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ザ・ハウス YouTube記事

2025-04-28 22:11:06 | アート・デザイン・建築


建築家として登録しているザ・ハウスの新企画「あのメディアに掲載された建物について聞いてみた!」の第一回目として、「大磯の家」を取り上げていただきました。
『シンプルに暮らす小さな家(エクスナレッジ)』の本表紙になったU様邸について登録建築家・小野喜規さんにネホリハホリ聞いてみました!という企画です。

原稿なしのインタビューなので、思ったこと考えたことをそのままお話をしています。よろしければぜひご視聴ください!
ザ・ハウスYouTube あの本で紹介された建物について聞いてみた



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相対性理論

2025-04-15 22:31:45 | 日々


ぼくが大学1年生のときに、必修科目で物理学の講座がありました。
教授は大槻義彦先生。当時、「火の玉教授」というニックネームでよくテレビにも出演されていた有名人でした。
テレビのなかの先生と同じように、授業も面白くて物理学に関心がわく内容でした。
ですが大槻先生にまつわるウワサがありました。
試験が難しくてほとんどの生徒が落第する。でもオリンピックイヤーには恩赦で試験が簡単になるから、辛うじて卒業できる、はず。
んん~・・・ホントか?

オリンピックは2年後。今年は落第なのか・・・?
そして迎えた前期試験。
問題は全2問。
Q1 天にツバする、という慣用句があるが、天にツバしても自分にツバが落ちてこないようにするための、ツバの初速度を求めよ。
Q2 浦島太郎がカメに乗って竜宮城に行って戻ってきたとき、おじいさんにならないようにするための、カメの速度を求めよ。

こんなの、わかるわけないでしょー となり、結果は当然の0点。
この問題、相対性理論を用いれば解けるといいます。そんなことを講義で解説していただいたのでした。
ツバもカメも、信じられないぐらの猛スピードだと、理論上は成り立つのです。そんなシーンを想像すると笑っちゃいますが・・・
試験は0点だったけど、難解な物理学は、身近なところに潜んでいるという楽しみを教えていただいたのでした。

今年はあきらめるか。そう思いながら迎えた後期試験。
あれ、簡単じゃん・・・?
前期の0点を挽回するような点数を取れて、なんとか単位取得。
気がつけば、その年は冬季オリンピックの年だったのでした。ヤレヤレ恩赦だったか。

大槻義彦先生は、物理学で解明できないもの、科学で証明できないものは、すべてデマである。というような信念を持っておられたようです。
ですが、真正な宗教は別だ、と明言されました。
実体が存在せず、科学的に説明不可能だとしても、人間の心の支えになるものは、科学を超えた存在であると。

上の写真は、ルネサンスの画家ジョットが描いた宗教画。
人の心に直に触れてくるもの。
科学の一方で、人文学もまた、深遠な世界だなと思います。
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古いミシン

2025-04-09 20:58:30 | 阿佐ヶ谷 古木と暮らす家


古いミシンがあるんです。
建て主のHさんから見せていただいた写真には、今ではもう作られることのないレトロなミシンが写っていました。
今ではもう手にはいらないもの。

この家は、祖父の思い出が残る古い家の建て替えでした。
家は新しくなるけれど、祖父が大切にしていた庭木を残し、それらと共に暮らす家。
そこに古いミシンも加わります。



庭木の残し方や、それらに向き合う窓の位置や大きさ、リビングの配置について多くのスタディをしました。
古いミシンをどのように置くか、ミシンを使っているときにどんな風景が見えるのか、そんなことを考えました。

懐かしいものと共にあること。
家の安堵感というのは、こういうところから芽生えるのかもしれません。

この家のソファにごろんと横になってゆっくりしていると、ほんとに落ち着くそうです。
音楽を聴きながら、ゆっくりと流れる時間。

そういうのも、ヒュッゲですね。

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新人のころ。

2025-04-07 22:09:00 | 日々


4月ですね。ぼくが大学を卒業して企業に就職したのは1999年。建築デザインの潮流にもなんとなく世紀末感が表れていた頃だったと思います。
ぼくが就職したのは組織設計事務所とよばれる大手の設計事務所で、大規模なビルや公共建築などの設計を手掛ける会社でした。

