古びた額縁が、ひとつ。
実はこれ、建設が進行中の「山中湖の家」で使うアイテムなのです。
この家は不思議な物語性を内包した家で、施主のKさんが与えてくださったテーマと、スタッフのUさんのもつ感性やイメージにも導かれながら設計がすすんできました。
新築なのに懐かしく、異形なモノが室内にそして屋外にも散りばめられます。
とあるアンティーク屋さんでUさんが見つけたこの額縁は、この家のなかでちょっとしたイタズラ・・・いえいえ不思議なアイテムとして係留されることになります。
さてどのように細工をしようかと、いろいろと四苦八苦しているところですが、まずはイメージとして、ぼくの大好きなオディロン・ルドンの絵を入れてみたところ・・・。
ルドンはこれまでもぼくのブログによく登場してきましたが、19世紀末~20世紀初頭にかけて活動した不思議な画家です。
世紀末の時代に生き、文字通り「異形」なキャラクターを描き続けました。陰鬱なモノクロームの画風。
そしてある時代から次第に、慈愛と色彩に満ちた作品を生み出すようになりました。
上の写真の絵は、そんな時代の始まりの頃でしょうか。ヴェールで覆われた女性の横顔を描いたこの絵は、モノクロームで静かな画風のなかに、内省的な気分が漂います。
古びた額縁とルドンの絵の組み合わせは、なにか不思議な呼応があります。
それは、「山中湖の家」に底流する物語性にもどこか呼応しているように思えるのです。
この家ができあがったら、カッコよく記録写真を撮るというよりも、この家に宿る物語を、絵本のようにしたらおもしろいだろうなあ、なんて本気で思っています。