自然にゆだねて。

2023-09-23 22:27:38 | 自由が丘の家


僕のアトリエの玄関ドア。できあがって10年ぐらい経ちます。木枠のドアに、堀商店の真鍮製のドアハンドルがついています。
真鍮の色は鈍くくすみ、ドアの木枠も細かなキズに覆われ、色も剥げ落ち、いい感じです。
色が剥げ落ちれば、本来は塗りなおすのが正しいのでしょうけれど、どうもそんな気持ちにならないような風合いがあります。

単なる木枠に、製品のハンドルを取り付けただけ。
そのほかに何の作為もありません。
でも自然の力にゆだねると、こんな美しい風化が得られるのですね。

玄関ドアを入るとすぐに打合せスペースになっていますが、お越しになった建て主さんはこのドアを必ず目にします。
そして皆さん、気に入ってくださいます。
そして、ウチの家にもコレと同じモノを・・・ということがこれまでも幾度とありました。

うーん、やっぱりまだしばらくは塗り直せないね、これは(笑)
そんなふうに悠長にしていられるのは、ドアの上には大きな庇がかかっていて、ドアとハンドルに雨が吹き込まないようにできているから。
そんな設計の配慮をしながら、積極的なエイジングを楽しみたいものですね。

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断片と未完成

2023-07-23 12:50:58 | 自由が丘の家


盛夏のアトリエのエントランス。
道路から見ると、一番目立つのはシンボルツリーのモミジ。
シンボルツリーといっても、あとから植えたものではなく、もう何十年も前からこの場所に植わっていて、建物はそれに寄り添うようにして建っています。
モミジの影に隠れて、建物の外観は全体像がよくわかりません。

いま、ちょうどガウディの展覧会がやっています。
ガウディの建築は、主要なものは意外にも未完成のものが多いのです。
サグラダファミリア聖堂にしても、最高傑作と言われるコロニアグエル地下聖堂にしても、今のところ未完成です。
そして全体の完成形は、はっきりとしたかたちでは資料が残っていません。

未完成のものがもつ魅力というものがあると思います。
欠けているところをイメージで補おうとする想像の余地があるからです。

全体がなく、未完成。いわば断片の集積だけで、全体を感じさせる。

おおげさにいえば、ぼくのアトリエもそんなふうに感じ取られるといいなと思いながらつくりました。
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緑のある玄関

2023-06-20 22:26:13 | 自由が丘の家


夏も近づき、日に日に庭の緑も濃くなります。
アトリエの玄関前には古いモミジの木があって、玄関前に覆いかぶさるようになりました。
モミジの木の方が建物より古いですから、むしろ建物がモミジの木に寄り添っているというほうが正しいかもしれませんね。

道路から外観としてみると、主役はモミジの木で、なかば隠れるようにして玄関ドアが見えます。
木製の玄関ドアは濃色で着色され、ドアハンドルは真鍮製なのですっかり風合いが出ています。
こんなふうに古びた雰囲気は素敵だなと思います。

以前にフィレンツェを旅行した時に、左官塗りの壁と、古びた木の窓枠、摩耗した石の床、それらに緑の影が映り込んで揺らめいている光景をよく目にしました。
その旅行の直後に設計したこのアトリエには、そんな風情の記憶が色濃く影響しているのかもしれません。



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木漏れ日の玄関

2022-11-14 22:27:27 | 自由が丘の家


秋がだんだんと深まってきました。木々も色づき始め、落葉も始まっています。
「自由が丘のアトリエ」のエントランスも、ガラスの玄関ドアを通して木漏れ日が入るようになってきました。
木漏れ日の主は、もう何十年もこの場所に立ち続けるモミジです。

ガラスの向こう側には、まだ青々とした葉がゆらめいていますが、これから一気に真っ赤に色づきます。
季節ごとの当たり前の景色を、印象的な風情として楽しめるように。
そんなことを思い描きながらつくった空間です。



見慣れてしまうようで、飽きることがない。
そんな家がいいなあと思います。
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patina

2022-04-15 23:13:24 | 自由が丘の家


暖かくなり、一気に新緑が芽吹いてきました。
毎年くりかえす光景ですが、同じように季節が巡ってくるというあたりまえのことに、この春はことさらありがたく思います。

この「自由が丘のアトリエ」も10回目の春を迎えています。
できあがったときよりも、より美しくなるように。
いつもそんなことを思い描きながら家をつくっています。



この木枠のドアは、ラワンという樹種の木材に、防腐の塗料を施したものです。
真鍮のドアハンドルの色が、金ピカから黒ずんで味わいが出てくるのに呼応するように、ハンドル廻りの塗料も少しずつ剥げ落ちてきました。
知らず知らずのうちにさわっているんですね、きっと。
塗りなおした方がよいともいえるけれど、やはりこのままにしておきたいと思っています。
時間をかけて自然にできあがる風合い、いいですよね。この家で過ごすことへの愛着が湧いてくるように思います。
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