真鍮のドアハンドル

2013-12-31 17:17:36 | 日々

今年の春にオノ・デザインのアトリエを新設し、まだ1年も経っていませんから、室内のいろいろなものがまだ新しさの名残があります。そのなかで、アトリエの玄関のドアハンドルが率先して、古びた雰囲気を放つようになってくれています。

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このドアハンドルは真鍮でできていて、新しいときは金ピカです。それが、手に触れたりすることを通して酸化し、黒ずんで独特の古びた雰囲気が出てきます。アトリエができあがった頃はまだ金ピカ具合が「異彩」を放っていましたが、半年ほどをかけて徐々に黒ずんだ味わいが出てきてくれました。堀商店製のこのハンドルは握り心地もよく堅牢であることも有名で、ガチャリと閉まる手応えも気持ちよいのも嬉しいところ。

ドア本体はラワンの木でフレームができていて、濃色に塗装を施しました。落ち着いた色調のドア枠を背景に、金ピカのハンドルは黒ずんで、これみよがしな主張をすることなくなりましたが、ドアの開け閉てをするたびにちょっと嬉しくなるような、そんな充実感をもたらしてくれるようになりました。

派手ではないけれど、それがあることが嬉しくなるような、満足するような、そんなものごとの在り方を大切にしたいと思います。

そんな家になるよう、来年もひとつひとつの家を磨き上げるようにして設計していきたいと思います。

どうぞよいお年を。

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大きな出窓の家

2013-12-18 18:15:58 | 進行中プロジェクト

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富士に建てている住宅が、もうすぐ完成を迎えます。行政の検査や、設計のチェックのために訪れました。

寒いけれどもとてもよく晴れた午後。現場に着くと、いつものように傍らを流れる疎水の水音がちょろちょろと聞こえます。なんともいえず落ち着いた気分になるこの音。そしてその向こう側に広がる緑地。

とても静かなこの雰囲気に寄り添うように、家の設計を考えてつくりました。窓の少ない、土色の壁の脇をまわりこんで、家にはいります。新しい家というよりも、古くて慎ましい礼拝堂にはいるような気分を、家の佇まいに求めていました。

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この家には、道から見てわかりやすい玄関というものがありません。庭に続く土間の出入口が、いわば玄関がわり。ですから、木で窓枠をつくりガラスをはめ込んで、土間の中からも外の緑が気持ちよく感じられるようにしたいと思いました。屋根と壁に囲まれた、少し陰りのある雰囲気が心地よく感じます。

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土間から家のなかにはいると、リビングには大きな出窓がひとつ。

外の緑や木漏れ日が居心地良く感じられるように、窓の位置や大きさに注意を払いました。腰かけるのに十分な奥行をもった出窓には、初冬の日差しを受けて、木漏れ日が印象的に映り込んでいました。

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出窓の外には庇がついて、その軒裏が見えるとどこか安心感があります。

な~んにも無いのだけれど、居心地がよい。そんな空間ができたように思います。ゆるゆると午後の時間が過ぎていきました。

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片倉の家

2013-12-07 23:54:05 | 進行中プロジェクト

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横浜・片倉の家が上棟しました。旧家に遺された茶道具などを収蔵し、一部は再利用して建て替える計画です。茶庭のつくばいや紅葉も残しました。昔からあるそれらの茶道具や庭木が、しっくりと馴染む家にすること。おのずと、新しい家の設計は、和風の趣のあるものになりました。炉のきられた和室も備わります。

昔は家のまわりは林だったんですよ、今はもう家が立ち並んでしまったけれど。お施主さんからそのような話を聞きました。そういえば、最寄の地下鉄駅から階段をあがってくると、最初に見える光景は、地山の紅葉した眺め。風に葉が散り、そんな光景を眺めながら街道沿いの坂道をしばらくあがっていきます。現場の思い出は案外、こういう行き帰りのシーンがよく思い浮かぶものです。現場に着くまでの間、黙々と歩きながら、そんなふうにして家に辿り着く時間も、家の一部なんだな、と思うことがあります。

少し前、コンクリートの基礎ができあがった時のことでした。現場に来てチェックをしていると、思わぬ光景に思わずニンマリとしてしまいました。

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これは猫か!?それにしては大きい気もするけど、きっと猫だな。3歩だけ足跡をくっつけて、どこかに行ってしまった。コンクリートを打ち終わって、職人さんが帰るのを待ってたな、そんな風に思うと可笑しさがこみあげてきました。

上棟式の折、あった、ありましたね、見ましたよ足跡! という話でお施主さんとも盛り上がったのですが、なんか足跡ちょっと大きかったですよね、と切り出したところ、タヌキかもしれないね、とお施主さん。え、タヌキ・・・?いるんですか? と聞くと、ええ、いますよタヌキ、歩いてます、と、近所に住んでいる監督さん。

タヌキが職人さんに見つからないようにこっそりと、隙をうかがっていたのでしょうか。かつてに比べるとうんと生息範囲も狭くなってしまったのでしょうけれど、まだタヌキが健在な街。そんな風土を感じながら家をつくることができるのは、妙な楽しみがあるように思います。

タヌキの足跡も、木の骨組みの下にそっと隠れて。

かつて林があった頃の風情と、旧家での思い出も、家の佇まいのなかに宿して。

じんわりと味わい深い家になるといいなあと思います。

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