京都さんぽ 3 ~終バス、深泥池ゆき・・・~

2007-02-27 17:44:54 | 京都さんぽ

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京都市の北の方、碁盤の目が終わるところに、底なし沼があります。その名は深泥池。「みぞろがいけ」と呼びます。曲がりくねった道の向こう側に、華奢でたよりない柵越しに、その池は静かに広がっています。なんでも太古の時代からの植生が続いているとのこと。しかし、そのような学術的な価値とは無関係に、付近の小学生の間では、深泥池にまつわる「怖い話」の方がよっぽど興味の対象だったのです。

そのなかの話のひとつ。

夜、市バスの最終便は、行先表示板を真っ赤なライトで染めて走ります。書かれた表示は「深泥池ゆき」。そのバスに乗った人が、二度と帰ってこなかった、という話が多くあるというのです。

現在、実際には「深泥池ゆき」という便はないそうです。ですが、僕の記憶のなかのどこかに、たしかに見たように思うのです。赤く「目」を腫らした終バスが、池にむかって、ぬうっと現れるシーンを。観光で行かれた方は、ご自身の目でぜひ確かめてみてください。

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スケッチ!スケッチ!スケッチ!

2007-02-12 22:10:21 | 日々

設計やデザインを考えるときは、常日頃からスケッチを多く描くように心掛けています。その内容はいわゆるイメージ・スケッチから、電卓を片手に寸法を吟味する詳細なものまで多岐にわたりますが、おかげで机の上はすぐに紙でいっぱいになってしまいます。

写真のスケッチは、ある細長いアトリエ住居のもの。まだ計画の初期段階ですが、いずれこのブログやオノ・デザインのホームページで紹介していきたいと思います。

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京都さんぽ 2 ~比叡山のある風景~

2007-02-06 21:27:52 | 京都さんぽ

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京都と滋賀にまたがって、比叡山という山があります。京都市中からもいろいろな場所で、比叡山を望むことができます。僕の生まれ育った家からも、比叡山を眺めることができました。最初の写真は、かつて暮らした家の前からのシーンです。手間にすこし隠れた山が五山の送り火で有名な「妙法」の山、そしてその奥に見えるのが比叡山です。市中から距離の離れた比叡山は、青みがかったシルエットとして見えるのです。江戸時代、後水尾天皇は20年もの長きにわたって、比叡山の最も美しく見える場所を探し歩いたといいます。そして見つけたのが、北山のふもと、岩倉幡枝の地でした。そこに造営したのが円通寺。借景庭園で有名な小寺です。いくら美しいとはいえ、高校生ぐらいまでの時分にはまったく興味がなかったのも事実。すぐ脇を自転車で通りながらも、その塀と生け垣のなかに秘められた光景を、知る由もありませんでした。

大人になり、その価値がわかるようになって時折たずねるようになったときには、もう近隣のマンション開発が決定され、比叡山を望む借景はもう間もなく失われる、そういう時期でした。住職は低い声で滔々と語ります。「事が事であり続けようとするならば、共生という考え方が必要なのだろうけれども、なかなかそうもいかなくなってしまったのが、今のご時世というものです。物事を点として捉えるのではなく、線として、面として、捉えていきたいものです・・・」なるほど。類い希な個性、類い希な点が尊重されるのは、近代以降の考え方ですが、これからの時代には共生という概念を、もう一度よくかみしめる必要があるようにも思います。

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円通寺庭園の写真を撮ったときには薄雲が山周辺にかかり、比叡山は姿を隠してしまいました。この庭からの眺めは、住職いわく「一期一会」。いずれにしても、京都の街から、もうこの美しい光景が永遠に失われようとしています。大切にすべきことはなんだったのか。市の中心部からすこし距離を置いた北山の小寺に、大きな疑問符が横たわっているのです。

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