古いランプ

2018-09-10 17:29:22 | 白楽の家


「白楽の家」は、大学時代からの友人O君から依頼されて設計した2世帯住宅でした。
O君の御父上が幼少より育った古い平屋の家。当時、大工さんが腕によりをかけてつくった様がわかります。
長い年月を経て、独特の風合いを帯びた備品の数々。
その古い家を建て替えるにあたり、それらのいくつかを、新築の家にも再利用できないか、そんなことを相談しました。
家の解体の前に、何を残すか決めて、大工さんにはいってもらい丁寧に取り外し、保管しておきました。

写真は、風呂場についていたレトロなランプ。遠くに見えるのは、和室の欄間の造作。
新築の家のなかでひっそりと、でも独特の存在感をもって息をふきかえしてくれて、とても嬉しくなりました。

カタログから製品を選んで据え付けるのではなく、昔の家にあったものや古くからあったものを敢えて使うことは、たんに記念という以上の意味があるように思うのです。
かつてここにあった時間を、ほんの少しだけ思い起こさせてくれるような、愛しい存在。
もっとも、そんなことを感じさせてくれるような雰囲気で使わなければ、まったく意味は無いのですが。
そんなところが難しく、そしておもしろいところです。
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ステンドグラス

2016-12-05 18:25:34 | 白楽の家


白楽の家。
階段をのぼっていくと、不意にこの光景に出会います。
アンティークの、ステンドグラスとガラス照明。

若い施主が新しい土地に家をつくるのとちがって、2世帯住宅の親世帯には、時に人生のなかの思い出が主要なテーマになったりします。
あるひとつの断片からひろがっていくイメージの世界。
たとえば、ヨーロッパでこのガラス照明を買い求めた遠い過去のこと。

他人にひけらかすものではないけれども、家のなかにそっと漂う記憶。
そんなものを大切にしたいと思います。

だからこの空間はほの暗くして、ステンドグラスの鮮やかさか際立ち、ガラス照明の陰影が美しく映えるようにしたいと思いました。
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寄る辺を築く

2016-02-06 22:23:57 | 白楽の家
「白楽の家」の敷地に旧家屋が建っていた時は、平屋建てでした。数十年前は、平屋でも遠く富士山まで見通せた、絶景のロケーションだったそうです。
だんだんと近隣地域の市街化がすすみ、いつしか、富士山を望むことができなくなってしまいました。
2階建てとして建て替えれば、きっとまた富士山を望むことができる。それも、この家の建て替えの楽しみのひとつでした。

2階にリビングをつくり、見晴らしを愉しむ窓辺をつくることが設計のテーマとなりました。





木でつくった大きな窓辺。そこはベンチにもなっていて、座ると包まれたような雰囲気のスペースです。
この窓辺は、いろいろな工夫を重ねてデザインしてあります。
準防火地域ですから、防火用のアルミサッシを使う必要があるのですが、アルミサッシは、見た目にも無味乾燥として窓辺の空間に馴染みません。
そこで、アルミサッシの枠が目立たないように木で窓枠を造りました。
風景がきれいに見えるように、網入りガラスの代わりに防火シャッターを設置し、透明なガラスをつけています。
また、網戸がいつも付いているのもジャマですから、収納式のプリーツ網戸を木枠の中に仕込んで、普段は隠れるようにしています。
ロールスクリーンも、レースとドレープのものが2重に入るように、十分な大きさのロールスクリーンボックスが組み込んであります。
そして、ベンチの背もたれも木でしっかり造りました。
窓脇の本棚収納やAVボードも、木の窓枠と一体となったデザインとなっています。

こんな風にして、窓辺に寄り添うことを考え抜いてデザインをしました。
ここから、遠くを眺める。開放感と安心感とが交った不思議な感覚。
ベンチに座って見下ろすと、古くから残る庭木が身近に感じられるようになりました。

この家の主役として、以前からあったものを大切にしたかったのです。
古くから残る木々を身近に感じ、記憶のなかの風景を、もういちど蘇らせること。
大きな窓辺のデザインに、そんな思いを込めました。



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古い木々と

2016-01-30 17:54:10 | 白楽の家


前回のブログの続きで、「白楽の家」のお話です。
「白楽の家」は古い既存家屋の建て替えでした。もともとは平屋で瓦屋根の載った家でした。こじんまりとしながらも風格のある、丁寧につくられたことのわかる家でした。
庭には古い木々が多く残り、それらをぜひ残そうということになったのです。

和風の木々。縁側に座って眺めるように植えられたそれらの木々も、いつしか目の前を洗濯物が遮るようになり・・・。生活との一体感は乏しくなっているように感じられました。
そこで、せっかく残すのだから、なるべく古い木々が存在感たっぷりになるようにしたいと思ったのです。

新しい住まいでの庭いじりをとても楽しみにされているお父様のために、庭いじりの合間に息をつける、心地よい場所をつくりたいと思いました。

土足のまま上がり、ゆっくり腰をおろして一服できる場所。
屋根がかかって雨や日差しをよけれる場所。

そんな場所があるから、ゆっくりと庭いじりが楽しめるのだと思います。



庭の風景をきれいに切り取り、また、木陰が暗示的に映り込むように、壁の配置の仕方には気を配りました。
この壁は、僕の亡師・村田靖夫が好んだ色。村田さんが長年の住宅設計のなかで見つけた、緑の背景としてもっとも似合う色。
一見どうということのない色なのですが、飽きることのない調和。 
これまで僕も、いくつかの住宅で採り入れてきましたが、この家でも古い庭木の背景として、居心地の良い場所を縁取ってくれています。

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コンクリートのWC

2016-01-18 23:47:05 | 白楽の家


前回のブログでトイレの話を取り上げましたが、ちょっとそのつながりで・・・。

上の写真は、昨年末に竣工した「白楽の家」のトイレ。その壁面は、なんとコンクリート打ち放し仕上げなのです。
この家は、鉄筋コンクリートと木造が、同じ階で混構造になっているという、実はとても特殊な工法で造られています。
ですので、木造の家の中を歩いているつもりが、コンクリートの壁に不意に出会う場面がいくつかあるのです。

トイレの壁面をコンクリート仕上げにしたい、というのは、もともとは施主の希望でした。
水回りでコンクリート仕上げというのも、僕自身もこれまで経験がなかったのですが、でもそれは面白そうだとやってみることになったのです。

「このトイレ、なんか落ち着くんですよね。」そんな風に最初に教えてくれたのは、工事監督からでした。
徐々に内装が仕上がってくるなかで、こじんまりとしつつも異彩を放つこのスペースは、扉を閉めると、たしかに、なんだか妙に落ち着きます。
一人きりの空間のなかで、コンクリートは存在感たっぷりです。
大学でコンクリートを専門に研究し、コンクリートと格闘してきた、施主であり友人のO君にとっては、一番、「自分の城」を感じる瞬間なのかもしれません。
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