30年も前に、ぼくが父親の本棚のなかに見つけた一冊の写真集 田沼武能「カタルニア・ロマネスク」。
スペイン・カタルニア地方の山間の小さな村々を訪ね歩き、石造りの簡素で小さな礼拝堂とそのまわりに暮らす人々を撮った写真集です。
はっきりとした理由はわからないけれど、その世界観に惹かれて、ずっと手元に置いてきた写真集です。
その傍らに映っているのは、ぼくの設計した近作のポストカードです。
これまで多くの住宅を設計してきましたが、心のなかで常に問いかけているのは、「カタルニア・ロマネスク」の世界観にどれだけ近づけたか、ということ。
もちろん、現代の住宅をつくるのですから、材料や設備などを真似るわけではありません。
心の拠りどころになるような空間になったかどうか、ということ。
イメージの源泉としての写真集と、その延長にあるポストカード。このふたつの間には30年という時間が横たわっています。
この30年の間に、ぼくはどれだけ自分の思うところを理解し、磨いてこられただろう。
大切にしてきたことを、これからもじっくりと磨きながら歩んでいきたいと思います。
今年も、ブログにお付き合いいただきありがとうございました。
どうぞよいお年を。