左官塗りの音

2024-02-17 23:02:49 | 陶芸家の家


「陶芸家の家」をひさしぶりに訪問しました。
この家は壁と天井がすべて左官塗りになっていて、その質感を活かすように、天井がゆったりとした円弧を描いたカタチになっています。
左官塗り特有のザラついた質感によって、室内は自然光と陰影が独特の雰囲気になります。



工事中、左官職人さんがこの円弧を塗るところをしばらく見学していました。
ざらざらざら、ざらざらざら・・・
静かな現場のなかで、左官コテを動かすたびに室内に響く音が印象的でした。

できあがって何年経っても、何度見ても、この質感は美しいなと思います。
見ていると、心が落ち着くような。
とてもシンプルなカタチだけれども、とても余韻のある空間になりました。

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包まれる空間

2022-10-10 22:51:17 | 陶芸家の家


いつも家の設計をするときは、窓辺の空間を大事に設計しています。
内と外のつながりを慈しみ磨きあげるようにして、徐々にデザインが固まっていきます。

「陶芸家の家」のダイニングでは、中庭を囲んで緑が見えるのだけれども、あえて障子を閉めて過ごす時間のことを考えていました。
障子を通した自然光は、光の諧調がとても柔らかくなるように思います。
ダイニングテーブルの上に置かれた作家の器や料理の、その質感と趣きが十分に感じ取れるように。
それを受け止めるダイニングテーブルも、ナラ材の無垢の木でできていて、シェーカー家具のような佇まいです。
そしてそこで過ごす時間が穏やかで安らぎのあるものであるように、という気持ちから、天井はふわりと柔らかいカーブを描いてダイニングを包むようにしました。

ダイニングテーブルが収まるだけのこじんまりした空間ですが、そのぶん落ち着きと親和性が生まれました。
僕がこれまでつくってきた空間のなかでも、とりわけ好きなもののひとつになりました。
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玄関のドア

2019-07-18 21:00:47 | 陶芸家の家


玄関は明るいほうがいい。クライアントと新しい家について打ち合わせをしていると、そのような要望を受けることも多いものです。
もちろんそのような話が挙がるのは自然なことなのですが、ではそれをどのように実現するか、というのは意外に難しいものです。

玄関のドアそのものをガラス張りにするのもよいですが、家の玄関ドアが全部ガラスなのも、ちょっとなあ。そんなご意見もあります。
そこで、ドアは木製で造り、そのまわりをぐるりと防犯ガラス張りにして造ることがあります。

写真は「陶芸家の家」の玄関。玄関ホールは、陶芸作家であるクライアントご本人の作品を展示するギャラリーにもなります。
漠然と明るいのではなく、陰影の印象的な、しっとりとした雰囲気の玄関ホールをイメージしました。

ドアの脇には木を植え、その樹影が左官塗の壁にも映り込んでゆらめきます。
室内から見ると、すりガラス越しに緑陰の気配が感じられます。



その場所にあるものが混然一体となって生み出す雰囲気は、得も言われぬものがあります。

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前川秀樹さんの彫刻

2019-06-04 20:28:54 | 陶芸家の家


ある建て主の方との打ち合わせの際に雑談で、彫刻家の前川秀樹さんの個展に行った時の話をお聞きしました。
神秘的な作風の作家で、ちょうど在廊されていた作家本人に会った印象など、いろいろな興味深いお話でした。

僕が初めて前川秀樹さんの作品のことを知ったのは、「陶芸家の家」を設計しているときでした。
建て主の方から、家を建てるにあたりこの彫刻作品を置くことを前提に考えてほしいと言われ、一枚の写真を見せていただきました。その瞬間に僕自身もなにかこう、ぐっと掴まれたような気持ちになったのをよく覚えています。

宗教的な趣のある不思議な作風。髪を風になびかせながらその目は遠くを見つめているようであり、同時に、自己の内奥をじっと見つめているような。
作家自身が流木を拾ってきて、そこからインスピレーションを受けて造形が決まっていくそうですが、そんな背景にもなにか思いを馳せるものがあります。

いろいろと考えた末に、陶芸の工房と住居の間にある階段ホールの真ん中に、前川秀樹さんの彫刻作品を置くように設計しました。
一日のなかで何度もこの彫刻に出会い、周りを巡る動線からあらゆる角度で彫刻を眺められるようになっていて、波打つような天井の天窓から彫刻に光が降り下りてきます。



彫刻の目線の先には西向きの窓があって、一日が終わりに近づくにつれ、明るさが増していき、そして静かに闇に沈んでいきます。
窓の先には古い神社の参道があって、路傍の大きな古木の気配が感じられます。

流木から生まれたこの彫刻が、東京のある街にたどり着いて、その場所に流れる時間の記憶のなかにそっと寄り添っていく。
そんなイメージが、前川秀樹氏の彫刻の深遠な眼差しにそぐうものであることを祈りつつ、この場所を形作りました。

前川秀樹さんご本人から、彫刻作品の制作意図を直接うかがったわけではないけれど、作品に出会った個々人が、それぞれの解釈やイメージやストーリーを受け取ってもいいのではないかと思います。
そんな風に作品と「対話」するのは、とても楽しい時間でした。
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ハンマースホイのような。

2017-01-21 15:19:43 | 陶芸家の家

雑誌の撮影ですが、今週で唯一の曇天の日。
でも静かなこの家には、その雰囲気がとても合っているようにも思います。

フェルメールに影響を受け、モノクロームの静謐な画風が印象的なデンマークの画家 ヴィルヘルム・ハンマースホイを想い出しました。

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