オノ・デザイン 小野喜規のブログ

建築家 小野喜規のブログ

浮いた洗面カウンター

2018-12-05 22:04:10 | 上池台の家


床面積が100平米・30坪程度の住宅では、洗面スペースと脱衣スペースは、多くの場合 省スペース化のために兼ねることも多く、洗濯機や収納もあわさってかなり高密度になることもあります。
暮らしのなかの、実用的かつ裏方のような役割のスペースですが、「上池台の家」では、あえてゆったりスペースを確保しました。

シンプルな大きな鏡と、すっきりと広がる洗面カウンター。しかも、浮いてます(笑)
スチールの骨組みで見えないように補強し、カウンターを支えています。
カウンター上にはオブジェのような洗面ボウルがちょんと乗っています。

水はねしない、シャワーが使える、掃除しやすい、なるべくコンパクトに などなど・・・実用的なスペースには実用的な要望が多くなるものですが、こんなふうに空間の気持ちよさを優先し「使うことを楽しむ」ことを徹底するのも素敵です。

上からは天窓からの光で明るく、天井も高い空間。
バックスペースだからこそ、気持ちの良い空間に。
そんなことも、暮らしを楽しくする秘訣のひとつだと思います。
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古河の光

2018-11-27 22:34:44 | 古河の家


建設中の「古河の家」の現場より。
渡良瀬川流域に広がる古河市の旧市街は、古い蔵も多く残る趣のある街並みです。
そのなかに、ギャラリーとアトリエの併設された住宅を建てています。

写真はエントランスから続くギャラリーのスナップ。
ヴォールト天井が掛かり、絞られた開口部に嵌められたステンドグラスから入る光は、さながらロマネスクの空間の趣。

完成したら、静けさと陰影と、印象的な光に満たされた場所になることを祈りつつ。



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CH47

2018-11-18 21:44:18 | アート・デザイン・建築


ぼくが愛用しているダイニングチェアは、ハンス・ウェグナーが晩年にデザインした「CH-47」という椅子です。
ハンス・ウェグナーのデザインした椅子としては、かの「Yチェア」が有名なのですが、このCH-47は、Yチェアよりももっともっと地味な(?)デザイン。
しかも、Yチェアよりも少し値も張るときたものだから、購入の際には代理店の方から「なんでこの椅子にされたんですか?」と質問を受ける始末。
それぐらい、販売数も少ない椅子のようです。

それでも、やはり自分にとってかけがえのない出会いというのはあるもので、ショールームに展示してあるものに座ってみたら、とてもしっくりきたのでした。
しかも、地味なデザインとは書きましたが、私淑する建築家ルイス・バラガンが愛用した、メキシコの民芸的な椅子のデザインの面影をどことなく感じさせることも、ぼくにとってはとても気に入ったところでした。

特徴的なのは、椅子の座面の幅がとても広くて55センチほどあります。すると、行儀よく正面に向いて座っているのも良いのですが、子供の相手をして横向きに座っても普通に座れてしまうのです。
時には座面上であぐらをかいたり。行儀悪いことこの上なし(!)ですが、いかにもジャストフィットです、というのではなく、日常用としてルーズな使い方をしてもしっくりくるところが、この椅子の奥深いところだなあと思っています。

椅子の材質はナラの木にオイルフィニッシュ。入手してから6年ぐらいの間に、徐々に味が出てきました。
傷がつき、ものをこぼし、結構ラフに使っていますがビクともしない。そんな頑丈さも素敵です。
おそらく一生使い続けるだろうな、と思える椅子です。
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ドアをめぐって

2018-10-30 21:52:12 | 旅行記


住宅には玄関ドアが必要になりますが、思い返してみるとぼくの場合、防火規制が避けられないときを除いてほとんど、木製の玄関ドアをデザインしてきました。
防火用の既製品の木製ドアも発売はされていますが、できれば、自分で図面をひいて建具屋さんに造ってもらうオリジナルのドアがいいなと思います。

写真は、遠くリスボンの街にある、とある教会のドア。
教会ですから「玄関ドア」という呼び方はしっくりこないけれども、でも役割としてはそんな感じのものです。
日本の神社や寺のように、道路から何層もの門扉や結界をくぐりぬけて深奥にたどり着くのではなく、ヨーロッパの教会は、道路に面したドアを開けると、いきなり礼拝堂があります。
ドア一枚で隔てているだけだから、否応なしに街の喧騒が堂内に入り込んできます。

それでも、キリスト教徒ではないぼくにも、安堵感であったり静寂が沁みてくるのです。
その気分はきっと、この古ぼけたドアの前に立ち、開けた時から始まっているようにも思います。
ギイっと軋みながら開く音。長年の間使われ続けてすっかり黒ずんだドアノブ。歪んだ木の板。無数の傷。
そんなものを通り抜けることによって、心のどこかで、自分以前から続く時間の厚みが胸の内に沁み、変わらぬものがあることへの安心感にじんわりと満たされていくのだろうと思います。
引き戸のように持ち上げて取り外されるものではなく、もう離れませんよと言わんばかりに ちょうつがいでしっかりと壁につなぎ留められ、ついでにちょうつがいもしっかりと年季を帯びているような。
そんなドアが好みです。

ぼくにとって、木の玄関ドアをデザインすることは、そんなことへの憧憬なのだろうと思います。
耐震や断熱などのように、性能として住宅を評価できるものではないけれども、古びたドアのように、心のなかに関与してくることを大事にとりあげながら、住宅をつくりたいと思っています。
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天井の高さ

2018-10-19 21:53:25 | 奥沢の家


2階建ての一軒家の場合、いわゆるLDKは1階あるいは2階のどちらかになります。
どちらが良いということはないのですが、それぞれの特徴を生かしたいと思います。

1階でしたら、庭など屋外スペースにつながる、水平方向に広がる静かな雰囲気を。
2階でしたら、天井のかたちが表れた、動的な雰囲気を。

写真は「奥沢の家」のリビング。3寸勾配の屋根のかたちが、室内に天井の高いところ、低いところを自ずと生み出します。2メートル弱から3メートルまでの高低差があります。
家の構造にしたがった作為の無い空間デザインですが、結果的に表れた天井の高いところ、低いところに、どんなスペースを配するかが楽しみなところ。
動的でありながら、包まれたような安心感もあります。
地面から離れて宙に浮いた高さから、外の緑を少し見下ろすような暮らし方も、風情があっていいものですね。

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