バリアフリーに向けて

2019-05-27 17:58:12 | 久が原の家


住宅の玄関は、家の最初の顔になる部分ではあるけれど、段差あり、収納ありで、意外に高密度にいろいろなものが詰まっています。
さらには、適度な明るさも欲しいところです。

写真は「久が原の家」の玄関。明り採りの窓には目線の高さまで障子が建て込まれ、人の目線が遮りつつ、そこから柔らかい光がはいってきます。
もちろん、障子を開いて掃除もできます。

老後の住まいだから、玄関にも手すりを設置するなど、家全体としてバリアフリーに気を配った設計となりました。
バリアフリー用の建材は多く発売されているものの、間に合えばそれでよい、というような体裁のものが多く、取り付けると一気に施設っぽくなってしまうのが残念なところ。
だからこの家では、手すりや手掛けなど、肌に触れるところは極力 木で造作しました。

いつも手に触れられて、使い込まれて少しずつ味が出てくる。
バリアフリーの家にも、そんな風情は大切だと思います。



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家が永くあるために。

2019-04-18 20:22:19 | 久が原の家


以前にどこかで聞いたことがあるのですが、イタリアでは、新築の家よりも年数を経た家の方が価値があるのだとか。
実際にそうなのかどうかはわかりませんが、そうだとすればとても意義深いものだと思います。
なにせ、造ったものがきちんとストックとして扱われ、長く使われ続けることを意味していますから。

そう、家をデザインとしてみると姿かたちの良しあしが気になるところですが、同時に、家は使われるものです、道具のように。
道具ですから、メンテナンスしないと使い続けられません。家の場合、メンテナンスが必要なのは目に見えるところだけとは限りません。
水やお湯の配管も、高圧力や温度差にさらされ、いずれ劣化します。それをメンテナンスできるようにしてあるかどうか。

写真はヘッダー方式という配管の方法で、もし配管の不具合があった場合、生活に支障なく部分的な補修で済むように工夫した配管方式です。
床下に潜り込んで作業ができるように、点検口や床下の移動ルートも確保して設計したものです。
この家では、自分たちの次の世代も安心して家を受け継げるように、老後のみならず将来的な備えを大事にしてつくった家でした。
目に見えない部分ですが、これから新築をするときには、そんな配慮はきっととても大事なのだと思います。

そして、目に見える部分は、経年による「劣化」ではなく、「味が出た」と思えるような家でありたいと思います。
ペンキを塗り重ねたりしながら、年月を経てより愛着が増すような佇まいや質感の家でありたい、そんな風に思います。
遠い昔に建てられたイタリアのヴィラが、今もなお愛おしく思えるように。

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障子のある室内

2017-06-21 17:59:16 | 久が原の家


窓に障子が建て込まれた室内は、それこそ昔から星の数ほどあるのだけれども、床や壁の仕上げ材料が何でできているのか、障子の桟の割り付けがどのようにデザインされているかで、同じ四角い部屋でもずいぶんと印象がかわるものです。

すべてが完成し、引き渡し前の、生活が始まる前の一瞬の姿。
住宅は生活してからがなんぼ、とはいうものの、何も入らない「がらんどう」のこの瞬間に、いわば緊張感のある美しさが宿っていたりすると、建築家としてはちょっと内心ほくそ笑んでしまいます。
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