茶室を楽しむ

2024-02-11 22:49:42 | 鎌倉小町の家


「鎌倉小町の家」は、裏千家茶道の稽古の場としても使えるように設計した家です。
茶室の設計にはさまざまな決まり事があり、その規範から外れないように注意深く設計しなければいけません。

この家の茶室は、京畳の八畳和室ですが、炉がふたつあり、そのうちのひとつは、2月の一か月間だけ使用する「大炉」になっています。
そのほか、本来は小さな茶室に設けられる「にじり口」も備わります。

せっかくだから、いろんなお稽古に使えるほうがいいでしょ。

そんなふうに朗らかに話される施主のKさんのお人柄に合った、明るく居心地のよい茶室にしたいなあと思いながら設計をしました。

あんまり堅苦しいと、みんな疲れちゃうでしょう。

ホント、その通りですよね。
だから、間取りをあれこれ工夫しながら庭を捻出し、南庭に面した明るい部屋になりました。
床柱は優しい風合いの北山杉の絞り丸太。新木場まで施主と一緒に材料を選びに行きました。
施主とのやりとり、大工さんとのやりとり。いろいろな思い出がギュッとつまっています。

凛とした雰囲気でありながらも、居心地の良さがある。
そんな茶室を目指してあれこれ考えて設計する時間も楽しいものでした。
茶道も突き詰めれば自由なものといいますが、建築家にとっては茶室の設計も自由で楽しいものだなと思います。

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鎌倉小町へ

2023-10-28 22:24:08 | 鎌倉小町の家


鎌倉の小町にできあがった家。植栽の植え付けも終わったとのことで、お伺いしました。
鶴岡八幡宮の門前町らしい古風な趣きのある界隈にしっくり馴染むよう、控えめに佇む外観としてデザインしました。
建て主は裏千家の茶人で、家には茶道の稽古にかかわる諸室が設けられています。

京畳でつくられた八畳広間は、明るく柔らかい雰囲気の部屋です。
亭主が座る畳の向こう側には庭が広がり、午後の穏やかな光が入ってきます。
住宅の中にある和室ですから、やはり日常使いとしても気持ちの良い部屋にしたいですね。

撮影をさせていただいた後、薄茶を一服いただきました。
その美味しいこと!

午後の時間、照明もいらず、自然光だけの室内でおしゃべりするのは、穏やかでとても楽しい時間でした。
設計のはじまりからの思い出話にも花が咲き。
できあがった家は、訪れた方々からも「とても居心地がよい」と評判をいただいているそうで、設計者としては冥利に尽きる思いです。



お茶の道具のお話にもなり、所有されている「高台寺蒔絵」柄のナツメを拝見しました。
ナツメというのはお茶の粉を入れておく器のことなのですが、和室のなかで見るその姿は、なんとも美しい趣きがあります。
こういう雰囲気を、言葉でなんと表現したらいいのでしょうか。

楽しく盛り上げていくようなインテリアではなく、むしろ穏やかさのなかに沈んでいくような不思議な空間。
そんな室内をつくれたことが、とても嬉しく思っています。

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植栽の打合せ

2023-05-22 22:12:58 | 鎌倉小町の家


「鎌倉小町の家」にて、植栽の打合せを行いました。この住宅は裏千家の茶道の稽古場としてもフル稼働しています。
まだ庭ができあがっていないのですが、いよいよ6月から植栽工事が始まります。
前庭、坪庭、主庭・・・いくつかの庭が生活空間を彩ります。一方で、土地の広さには限りがありますから、状況に応じて造園家にアレンジしていただいています。
造園家による庭のデザインプランや資料を見ながら、細かな内容の打合せが進みました。



建て主のKさんから、訪れた方々が、とても落ち着くと言っていかれることをお聞きしました。
グレーがかった壁の色、ほどよい広さや天井の高さなどもそんな落ち着きをもたらしてくれているかと思いますが、やはり主役は、置かれたいくつかの家具なのだろうと思います。
写真に写っているのは名作ソファLC2。ご結婚時に購入されたものだそうで、もう何十年も暮らしと共にあり続けたものです。
あらかじめこのソファを置くことを念頭にリビングの空間を設計しました。
6月には、窓越しにイロハモミジが植わり、その向こうには大きめのソヨゴが、そして左手からは白梅が枝葉を覗かせてくれる予定。
朝から午後にかけて、このソファコーナーでは木漏れ日と樹影が楽しめそうです。
造園家が、オノさんは木漏れ日が好きですからね~と言いながら庭デザインをしてくれました(笑)いやあ、ありがとうございます。

それにしても、使い込まれて黒光りするLC2。かっこいいなあ。


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鎌倉スパイス

2023-02-07 22:06:18 | 鎌倉小町の家


「鎌倉スパイス」~いなせな大人の隠し味~ という名のスパイスをご存知でしょうか。
このスパイスが、とっても美味しいんですよ。
と「鎌倉小町の家」の建て主におすそ分けしていただいたのですが・・・これがやみつきになる美味しさ!
パキスタンやインドの香辛料を配合した独自の味わいで、どんな料理にも合う程よいスパイス感がクセになります。

黒猫チー坊のイラストがあしらわれたシンプルなラベルに、ガンメタル色のキャップのついたシンプルなボトル。
スパイス類のボトルのデザインって、目立つようにカラフルだったりフォントが派手だったりするのが多いように思いますが、こんなふうにシンプルなボトルが逆に目を引きます。
テーブルに置いてあってもよい感じで、だから使いたくもなります。身の回りのちょっとしたグッズこそ、デザインに気を配りたいものですね。




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壁の色

2022-11-08 23:17:31 | 鎌倉小町の家


「鎌倉小町の家」がお引渡しを迎えました。
家の内外ともに壁の色がグレートーンになっていて、そのぶん窓から入る自然光が印象的に見えます。
特に、障子越しに入る光は、白い光となってその印象がよりいっそう鮮やかになります。

海外旅行にて、教会のステンドグラスなどを通した崇高な光に身を浸しながら、その瞬間になぜかいつも脳裏に浮かぶのは、日本の数寄屋や茶室にある、静かな白い光でした。
そんな風情を大切にしたくて、白い光を浮かび上がらせるため、この家では壁をグレートーンにしたのでした。
壁は白くすることが一般的なところを、グレートーンにすることは、建て主にとってはちょっと冒険のような心持だったかもしれません。でも、その決断をしていただいたことでこの空間が生まれることができ、建て主には感謝の思いです。


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