就職してしばらくは新人研修があって、十数名の新入社員のメンバーと過ごすのはなかなか楽しい時間でした。
昼間に会社の重役のレクチャーがあり、社訓についての話もありました。
SPEED, SENSE,・・・あともうひとつ何か の頭文字をとって「3S スリーエス」を意識するように、という話がありました。
研修後、夜に新人メンバーで語らっているときに、誰かが「そうなんですか!すみません!!すぐやります!!!」のスリーエスなんじゃないのーなんて茶化して、みんな大笑い。
そんなことも楽しい思い出です。

それから20年以上経ち、今では会社の中核として奮闘しているメンバーもいるし、会社を去りそれぞれの道に進んだメンバーもいます。
ぼくは、会社の雰囲気はとても好きだったけれども、小さな建築がもつ魅力に惹かれ続け、ここでは成し遂げることができないと覚悟を決めて会社を出たのでした。
その後、小さな建築、すなわち住宅を造り続けてきたことには、ひとつ筋を通したいという思いもありました。

写真は、そんな会社員時代に描いていたスケッチや本です。
「沈黙の世界」だなんて、ずいぶんと内向的な本を読んでいたなあと思いますが、20代に繰り返し読んで影響を受けました。
スケッチはある住宅に花壇を造るとしたら、というイメージで描いたもの。ビルの設計に携わりながら、花壇だなんて(笑)
書いてある文字は、この本に書いてあった文章からの引用でした。

LINGUA FUNDAMENTUM SANCTI SILENTII
言葉は聖なる沈黙にもとづく

そんな言葉に啓発されるような建築や空間への憧れを胸いっぱいに抱えて、過ごしていた時期だったなあと思い返します。

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ピロスマニの椅子

2025-03-22 23:14:19 | 写真


設計した住宅ができあがると、いつも自分で写真を撮りに行きます。そのときにいつも連れていく「相棒」のような存在があります。
それがこの額縁の写真。
グルジアの画家ニコ・ピロスマニが暮らした家にある、テーブルと椅子の写真。
暗い画面のなかに、使い古されたテーブルと椅子が、鈍い光を放っています。
その姿は写真構図のなかでトリミングされ、全体像はわかりません。
そこにあるのは、画家の痕跡、のみ。

この写真を撮ったのは、写真家でもあり額装家でもあるMさん。
グルジアに行って写真を撮ったんですよ、そんなふうに案内をいただきニコンプラザに個展を見に行ったときのこと。
展示されていたこの写真にすぅっと引き寄せられた感覚を、今でも覚えています。
そのときはまだ、この被写体がピロスマニに由来するものとは知らずに、でもとてもこの写真が気になり購入したのでした。

姿かたちがあるものは、デザインがいいわるいとか言われることもあるけれども、デザインのよしあしで計れない存在感、というものがあると思います。
目の前にあるモノの姿形にいったん目がとまるにしても、そのさらに奥にイメージが続いてゆく。いろいろなことを内側に秘めて佇む、静かな存在感。
ピロスマニの家具を撮ったこの写真は、そんなことをあらためて思い返させてくれます。

できあがったばかりの新しい家のなかに、この額縁の写真があるのを感じながらカメラのファインダーを覗いていると、いつかこの家が古くなり、暮らしの痕跡を美しく醸し出すようになる時のことがイメージされて、心が満たされます。
でも、ただ漠然と古くなるだけでは、そのような雰囲気は表れません。
空間のなかの光と陰影によって、モノの存在感が引き立てられたときにはじめて、そのような雰囲気が表れると思うのです。
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