月見台の家.4 ~月見台の庭~

2011-08-22 14:41:50 | 月見台の家

春先に竣工した住宅「月見台の家」のお施主さんから、庭ができました・・・とのご連絡をいただき、先日お伺いしてきました。

すこし唐突な話になりますが、「家」というものについて考えるとき、床・壁・天井といったカタチあるものに最初に関心をいだくか、それとも、それらのカタチの間に挟まれた、いわば空気のようなカタチのない「場所」に関心をいただくかで、家の設計やデザインのあり方も変わってくると思います。

「月見台の家」は、まさにその後者の考え方でイメージした住宅でした。野生のリスが走り回る小高い丘の上の立地。そこから奥にぐっと引き込まれたような敷地。風が気持ちよく抜け、桜の木立が見える、ポケットのように奥まった静かな、場所。

「カタチ」ではなく、「場所」をつくりたいと思ったのです。床や壁や天井は、そんな「場所」を引き立たせる良き背景であってほしいと思いました。生活がはじまって置かれる家具や道具、植栽などは、「場所」のイメージをかたちづくる、ひとつひとつの「かけら」のようなもの。そんな「場所」の風景は、静けさと穏やかさに満ちた、そう、「ロマネスク」がもつ慎ましやかさにも似た雰囲気になるのではないかな、と思っていました。

思い描いていた「山の上のロマネスク」の家。どんな風になっているかなと、とても楽しみにしながら坂道をあがっていきました。

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たどり着くと路地状の通路に、背の高い雑木が覆うように植えられていました。樹木の奥に風景が見え隠れし、奥行きのある雰囲気がでてきていました。

庭にしつらえられたベンチコーナーの板壁に促されるように、さらに、さらに奥に。

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そうして玄関にはいると、高さの抑えられた窓から、北庭の気配が見えます。

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この住宅は、北と南の両方の庭に包まれるようにリビングが配されています。リビングへは、木でできた大扉を開けて入ります。リビングへ入ることが印象的なものになるように。

大扉を開けた視線の先は、リビングを抜けて、南庭へすうっと抜けていきます。

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南庭は雑木の庭。ソロの木が幽玄な幹肌を見せてくれます。リビングからデッキへ、デッキからベンチコーナーへ、床の高さと雰囲気を変えながらつながっていきます。ベンチコーナーの柱には、モッコウバラが絡んでいます。やがて蔓が延びていき、綺麗な花を咲かせてくれるのが楽しみです。設計の意図を汲んで植栽を施していただいた造園家、手入れを欠かさず丁寧に住んでいただいているお施主さんに、頭が下がる思いになります。

北庭は和風の庭。白砂利の敷かれた、落ち着いた庭の先には桜の木立が見えます。

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木でできた家具と床は、家にしっとりとした質感を与えてくれます。単調で大きな白い壁と天井は、ものごとの背景としての心地よい余白になってくれます。そんな単純で素朴な家の内と外には、歩き回るといろいろな風景と場所が連なっていて、常に新鮮な気持ちになります。ちいさな楽しみが、ギュッとつまったような家。緑が植わり、家具類も置かれ始めて、この家が持つべき空気感が見え始めているように思いました。

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東山の家 5 ~京都の表具屋さん~

2011-08-01 12:22:27 | 東山の家

「東山の家」が、いよいよ竣工に近づいてきました。この住宅は茶室や水屋を備えており、その仕上げ方も特殊になります。通常の現場ではなかなか会うことのない方々に会うことができ、それもこの現場の楽しみでもありました。

木製の板戸や障子、襖なども、一口に和風といっても関東と関西では、またその寸法体系も異なります。障子の桟も、もうひとつ細く。それが京都の流儀でもあります。そんなようなことから、今回の現場では京都の建具屋さんに来ていただくことになりました。

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こんな感じどうですか、と見せていただいた障子の桟は5ミリに満たない細さです。杉材もなるべく綺麗な赤味を選んでいただいたようで、そんな風にしてできあがった障子には、得も言われぬ柔らかさがあります。

建具屋さんと一緒に来ていただいた京都の表具屋さん。普段から茶室や社寺関係の仕事が多いとのこと。この後また寺の仕事にはいる前になんとか予定を組んでいただいて、東京の現場に来ていただきました。
 時代は変われど、良き技と道具は変わらぬ、ということでしょうか。仕事の跡が染みついた道具類は、四畳半茶室の淡い光のなかで鈍く光り、独特の存在感を放つ、かのようです。この日は茶室の腰張りを貼っていただきました。腰張りというのは、着物が土壁にこすれるのを防ぐ、帯状の紙のことです。西の内紙、湊紙という2種類の紙を貼り分けるのですが、糊の調合にも工夫が必要で、後で張り替えができるような強さに調整しているそうです。下地の壁の粒子が浮き立つよう、ブラシを叩きつけるようにして張り仕上げていく方法は、見ていて実に独特です。
こうして腰張りと畳、そして襖がはいったとき、「現場」から「室内」に一気に変わったように思いました。

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あわせて襖の吊り込みもしていただきました。襖の引き手は、お施主さんのお好みで珍しい意匠のものも取り入れました。京都の表具屋さんをもってしても「なかなかつけることがないから、穴開けとか緊張しますわ。」と笑われながら開梱した襖の、なんという存在感!最後に調整し、一気に吊り込んでいきました。

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畳屋さんが一言ポツリ。「大工さんの仕事の精度がいいからうまくおさまったな・・・」。そんなことを聞きながら、そういえば、それぞれの職方の皆さんが、自分の後に続く仕事のことを気にしていたことを思い出しました。大工さんが下地をきちんとつくってくれないと、左官屋さんがいくら腕が良くても、結果として良い仕上がりにはなりません。少しずつのその気持ちと努力が重なって、家の佇まいや雰囲気に関わっていくのだろうと思います。

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