建もの探訪

2013-02-15 20:27:37 | 東伏見のコートハウス

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先日、「東伏見のコートハウス」で、テレビ取材が行われました。番組名は「渡辺篤史の建もの探訪」。ご存じの方も多い番組だと思いますが、今年で放送23周年!だそうです。すごい長寿番組ですね。施主のTさんも、昔からよくこの番組をご覧になっていたとのこと。その番組に、自ら応募してくださいました。設計者としては嬉しい限りです。

僕の師匠の村田靖夫さんも、自邸をはじめ何度か番組に紹介されました。渡辺さんが番組中で「とっても好きな建築家」と言っていたのが印象的でした。自邸の紹介の回では、普段はコワ~イ村田さんがニコニコ笑顔で(ちょっと緊張気味だったかな)渡辺さんを案内していたのが、スタッフとしてはおもしろかったのですが、その番組に、弟子である僕が設計した家を紹介していただけるのは、冥利に尽きる思いです。

上の写真は、玄関ドアを開けると目に飛び込んでくる風景。オノ・デザインのホームページ等に掲載している写真とだいぶ印象が変わって、造園家が美しい雑木の庭に仕立ててくださいました。バードバスのオブジェは錆びた鉄でできています。庭に古びた落ち着きが加わりますね。コートハウスの中庭のデザインをどうするか、いろいろな楽しみ方があると思いますが、周囲を家々で囲まれた小さなコートハウスでは、中庭の「秘めやかさ」こそ、その本領を発揮するように思います。冬でありながらもしっとりした風情に、しばし見入りました。新緑の季節や梅雨の季節も、きっと独特の美しさがあるのでしょう。

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インテリアは、小さなお子さんが二人いるライフスタイルにあわせて、カラフルなテイスト。フラワーベースなども味わいのある質感のものを選ばれていました。カラフルな小さなオブジェたちが、高窓から入る朝日に照らされていて、独特の趣がありました。

放送はテレビ朝日で3月15日(金)朝4:30~です。(地域により変動があるそうです)ぜひご覧ください!

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東伏見のコートハウス.4 ~武蔵野の森と屋上テラス~

2011-10-16 16:34:59 | 東伏見のコートハウス

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2階のリビングに続く階段は、さらに上に続いていきます。踏み板だけでできた階段の隙間からは自然光が降りてきて、上に明るい空間があることを予感させてくれます。さらに階段をのぼっていくと・・・。

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この住宅には、屋上にもうひとつ、テラスをつくりました。腰壁をしっかり立ち上げて、周囲からの視線が気にならないようにして、空が印象的なテラスになりました。ゆったりとデッキを敷き、テーブルや椅子も置ける大きさにしました。木造住宅で屋上テラスをつくるには、防水をしっかりと用意周到に設計・施工をする必要がありますが、その価値は十分にあると思います。

周囲が建てこんでいるからこそ、このプライベートなテラスがとても新鮮で、中庭テラスとはまた異なる雰囲気が楽しめそうです。面積の小さな住宅だからこそ、屋外の空間が生き生きとすると、生活空間により一層の広がりが感じられますね。

屋上テラスからは、ところどころに武蔵野の林が望めます。かつては大きかった武蔵野の森も、この近辺ではとても少ないものとなりました。大学時代、池原義郎先生のレクチャーのなかで、所沢聖地霊園を設計されたときのエピソードについて触れられました。そこでは、武蔵野の森をいかに根源的なものとしてとらえるかを話され、ランドスケープと一体化した壁と、図像的な断片とをシークエンスのなかに織り上げながら、武蔵野の森が、無限の奥をもつもの、無限の広がりをもつものとして感じられるように設計されたお話がありました。心のなかに静かに広がる詩情をもって、空間とする。そんなイメージに、ぼくはとても感激しました。

この住宅の施工をしていただいたのは、所沢聖地霊園に程近い場所にある、井上建築工業さん。そんなところにも、不思議なご縁を感じずにはいられませんでした。工事中のいろいろなことを思い返しながら、上の写真のような夕暮れ時に、屋上テラスでビールを飲んだら美味そうだなあと思っていましたが、結局、いまだ叶わず・・・。

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東伏見のコートハウス.3 ~回廊~

2011-10-11 18:35:05 | 東伏見のコートハウス

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テラスの壁に映り込む、ヤマボウシの影。

・・・先日に続き、「東伏見のコートハウス」のお話です。

中庭を囲むようにして建つこの住宅は、2階部分にリビングなどの主生活ゾーンがあり、1階には個室や水回りが配されています。1階では、同じ中庭を囲みながらも2階とは異なる雰囲気の場所になりました。

