桜坂の家.2~濡れ縁 Ⅱ~

2006-09-27 20:47:54 | 桜坂の家

濡れ縁は、ちいさな中庭に面しています。傍らに植えられているのは ブルーベリー。実のなる植栽は、生活のなかにちょっとした楽しみをもたらしてくれます。

中庭をはさんでダイニングがあります。椅子座と床座。それぞれの場所の使い勝手に応じて、中庭への関わりあいかたも変わります。ダイニングの前は、コンクリートで仕上げられたテラス、和室の前は濡れ縁に、といった具合です。おかげで、ちいさな中庭が、いろいろな表情を見せてくれるかのようです。060927_1

濡れ縁は、ひとりでぼぉっとするための場所。少し奥まっているので、考え事でもするのにちょうどよい場所になりました。古今東西、中庭というのは考え事をするための場所として人々に大切にされてきました。この桜坂の家の中庭は四坪に満たない 都会のなかの私的な空間。落ち着く場所というのは 意外にちいさくてよいものです。そこに面する濡れ縁は、ビールを片手に座ったり、寝転がったりするのにちょうどよい寸法に設計されています。

蝉にかわってすずむしの鳴き声が、中庭にしみいるようになりました。思いは深く、ふかく。

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桜坂の家.1~濡れ縁 Ⅰ~

2006-09-23 22:32:53 | 桜坂の家

桜坂の家ができてから、道行く人からは、「茶室がある家だ」と噂が流れていたようです。道から垣間見える、左官壁に開けられた濡れ縁が、茶室のにじり口のようなイメージで見えるから、という話も聞きました。

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桜坂界隈は、古色ある魅力的な雰囲気をもっています。街並みを覆う建物の多くは現代住宅に建て変わり、新建材を多用した外観が多いので、昔ながらの光景がひろがっているというわけではありません。それでも不思議なもので、ずっと昔から流れてきた時間の厚みが、なにかこう、体の奥深いところで直感的に感得できるような気がします。それは僕自身だけの気持ちであるというよりも、この場所に訪れた多くの人が、同じような感想をもつようです。

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そんな街並みの雰囲気が生活のなかでも感ぜられるように、この住宅は、街との距離感を慎重に図りながら設計されました。濡れ縁は、道路のそばに位置していながら、少し囲い込まれた配置と、植栽によって、街と近からず遠からずの落ち着いた場所になりました。

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秋の色

2006-09-18 18:29:22 | 日々

新潟にキャンプに行ったときに野原で採ってきた、と、施主からススキの束をいただきました。ススキは東京でも見かけはするけれども、あらためて眺めたのは随分とひさしぶりのことでした。

金色。

「自由が丘の家」の書斎脇の黒漆喰が塗られた壁を背景に、ススキの束を壺に入れて飾ってみました。西側に面した傍らの窓を開けると、風にそよそよと揺らいでいます。こころの奥底にしっくりくるような、そんな雰囲気になりました。

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僕が設計する住宅のインテリアは、白い壁が基調にはなっていますが、いくつかの色の壁をよく配します。いろいろな考えがあってのことなのですが、ススキの金色は、黒漆喰の壁を背に、より輝きを増すようにも思いました。その前を通るたびに、なんとなくはっとする、ような。

季節のものを取り合わせる、置き合わせるということが、日々のちょっとした楽しみであることは、日常生活に奥行きと豊かさをもたらすような気がします。

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自由が丘の家.4~前庭 Ⅱ~

2006-09-14 20:38:58 | 自由が丘の家

前庭には、梅の老木があります。いつからあったのか定かではないのですが、幹はすっかりやせ細ってしまい、皮一枚でつなっがている、そんな姿です。それでも、毎年花をたくさんつけ、その生命力には驚かされます。

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おそらくこの敷地の一番の「長老」に敬意を表し、この梅を保存することにしました。新しくできた主屋の白い壁を背景に、老木の樹形がくっきりと浮かびあがり、その存在を宣言しているかのようです。

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その脇を通るアプローチの舗装には、モルタルサイコロとよばれるものを用いました。通常 下地用に使われる安価なもので、大きさもまちまちです。それらを一つ一つ丹念に敷き並べていきました。すると、堅すぎず、いい案配になります。できてから5年が経った今では、その隙間から苔も生え、長い時間を帯びたような味わいがでてきています。

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あたらしいもの、ふるいもの。それらが同時に混在することで、前庭は「奥行き」のある雰囲気に包まれます。そしてそれは、この住宅にとって通底する考え方でもあり、前庭はそんな世界へのプロローグのような存在となっているのです。この前庭を通って、中庭へ向かいます。

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自由が丘の家.3~前庭 Ⅰ~

2006-09-11 17:41:02 | 自由が丘の家

それまで建っていた古い家には、芝生を囲む主庭がありました。植栽が大好きだった祖父母に愛でられた花木は、季節感をもたらし生活を楽しませてくれたものでした。

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新しい家の計画は、その庭を残すように配置が決定されました。

追憶の庭。

たんなる庭も、そんな詩的なイメージがともなえば、一層かけがえのないものになるでしょう。大切なものを慈しむように残すこと。そのために、駐車場の灰色の壁と、主屋の白い壁で、庭を囲うようにしました。おかげでその庭は、どこかの小さな教会前の広場のような静けさを得ました。灰色と白色のふたつの壁には、老木の影が映り込み、穏やかな木陰をつくりだしています。

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こうしてできた庭は、新しい家にとっての「前庭」となり、その様子は道路からも眺めることができます。道行く人にとって「街並みの奥行き」を感ぜられるものになれればよいと願って、つくったものでした。

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