮らすことの理想形、というのでしょうか。
個人が一人で過ごす場所と時間、そして他者と関わりながら過ごす時間と場所。
そういったことがとても自然に感じられる雰囲気に満たされていました。

平穏と安らぎ。
そういったことをじんわりと思い浮かべました。
華々しい建築デザインというよりも、平穏や安らぎの感覚をもたらしたい、という思いをより強くした経験でした。
そうした旅の記憶が徐々に僕の内面のなかでも熟成されて、新たな設計のなかに活かされていくといいのですが。

今年もブログにお付き合いくださいましてありがとうございました。
どうぞよいお年を。
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