中庭を望む窓辺

2019-12-28 23:34:38 | M's ark


今年の最後に、川口市ですすめてきた住宅が完成しました。
完成といっても、まだ少し残りの工事もありますが、引っ越し前のつかの間、できあがった空間を独り占め(笑)

この住宅は駅近くの雑踏のなかに建ちます。すぐ傍を通る電車の音が時折ゴォーッと響き、隣のコンビニの空調機がうなり、放置自転車が丸見えで、ビル、ビル、ビル・・・。
「準工業地域」というなかなかハードな環境のなかに、喧噪から離れて落ち着いた室内をつくりたい、というのが設計当初からの考えでした。

そうしたできあがったリビングの空間。細長い敷地の真ん中に中庭をとり、このリビングは中庭に面しています。
大きな窓は北向きで、直射日光は入らないけれども、穏やかな自然光に満たされてとても明るくなりました。
壁沿いにはソファが置かれる予定。家族や来客で囲むのが楽しくなるように、窓辺にはベンチを造りつけました。
中庭に植栽が植えられ、窓から緑が見えるようになると、この空間はしっとりと落ち着いた雰囲気になりそうです。
街の中に、暮らしの傍に、すこしでも緑を。

タモ材のベンチや、カラマツの無垢フローリングのもつ木目や風合いが美しく浮かび上がるように、壁や天井はグレージュがかったトーンで塗装しました。
なにか特別なものをデザインしたいのではなくて、身のまわりにある物事に、趣きを感じられるような雰囲気をつくることが目的です。
日常が、じんわりと良いものになるように。

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紅葉の一日に

2019-12-23 22:46:41 | 富士の二つの家


晩秋の一日に、「富士のふたつの家」を訪れました。
家ができあがってから8年半、庭木も大きくなって家と一体となった雰囲気です。
秋に訪れたことがなかったので、紅葉を見るのはこの時が初めてでした。
住宅なのだけれども、ちょっとリゾートに来たような気分です(笑)

現場によく通い、隅々まで知っているはずの家だけれども、こうして何年も経つと、やはり自分の手から離れて、ずっと以前からそこにあったかのような雰囲気になってくれているのが、何より嬉しい。
家は、できた時がすべてではなく、ゆっくりゆっくりと時間を重ねていくもの。
当たり前のことだけれども、そんなことを実感できる家を丁寧につくっていきたいものです。

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ヒュッゲ

2019-12-19 18:28:20 | 日々


年末もいよいよ押しせまってきました。忙しくはあるのだけれど、その合間にコーヒーを飲んでほっと一息つく時間は、この時期ならではの、じんわりとほっこりする気分に満たされます。

デンマーク語に「ヒュッゲ Hygge」という言葉があるそうです。日本語に直訳する言葉はないそうですが、「居心地がよい空間」「ほっこりする時間」というようなニュアンスになるようです。
近年、国内外問わずにちょっとしたブームになったそうですが、この感覚は、何もデンマークに限定したものではないですし、流行りすたりのものではなく、古今東西を問わずにずっとあり続ける感覚だと思います。

僕の設計する住宅は「窓辺を楽しく!」がモットーになっているけれども、その正体は「窓辺 ✖ ヒュッゲ」というキーワードで言い表されるのかなと思っています。
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冬の色

2019-12-08 21:06:51 | 京都さんぽ


冬にしか表れない色があると思います。

写真は京都・桂離宮。
冬だけに訪れる独特の寂びた色合いを見ていると、心が静かになって落ち着いてきます。
北大路魯山人のいう「枯淡・無名色」というのは、こんな感じのことを指すのでしょうか。

塗料の色見本帳にはなかなか登場しがたい色ですが、もしあったとしても、ペンキ塗りで壁一面をごってり塗ってしまっては、このような枯淡な雰囲気は出ないのでしょう。
感覚というのは、難しいものです。
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リスボンの石ころ

2019-12-03 21:56:15 | 旅行記


もう10年以上前に旅行したリスボンの街。ノスタルジックな雰囲気の漂う街だったけれど、それからずいぶんと時間が経って、記憶のなかで明滅する風景を思い返すのも、またいいものです。
リスボンの道には、白い舗石が敷き詰められていて、それが踏まれて角が丸まって、とてもよい風合いを出しているのが印象的でした。

石がよく採れる風土。それだけでも羨ましいかぎりですが、それをぎっしりふんだんに敷き詰めて。
敷き詰めてあるだけだから、時折ポロっとはずれてしまったり。そんな場所があちこちにあって、そのたびに職人さんが直しています。
そんなふうにしてできている道は、アスファルト舗装とはまるで違う美しさを醸し出します。

道端に転がっていたそんなひとかけらの石ころを、おみやげに持って帰ってきました。
それを見ているだけで、遠い記憶がおぼろげに蘇ります。
たったひとつの断片から広がっていく世界。そういうのって、自由だなあ。

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