時計塔モニュメント

2022-10-05 22:46:21 | アート・デザイン・建築


JR川口駅前にある「キュポ・ラ」広場に、ぼくが独立して設計アトリエを立ち上げて、初の実作があります。
それは建物ではなく、時計塔モニュメント。
新しくできた広場にあわせて時計塔モニュメントを募るデザインコンペが開かれ、ぼくの応募案が採用され実現したのでした。
鋳物の街・川口を表象するデザインが求められたものでした。柱部分を覆う素材は鋳物で、川口の文字が象形文字のようにして浮かび上がるようなデザインにしました。



案の採用後、実現に向けて主催者側とのミーティングが重ねられましたが、そのなかで、どの方向からも時計が見えるように、という意向を伝えられ、柱の頂部には3つも時計がつくことに。
電波時計とよばれるこの時計は高価で、柱本体の造作に関わる費用も結果的に削られることに・・・。
なにしろ独立当初は、実作を残すことに渇望していて、そんなデザイン変更の流れを受け入れたのでした。

下の写真はコンペ案の模型です。広場の待ち合わせ場所として、人々が時計塔のまわりに集まっているような光景をイメージしていました。
側面に張り出された時計が、レトロなモニュメント感を引き出してくれているようで気に入っていたのですが、これは実現することがありませんでした。でも見てみたかったなあ。




昨年の東京オリンピックの記念イベントの一環として、東京オリンピック1964の国立競技場 聖火台が、鋳造地の川口に凱旋することになり、しばらくこの広場に展示されていました。
あの有名な聖火台に並んで、時計塔が!!
これはちょっと萌えました(笑)

実現するということは、腑に落ちないこともあるけれど、喜ばしいこともあるものです。



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江戸からかみ

2022-04-09 21:18:07 | アート・デザイン・建築


あらゆるデザインで、simple is best とする志向は強くあります。
では、美しい装飾をデザインしてほしい、と言われると、なかなか難しいところです。
そんなことを思うとき、古来からのデザインにも目を見張るものが多くあります。

写真は、和室のある住宅の襖。襖紙として江戸からかみと呼ばれる和紙を選びました。
地の色も渋く、そこに黄金色で染められた波のモチーフが描かれています。
照明の具合で、見る角度によってくるくると表情が変わります。
古くに造られた版木が大切に保管され、今でも使うとのこと。
良いものは残り続けるのですね。

以前に、日本画家 上村松篁のエッセイを読んだとき、「川の水面から必要な線を引き出してくるのは苦労した」というエピソードがありました。
画家の手によって選ばれた線は簡潔でありながら、優美で装飾性のある線でした。

シンプルなもののもつ削ぎ落された美しさは好きだけれど、選び抜かれた線による装飾性もやはり惹かれるなあ。
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不揃いの石

2022-03-26 23:04:57 | アート・デザイン・建築


フローリングの木の話の次は、石の話。
上の写真は、フィレンツェで訪れた修道院の床の舗石。
何百年も風雨に晒されていますから、この風合いは新築の住宅で真似しようはないのですが・・・
それにしてもいい味です。

風化した石の表情のさることながら、石の切り出し方にも技芸がありますね。
敷き並べたピースの間からはコケらしき緑が見えて。これも良い雰囲気です。

メーカーから出されている製品は、どれも寸法がきちんとできているから、良い意味での不揃いな感じは出にくいもの。
そこで、もともと寸法の不揃いのモルタル製の下地材を並べてできあがったのが下の写真。
間からはコケも生えてよい雰囲気になりました。
こちらはできあがって10年ぐらいの写真ですが、フィレンツェの何百年の大先輩になんとか追いつこうとした労作!?です。


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住宅と寸法

2022-02-10 22:23:40 | アート・デザイン・建築


エクスナレッジよりムック本が発刊されました。
住宅の寸法について特集された専門家向けの書籍で、ぼくの設計した事例からもいくつか寄稿しています。

設計とはつまるところ、材料を選び寸法指定をすることに尽きますので、「寸法」は究極のテーマといえるかもしれません。
ぼくの師匠の建築家 村田靖夫は、それはそれは寸法にキビシイ先生でした。
一見何気なく見える空間が、ピリッとした緊張感をもつ。それは緻密な寸法設計によって成り立つことを、修行時代には叩きこまれました。

村田さんのもとで設計をし始めてまだ間もない頃のことです。
「室内の高さは15センチ刻みでしっかりイメージできるようにしろ」と言われました。
和室の基本寸法である180センチを基準として、そこから15センチ刻みに、195センチ、210センチ、225センチ、240センチ。
窓や天井の高さを示すそれらの寸法を自在に操ることによって、そのスペースに最もふさわしく心地よい高さ関係を生み出すというわけ。

それらの高さ寸法を熟知していた村田さんは、平面図(間取り図)を見ただけで、その空間のプロポーションの良し悪しを一目で見抜いていました。
村田さんが特に好んだ天井高さは225センチでした。窓の高さを天井いっぱいまで開けると、屋外や庭に向けて空間が伸びやかに続いているのが感じられるのです。
それよりも天井が高いと間延びをしてしまう。そんな流儀がありました。

一般的によいとされているよりも、ひとつ抑制の効いたキリリとした寸法体系が生み出す空間性。
そうした流儀に触れる時期があったのは、ありがたいことだったのだと思います。
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平家納経

2022-02-05 22:56:34 | アート・デザイン・建築


夜中にやっているTVアニメ「平家物語」に惹かれています。
「鬼滅の刃」のアニメーションも圧巻なのだけれど、この「平家物語」の静かな映像の美しさに見入ってしまいます。
正面性のある構図で背景が描かれ、輪郭線は描かず色彩のグラデーションだけで事物の姿かたちと奥行き感を表現し、幽玄なのです。

ちょうど大河ドラマでも同時代が舞台になっていますね。(しかも鎌倉にちょうど設計の仕事があるという幸せ。通うぞ~ 笑)
平家について思いを馳せると、ぼくにとって外せないのが「平家納経」絵巻です。
隆盛を極める平家一門が厳島神社に奉納した「平家物語」絵巻は、一流の絵師や作家によってつくられています。

美の極み。
最初にその存在を知ったのは、画家・有元利夫がエッセイのなかで、平家納経を「汲めども尽きぬ源泉」と評したことを読んだのがきっかけでした。
有元はピエロ・デッラ・フランチェスカなどのルネサンスの古画に影響を受けた画風で有名ですが、その簡素古朴な画風と、平家納経の画風は、どこかで響き合うところがあるのでしょうか。

学生時代にぼくが建築学を通して学んだのは、ひたすら幾何学を出発点とした造形だったように思います。
幾何学から遠く離れた「平家納経」の画風をどのように理解したらよいのかわからないけれど、心の奥底で明滅し続ける存在です。

写真は小松茂美著「平家納経」より。
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