アトリエの完成

2015-03-26 18:24:01 | 庭師と画家の家

「庭師と画家の家」のリノベーション工事が終わりました。画家Yさんにとって待望の、自宅に併設されたアトリエです。
コストを調整しながら設計内容を盛り込むのは難しかったけれども、収納量たっぷりの棚越しに、真っ白なアトリエが見える光景は新鮮で嬉しくなりました。
天井高も高く、また、油絵の大型キャンパスの搬出入をしやすいように、細長い扉をつけたり、実用に即した工夫が散りばめられています。


今回の工事に合わせて、居住部分の3階のテラスにデッキを増設しました。イペという脂分の多い南洋材を用い、耐久性もバッチリです。
リビングからの続きで部屋も広く感じられ、遠くには桜の木立も眺められ、心地よい春に間に合いました。

できあがって6年が経過した家に、新たなスペースが加わることで、またひとつ家の雰囲気が大きく変わりました。
生活の状況に合わせながら少しずつ手を加えていくことで、ずっと長く住み続けていただけるのなら、こんなに嬉しいことはありません。
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一年点検

2010-03-13 11:59:08 | 庭師と画家の家

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「庭師と画家の家」の一年点検に伺いました。

この家は、奥様である画家・山本睦さんの作品を中心に、これまでに集めてこられた絵やオブジェのためのギャラリーのような空間でもあります。生活が始まってから、それらの絵が少しずつ飾られ、行くたびに楽しみが増えていくような感じです。今回、この家の空間のために描かれた絵を、はじめて見ることができました。

薄暗い小屋裏で、あるいは修道院のなかで、宗教画や美術が生まれた瞬間のことを思い描きながら、この家の設計をしていました。素朴な、美術のための小屋。細長い敷地のなかに、細長いギャラリーが、上から降ってくる自然光に誘われるように奥へ奥へと続きます。部屋ごとに区切られているというよりは、歩き回れるようにできている家。そのなかに、絵やオブジェが見え隠れしながら散りばめられています。美術が、日常生活に寄り添ってくるような親密さを感じることができました。

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食事会

2009-05-11 11:55:37 | 庭師と画家の家

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「庭師と画家の家」の住まい手の方から、建設にたずさわった方々をディナーにご招待いただきました。各職種の皆さんが集まり、総勢14名!賑やかな会になりました。そのぶん準備が本当に大変だっただろうと思うのですが、手料理が並び、心のこもったおもてなしに感動しました。

この住宅の工事を担当していただいたのは、僕の師である故・村田靖夫が懇意にしていたオカダコーポレーションという工務店でした。僕が村田さんのスタッフだった頃、住宅ができあがった後このような会にご招待いただいた際には、村田さんが真ん中にいて、その隣に僕も座らせてもらっていました。その頃に顔を合わせてきた各職方のメンバーと一緒に、こうしてまたご招待いただけるのは、嬉しくもあり、背筋が伸びるようでもあり。村田さんはもういないけれど、やはりどこかにいるような。

師匠がお亡くなりになって、寂しいでしょう。施主に言われた言葉。施主は僕よりもずっと前から村田さんとお付き合いのあった方。そうですね。寂しいです・・・でもなんか、腹の底にずっと先生いますよ、今でもよく怒られてます。たぶん同じように弟子ひとりひとりの腹の底に、やはり生きているんでしょうねぇ。なにしろ迫力あるひとでしたから。鬼の形相でつくりあげた、静かな住宅。言葉のイメージにギャップがあるけれど、そうしないと本当に美しい静けさはつくりあげられなかっただろうし、結局、その静けさとは、迫力に満ちた雄弁な沈黙だったのだと思う。

少しずつ絵も飾られ始めました。どの絵をどのように飾るか、思案中とのこと。高窓からの光の下、床置きになって飾られるのを待つ絵。そのなかを悠々闊歩する黒猫。なにやら不思議な魅力があります。

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パリのアパルトマン

2009-04-19 19:27:31 | 庭師と画家の家

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春先に引き渡しをした「庭師と画家の家」に訪れました。

アプローチとなる前庭には、住まい手の庭師によって植栽がほどこされました。主木はアオハダ。左官塗りの壁を背景に、落ち着いた雰囲気になってきました。

内部にはダイニングテーブルが置かれ、ペンダントライトが取り付けられ、ひとつずつ、場所が形づくられてきていました。

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引っ越し後に訪れたご友人によると、天窓から光の降る階段を上がる感じ、素朴な天井の雰囲気、テーブル脇の小窓から街並みを見る感じなど、以前に暮らしていたパリのアパルトマンを思い出す、とおっしゃっていたそうです。たしかに、古びた陰影深いアパルトマンの屋根裏部屋に、ひっそりと飾られた絵の数々・・・そんなこともイメージしながら設計をしていましたので、とても嬉しい言葉をいただいたなと思いました。

この住宅は全体がギャラリーのような空間になっています。現代の住宅デザインらしいシンプルさとは少し距離を置き、さまざまなオブジェや絵が飾られるなかで立ち現れてくる独特の質感と雰囲気を、大事にしたかったのです。

階段の吹き抜け部分に飾られる大きな絵は、画家である奥様によって描かれ、今は展覧会に出展中です。そこから戻ってきたら、ついにこの家にかけられます。それから次第に、大小さまざまな絵が飾られていく予定です。一足先に、石膏の彫刻も随所に飾られ始めました。それは時に電話台になったり。若い頃の思い出が詰まっているという古びた石膏の彫刻が、静かな雰囲気の光のなかに係留されています。いろいろな思い出とか記憶とかが、ゆっくりと流れ出すように。

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新しい住宅でありながら、ずっとそこに在りつづけてきたような、古びた美しい雰囲気の空間であること。この住宅ではそんなことを求めました。少しずつそれが雰囲気として表れ始めたことに、ちょっと幸せを感じました。

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光の箱

2008-12-13 20:34:55 | 庭師と画家の家

建築中の「庭師と画家の家」が、工事も終盤を迎えています。左官塗りの外壁も仕上がり、内部も大工作業が終わったところから、塗装も始まりました。

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僕は住宅設計をするとき、「光の箱」をつくるようなイメージで考えることがあります。光の箱。抽象的な言い方ですが、人が一日の時間を過ごすそれぞれのシーンを考えたとき、そのシーンにふさわしい光のことをイメージしたくなります。明るい場所なのか、ほの暗い場所なのか。どのような心持ちでその場所に立っているのだろうか、あるいは座っているのだろうか。手紙を読むとき。音楽を聴くとき。それはフェルメールの絵画のような光なのだろうか。など。それらのイメージの集積として、ひとつの家ができあがっています。結果として、陰影豊かな空間ができあがることを心待ちにしているのです。住宅はとにかく隅々まで明るく、という価値観からは少し離れているかもしれませんが、それぞれの生活のシーンを引き立たせる、美しい窓と光の在り方があると思います。それらのスペースと光が集まってできあがる、「光の箱」としての家。

「庭師と画家の家」は、建物の幅が3メートル、奥行きが20メートルあります。とても細ながい家。1階はピロティで持ち上げられた、地上に浮かぶ方舟のような家です。そこには大小さまざまな窓が開けられています。陰りのあるエントランス階段から、らせん状に登って3階の光溢れる空間へ。その一連のシークエンスのなかに、いろいろな表情をもつ光を散りばめました。

ある日の建築現場。天窓から光が降る階段室で、ぼぅっと佇んでイメージしていました。画家である住まい手の絵が飾られたとき、この階段は、もはや「階段」ではなく「ギャラリー」となることでしょう。

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