「鎌倉小町の家」は、裏千家茶道の稽古の場としても使えるように設計した家です。
茶室の設計にはさまざまな決まり事があり、その規範から外れないように注意深く設計しなければいけません。
この家の茶室は、京畳の八畳和室ですが、炉がふたつあり、そのうちのひとつは、2月の一か月間だけ使用する「大炉」になっています。
そのほか、本来は小さな茶室に設けられる「にじり口」も備わります。
せっかくだから、いろんなお稽古に使えるほうがいいでしょ。
そんなふうに朗らかに話される施主のKさんのお人柄に合った、明るく居心地のよい茶室にしたいなあと思いながら設計をしました。
あんまり堅苦しいと、みんな疲れちゃうでしょう。
ホント、その通りですよね。
だから、間取りをあれこれ工夫しながら庭を捻出し、南庭に面した明るい部屋になりました。
床柱は優しい風合いの北山杉の絞り丸太。新木場まで施主と一緒に材料を選びに行きました。
施主とのやりとり、大工さんとのやりとり。いろいろな思い出がギュッとつまっています。
凛とした雰囲気でありながらも、居心地の良さがある。
そんな茶室を目指してあれこれ考えて設計する時間も楽しいものでした。
茶道も突き詰めれば自由なものといいますが、建築家にとっては茶室の設計も自由で楽しいものだなと思います。