「古河の家」の点検へ。雨まじりの日でしたが、そのぶん新緑が鮮やかに映えていました。
この敷地は、間口が狭くて奥行きが60メートル!もの長さがあります。このような地型はこの地域特有のもの。
その土地の真ん中に、古い井戸がありました。
古い井戸を残そう。
家の設計はそんなところからスタートし、おのずと井戸を囲むように中庭のある間取りになっていきました。
道路は旧街道で交通量も多いのですが、中庭はそこからうんと離れたような感覚です。
古い井戸を利用した手押しポンプと、モーター式の井戸ポンプが併設されました。
手押しポンプはやはりレトロなデザインのものを。
傍らにはアオダモの株立ちが植わりました。
いつの間にか地面も下草で覆われて、良い雰囲気になってきました。
そんな中庭に面してダイニングがあります。
防火規制のかかる地域ですから、本来であれば防火用のアルミサッシを用いなければなりませんが、一定の長さの防火壁を設けることで、木製の窓がつけられるという緩和規定を利用して、オリジナルに木製窓をつけました。
この木製窓は両開き式で、全開口すると庭と一体的につながります。
決して大きくはない中庭だけれども、このようにダイニングと一体感があると、宝物のように感じます。
室内から見ると上の写真のような感じ。
窓からは中庭の緑と、自分の家の壁と、空が見えるだけ。
静かで穏やかな時間が流れます。
古河の旧市街がもつ、古色ある街並みの雰囲気。
隣の家は錆びたトタンの壁。でもそれも不思議といい感じ。
そんな古びた雰囲気に寄り添うように、新しいこの家も、「美しく古びる」ことに向けて素材やデザインが考えられています。
レトロな手押しポンプもそのひとつ。
室内には暗色の無垢のフローリングが敷かれ、壁はぐっとドーンの抑えられたグレージュ色に塗られ、次第に色が褪せて味がでる木製窓があり、ダイニングテーブルとペンダントライトは北欧のアンティークのもの。
新しい家だけれでも、古びているような。
古びているようだけれども、懐かしいという感覚とも違って、心が落ち着くような感覚。不思議な空間です。