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上の写真は、玄関の扉を開けて、最初に目に飛び込んでくる風景です。黒く塗装した木製サッシ越しに、テラスが中庭まで続きます。奥に見える出窓は、寝室にしつらえられたデスクのもの。まわりはぎっしりと家が建てこんでいるのですが、ここにいると隣家の気配が気になりません。中庭に向けて、うんと大きく窓を開き、廊下も洗面所も個室も、居心地の良いものになりました。

樹影の印象的な、陽だまりのあるテラス。屋根のあるテラスは、ティータイムだけでなく、ひとりで読書にふけるのにもちょうど良さそう・・・。

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黒い列柱が並ぶ中庭回りの廊下は、ロマネスク修道院の回廊のような趣がでるといいなあ、と思いながらデザインしました。やがて中庭に下草などの植栽がほどこされれば、雰囲気もまた変わりそうで、楽しみです。

実はこの住宅には、さらにもうひとつの表情があります。それは何かというと・・・また次回のブログでお話ししたいと思います!

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東伏見のコートハウス.2 ~かもめ食堂、のような。~

2011-10-03 17:55:41 | 東伏見のコートハウス

「東伏見のコートハウス」が竣工しました。震災後の資材流通の困難のなか始まった現場でしたが、当初の予定から遅れることなく、無事、竣工の日を迎えることができました。

引き渡しの日。穏やかな秋晴れの朝。まだまっさらで、しんと静まりかえった室内。

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天井の低く抑えられたリビングの向こう側の、ぐんと天井の高くなったダイニングの高窓から、柔らかい光が降りてきていました。まるで光に手ざわりがあるようで、キッチンの木やタイルやステンレスなどの素材を美しく浮かび上がらせてくれていました。

数年前、「かもめ食堂」という映画を観て、キッチンの後ろの高窓から北欧の柔らかい光が降り注いでいて、食材や料理が、どこか神々しく感じたのを覚えています。

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ここは北欧・・・ではなく東伏見。でもテーブルの上に吊るされるペンダントライトは北欧のルイス・ポールセン社によるもの。キッチンの後ろの高窓と合わせて、どこか「かもめ食堂」のイメージと重なります。高窓は東向きに開けられているので、家族そろっての朝食の時間が、素敵なものになりそうです。

ヤマボウシの木を囲むようにして建つ、延床面積約30坪の住宅。印象的な光と影に満ちた家となりました。その光景を、少しずつ紹介していきたいと思います。

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東伏見のコートハウス.1 ~終わりのない家~

2011-09-13 13:08:20 | 東伏見のコートハウス

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西東京で建てている住宅「東伏見のコートハウス」の工事が、いよいよ大詰めを迎えています。外部の足場も外され、窓の少ない、大きな左官塗の壁が姿を現しました。

この家は、中庭を中心に空間ができあがっています。光は中庭から室内に取り込まれます。中庭を通した柔らかく穏やかな雰囲気の光は、とても居心地のよいものになりました。

周囲の隣家に取り囲まれたような、約30坪の南北に細長い敷地。窓をどのように開けても、すぐ目の前に隣家の壁や窓にあたってしまいそうです。でも、コートハウス、つまり中庭型の住宅であれば、中庭越しに自分の家の窓が見えるおもしろさもありますし、隣家ともワンクッションおかれたような感じで、安心です。

この中庭、面積としてはさして広いわけではありません。でも、この家に住む家族のためだけの、秘めやかで愛らしい庭にしたいと思いました。大きな壁沿いの長いアプローチを通り、玄関を開けると・・・明るい中庭がパッと広がる。そんなイメージをもちました。家の外観は、そんなアプローチの雰囲気と植栽の背景になるように、極めてシンプルで秘めやかなものにしたいと思って形がきまっていきました。

工事中、これから塗ろうとするこの大きな壁面を目の当たりにし、左官屋さんは苦笑いを隠せない様子でしたが、下地処理から始まり、丁寧に塗ってくださいました。白く、静謐な壁。そんな雰囲気がでたことを、嬉しく思っています。

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この住宅では、中庭を中心としながらも不定形なプランになっていて、ポケットのようなコーナー、天井の高いダイニングなどがひと続きにつながっています。洗面室やバスルームも中庭に関係づけられ、大きな意味では、ひとつながりのワンルームの空間のなかに、いろいろなスペースがちりばめられている、というような家になりました。

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正面がどこなのか、よくわからない家。

内と外がつながったような家。

歩き回るのが楽しい家。

終わりがなく続いていく感じ。それは屋上へとつながり、テラスからは武蔵野の林につながっていきます。

市街地のなかの小さな敷地に建つ、このような住宅のあり方が「住環境」という言葉で表されるような、おおらかなものになるといいなあ、と思っています。

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