10年目の訪問

2021-05-29 22:52:11 | 月見台の家


できあがって10年経った「月見台の家」へ、点検を兼ねてお伺いしました。
植えた植栽は大きく育ち、建物と一体となっています。



もともと主張の強いデザインの家ではありません。でもなるべく出来合いの製品を用いずに、人の手で作り上げることを大事にしてできあがった家です。
そうしてできあがったものは、10年という年月を味方につけて、素材の味わいのある変化が見られます。
点検では大きな問題もなく、設備機器などいくつかを手直しをすることになりました。
でも、施主が大事に住みながらメンテナンスしてくださっていたから、家は元気なままでいてくれました。
年月を経るごとに、家がよくなっていく。そんなことを実感できて、じんわりと心地よい気持ちに。

建築の仕事は未来を思い描くことでもあるけれど、同時に、かつて自分が考えたことに時を隔てて現実として向き合い、味わい、反省することにもなります。
10年前に考えていたことは、この10年を経てどうであったのか。



家には新しい家族が加わっていました。13歳のおじいちゃん猫。
11歳のときに保護猫を譲り受けたそう。
もう俊敏には動けないけれど、点検でまわるみんなの後をのっそりとついてきて、どれどれと一緒に覗き込む。

緑陰深い空間で過ごす、静かな午後の穏やかな時間。
そこには人懐っこい猫もいて。
10年前には知らなかった言葉だけれども、ヒュッゲという言葉がやはり当てはまる。そんな場所になっていたことを嬉しく思いました。
今やりたいと思っていることを、10年前に予感できていたのかな。
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窓辺に寄り添う

2021-05-18 16:58:53 | 大磯の家


新緑の季節の光景を写真におさめたく「大磯の家」の撮影に伺いました。
この日の天気は雨交じりの曇り空。静かで、しっとりとした落ち着いた雰囲気。新緑の緑がより鮮やかに引き立って見えました。

暮らしの場の中心として、庭に寄り添うようなダイニングがいいなあ。
家の設計にあたり、施主からはそんなふうなリクエストをいただいていました。

デザインの方針を決めていくときに、コンセプトを打ち立てて言葉で進めていくことも大事だけれども、経験的に培ってきた素材を選ぶ感覚や寸法感覚がやはり要になるのだと思います。
この日は、植栽がはいって初めてダイニングにゆっくり座って過ごしました。

鳥の声が聞こえる。
仄かに雨音。
濃色に塗られた窓枠越しに、新緑がぐっと迫ってくる感じ。
造園家が丹念に植えた優しい雰囲気の草花。
アンティークの家具。
天井に宿る陰影。
そんなひとつひとつが、この場所で過ごす居心地の良さと安堵感につながっていくように思いました。

窓辺の本棚には絵本がたくさん入っていて、いずれお孫さんが来た時に賑やかになるのを待っているよう。
施主のセルフビルドによるバーべーキュー台もあったりして、これからの楽しい生活に開かれています。

今後は、晴れた日にも来て、木漏れ日を体験してみよう。


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