玄関のドア

2019-07-18 21:00:47 | 陶芸家の家


玄関は明るいほうがいい。クライアントと新しい家について打ち合わせをしていると、そのような要望を受けることも多いものです。
もちろんそのような話が挙がるのは自然なことなのですが、ではそれをどのように実現するか、というのは意外に難しいものです。

玄関のドアそのものをガラス張りにするのもよいですが、家の玄関ドアが全部ガラスなのも、ちょっとなあ。そんなご意見もあります。
そこで、ドアは木製で造り、そのまわりをぐるりと防犯ガラス張りにして造ることがあります。

写真は「陶芸家の家」の玄関。玄関ホールは、陶芸作家であるクライアントご本人の作品を展示するギャラリーにもなります。
漠然と明るいのではなく、陰影の印象的な、しっとりとした雰囲気の玄関ホールをイメージしました。

ドアの脇には木を植え、その樹影が左官塗の壁にも映り込んでゆらめきます。
室内から見ると、すりガラス越しに緑陰の気配が感じられます。



その場所にあるものが混然一体となって生み出す雰囲気は、得も言われぬものがあります。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

前川秀樹さんの彫刻

2019-06-04 20:28:54 | 陶芸家の家


ある建て主の方との打ち合わせの際に雑談で、彫刻家の前川秀樹さんの個展に行った時の話をお聞きしました。
神秘的な作風の作家で、ちょうど在廊されていた作家本人に会った印象など、いろいろな興味深いお話でした。

僕が初めて前川秀樹さんの作品のことを知ったのは、「陶芸家の家」を設計しているときでした。
建て主の方から、家を建てるにあたりこの彫刻作品を置くことを前提に考えてほしいと言われ、一枚の写真を見せていただきました。その瞬間に僕自身もなにかこう、ぐっと掴まれたような気持ちになったのをよく覚えています。

宗教的な趣のある不思議な作風。髪を風になびかせながらその目は遠くを見つめているようであり、同時に、自己の内奥をじっと見つめているような。
作家自身が流木を拾ってきて、そこからインスピレーションを受けて造形が決まっていくそうですが、そんな背景にもなにか思いを馳せるものがあります。

いろいろと考えた末に、陶芸の工房と住居の間にある階段ホールの真ん中に、前川秀樹さんの彫刻作品を置くように設計しました。
一日のなかで何度もこの彫刻に出会い、周りを巡る動線からあらゆる角度で彫刻を眺められるようになっていて、波打つような天井の天窓から彫刻に光が降り下りてきます。



彫刻の目線の先には西向きの窓があって、一日が終わりに近づくにつれ、明るさが増していき、そして静かに闇に沈んでいきます。
窓の先には古い神社の参道があって、路傍の大きな古木の気配が感じられます。

流木から生まれたこの彫刻が、東京のある街にたどり着いて、その場所に流れる時間の記憶のなかにそっと寄り添っていく。
そんなイメージが、前川秀樹氏の彫刻の深遠な眼差しにそぐうものであることを祈りつつ、この場所を形作りました。

前川秀樹さんご本人から、彫刻作品の制作意図を直接うかがったわけではないけれど、作品に出会った個々人が、それぞれの解釈やイメージやストーリーを受け取ってもいいのではないかと思います。
そんな風に作品と「対話」するのは、とても楽しい時間でした。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハンマースホイのような。

2017-01-21 15:19:43 | 陶芸家の家

雑誌の撮影ですが、今週で唯一の曇天の日。
でも静かなこの家には、その雰囲気がとても合っているようにも思います。

フェルメールに影響を受け、モノクロームの静謐な画風が印象的なデンマークの画家 ヴィルヘルム・ハンマースホイを想い出しました。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヴォールト天井

2017-01-05 15:06:58 | 陶芸家の家


新年あけましておめでとうございます。
本年のブログは、昨年に竣工した住宅から。

写真は「陶芸家の家」のリビング。円弧を描くヴォールト天井が連なります。
リビングはⅬ型の平面をしているから、居る位置によって天井の見え方も、陽の入り方も、緑の見え方も異なります。
ですから、ひとつの部屋にいながら、居る場所、居る時間によっていろいろな雰囲気が楽しめます。

もともとこのヴォールト天井、きっかけは、施主が所有していた一体の彫刻作品でした。
前川秀樹氏の作品なのですが、流木をつかってつくりあげたものです。
流木の「流れ」や「波紋」のようなものであるとか、前川氏の彫刻のもつ宗教的なイメージに導かれ、聖母子像の納められるイタリアの修道院の室内のような、そんないろいろなイメージが交じり合ってできあがった天井のデザインでした。
そう、ちょうどひとつ前のブログで書いたフィレンツェのサン・マルコ修道院のような。

左官塗りで仕上げられた白い天井は、自然の光や照明の光をしっとりと空間に広げ、落ち着いた雰囲気をつくり出してくれます。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

初窯

2016-08-13 09:17:01 | 陶芸家の家


「陶芸家の家」のお施主さんから、初窯の器を贈っていただきました。
新しくできあがった工房の窯で、初めて焼きあがった器。ずっと家と工房づくりに関わってきた身として、感慨ひとしおです。
ご夫婦それぞれの作風が表れたマグカップと蕎麦ちょこ。この器を使うたびに、ふとお二人のことを思い出すのだろうと思います。
設計者としても、思い入れのつよい仕事となりました。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする