ブルックリンの窓辺

2020-09-26 23:39:45 | 旅行記


ニューヨークを訪れると、その街並みの雰囲気にクラシックな印象をもつ人が多いそうです。
マンハッタンのビル街もそうですし、タウンハウスが建ち並ぶ住宅街についても、新しいというよりは むしろ古い印象をもつのは、その素材のせいもあるかもしれません。
レンガや石、そしてとっぷりとペンキの塗り重ねられた鉄の外階段。
街としての歴史はそれほど古くないのに、東京よりもずっと年季のはいった質感を感じ取れるのは、うらやましいなあと思います。

写真はブルックリン地区の住宅街。建物自体は画一的な感じなのですが、レンガ積みの外壁に緑が絡んで、いい雰囲気です。
住宅街では、建物と緑がワンセットになっていますね。広い庭があるわけではないのに、どの窓からも緑を身近に感じられるのは素敵です。



ほどよい大きさの窓辺から、室内のスタンドランプの明かりが洩れます。
防犯意識の高い街だから、壁もドアも重厚そのものなのだけれど、ひとたび中に入ってしまえば、安心感のある時間が待っている。

10月に間もなくはいって ひんやりとした気候になってくると、少しずつ色づき始めた緑を窓の外に見やりながら、温かいコーヒーを煎れる。
そういうのも「ヒュッゲ」な時間というのでしょうか。



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母の家

2020-09-22 22:59:34 | 大磯の家


現場の帰りに大磯の海に立ち寄ったとき、ふとあるひとつの住宅作品のことが思い浮かびました。
フランスの建築家ル・コルビュジエが、母親のためにつくった小さな家のことです。

大学の建築学科に入学すると、啓蒙活動のようにル・コルビュジエこそが巨匠だとの授業を受けることになります。
白い豆腐のようなかたちで、細長いリボンのような窓が連なっていて、云々・・・。
うーんよくわからないけれど、どうやらすごいらしい。すごいと思えない自分はダメなんだろうか・・・。
そんなフレッシュな学生に畳みかけるようにコルビュジエの作品を紹介され、「母の家」とよばれるちいさな家も、名作として教え込まれるのでした。

レマン湖を前にして建つ、26坪の広さの平屋の家。
住人は母上ひとり。じつに100歳を超えるまでこの家で過ごしたそうです。
居心地がよかったんですね。

授業ではこの家について「近代建築の5原則が詰まっているのだ!!」と声高らかに教え込まれるわけですが、見た目はいたってシンプルで素朴にさえ見えます。
レマン湖に沿うように細長い間取りがあって、湖に向けて細長い窓が続く、ただそれだけの家。
レマン湖に面しているんだから、ドーンとフルオープンの窓でもあれば華やかだったでしょうに、コルビュジエはそのようにしませんでした。
ダイニングテーブルよりもちょっと高いぐらいまで腰壁を立ち上げ、窓の高さもせいぜい数十センチ程度。そこからレマン湖が切り取られるように見えます。

プロの建築家として設計の仕事をするようになって、この窓の高さが絶妙だったんだな、とジワジワ感じるようになりました。
晴れた日はもちろん、雨の日も、風の日も、居心地よく窓辺に寄り添いたくなる、ひとりでも安心感のある暮らし。
丸眼鏡に蝶ネクタイのいつものキザなコルビュジェが、母上の傍にやさしく寄り添っている写真があります。
「近代建築の理念にしたがったデザインだ」とコルビュジエは理屈っぽく説明するのでしょうが、実のところ、母への愛情に満ちた家だったんだなあと思います。

好きな住宅は?と聞かれて「コルビュジエの母の家です」なんて答えたら、学生さんみたいだねと笑われそうだから大きな声では言いませんが、やはり内心では、とても好きな住宅です。
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小休止。

2020-09-17 09:44:54 | 日々


施主からいただいたきれいなマスカット。
マスカットを受ける器は、陶芸家の施主がつくった作品。
器の置かれたテーブルは、長年のつきあいの家具職人によるもの。

目の前にあるものを見ながら、仕事を通して関わりのある方々の顔が思い浮かぶというのは、幸せなことだなあと思います。
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アンカーボルト

2020-09-13 22:22:10 | 経堂の家


東京・世田谷区で「経堂の家」が建築中です。
この日は構造の検査を行い、いよいよ大工さんの工事が本格化していきます。

写真に写っているトップライト(天窓)のあるスペースは屋外テラス。
大きな屋根が掛かっているのだけれども、庭に向けて開放され、さらに大きなトップライトがあるので、家の中のような外のような不思議なスペースです。
このスペースから庭を囲うように回廊が巡り、移動するのが楽しい家になりそうです。



この日の構造の検査で、特に印象に残ったのが、アンカーボルトと呼ばれる金物の、設置の精度の良さです。
アンカーボルトは柱をしっかりコンクリート基礎に留め付ける大事な構造金物ですが、ミリ単位で位置を調整しなければならず、思い通りピッタリの位置に施工するのは、意外に難しいものです。

工事監督さんに、このことについて水を向けたところ、「ええ、ちょっと時間があったので、全部メジャーで測ってセットし直しました。うまくいってヨカッタです。」とのこと。
ちょっと時間ができたと言っても、この作業をやっていたのは少し前の一番暑い時期。陰もない炎天下のもと、数十か所にもおよぶボルトを一本一本チェックしてくれていたのか、と思うと頭が下がります。
職人さんに図面を渡して任せておいても、大きな問題になることはありません。でも、時折ちょっと位置がズレる箇所も出てきてしまう。
それを厳密に位置合わせをすることは、家の構造として望ましいことは言うまでもありません。

さらに、ゲリラ豪雨でも雨が吹き込まないようにブルーシートをぐるっと張り込んでくれています。
写真が青く見えているのは、そのシートの色です。この暑い中で風が抜けないので、現場の環境は大変になりますが、送風機で熱がこもらないように注意しながらの現場作業が続いています。

丁寧な仕事は、一見 当たり前に見えるもの。それらをきちんと汲み取って、施主にも伝えていかなければ、と思いました。

ちなみに施工担当の工務店は、内田産業さんです。



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天井の抑揚

2020-09-08 22:19:57 | 上池台の家


「上池台の家」は、姉と弟それぞれのファミリーのための2世帯住宅です。身内がずっと暮らしてきた土地での建て替えにあたり、京都の出身のお姉さんは、でしゃばる佇まいにはしたくない、とのこと。
ちょっと坪庭とかあるといいな。
そして、庭木はなるべく残せるとありがたい。そんなご要望がありました。
うんうん、その感じはよくわかります。でも、土地の広さに対してそれなりに高密度の設計になることがわかっていただけに、建物の間取りには苦心しました。

1階は姉世帯で、和風の趣き。
2階は弟世帯で、ちょっと北欧のテイストに。
世帯それぞれにおもしろい特色が出ました。



2階は斜線制限により、部屋の端の天井高さがググーっと150センチぐらいまで抑えられています。
そこから天井は屋根のカタチなりに上がっていき3メートル超の高さまで上がります。
天井の高さに抑揚があると、なんとも不思議な楽しさが表れます。
その中に、木を活かした造作をしつらえました。
大工さんと建具屋さんとキッチン屋さんのコラボレーションで一体感のあるオリジナルキッチンができました。
タイルは施主がこだわったオーダータイル。ちょっとした面積であれば、費用的にもバランスがとれますね。



窓の外には大きなバルコニー。広がりを感じつつも囲まれた安心感があります。
小さなお子さんのいる暮らしの風景。おもちゃや人形にも囲まれて、幸せの絵ですね。
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