ゴダールの「軽蔑」

2022-12-10 23:58:08 | 映画


3年近く前にできあがった住宅「石神井の家」には、ちょっと不思議な窓辺スペースがあります。
2階のリビングの一番奥に、幅10センチほどの大きな窓枠に縁どられた出窓があり、向こうに見える梅園を額縁のように切り取っています。

この窓、実はイメージのもとになっているのは、イタリア・カプリ島にあるヴィラ・マラパルテの窓でした。
室内に散りばめられた、まさに額縁のような窓で、ジャン・リュック・ゴダールの映画「軽蔑」に印象的に画面に登場します。

以前、額縁のような窓の魅力を伝えたいがために、ある建て主に、「軽蔑」という映画に出てくる窓がいいんですよ~ とお話したことがありました。
実はこの映画、名作ではあるけれども少々官能的(いや芸術的?!)なので、あまり気軽に建て主にお薦めしにくいのですが、後日、「小野さん 観ましたよ~」と建て主に言われた時にはちょっと冷や汗をかきました(笑)
まあ、ゴダールの映画ですからね・・・

ジャン・リュック・ゴダール監督「軽蔑」   Jean-Luc Godard  LE MÉPRIS   ご興味のある方はぜひ。

ところで、ゴダールは今年9月に他界しました。
学生の頃には、彼の難解な映画に何度もチャレンジしたものでした。
一番好きな作品は「気狂いピエロ」

見つかった
何が?
永遠が

海をバックにしてランボーの詩が流れるラストシーンは、最高に美しくカッコいいと今も思います。


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

白い町で

2021-09-20 22:15:26 | 映画


ちょっと映画の話の続きを・・・
映画の楽しみ方は人それぞれですが、ぼくの場合は、ストーリーよりも映像の方に気持ちが向かいます。
ストーリーはなんだかそのうち忘れてしまうのだけれど(笑)、印象的な映像は、いつまでも記憶の奥底で明滅しているのです。

アラン・タネール監督「白い町で」は、ぼくにとってそんな作品でした。
なにかの本でたまたま知って、興味本位で観てみたマイナーな作品です。

ストーリーはもはや覚えていませんが(笑)、たしか、あてもなくリスボンの街にたどり着いた中年のオジサンが、8ミリカメラを片手にリスボンの街をさまよい歩くというもの。
その手ブレしながらの映像が、リスボンという街のもつメランコリックな雰囲気を引き出しているようでした。

リスボンの街を舞台にした映画はいろいろとあるのでしょうし、有名なところではヴィム・ベンダース監督「リスボン物語」など、キャストも豪華で映画としては上出来なのだと思います。
でも「白い町で」という映画のもつ寄る辺なさのような感覚は、不思議な余韻をもたらします。

象徴的であったり、暗示的であったり。
映像を見ながら、そんなことをふと感じさせる独特の映像美があります。

街を映し出した映像美という点では、ヴィム・ベンダース監督「ベルリン 天使の詩」は、統一前夜のベルリンの退廃的なムードを強烈に放っていて、これも記憶に残る映画です。
その主演はブルーノ・ガンツ。
この映画の何年も前に、「白い町で」で8ミリカメラを片手にリスボンをさまよい歩いた張本人です。

冒頭の写真は昔に、ガンツおじさんを見習ってリスボンの街を旅行しさまよい歩いたときのもの。
漠然と撮るだけでは、メランコリックにはならないものです。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

赤い風船

2009-10-04 20:03:12 | 映画

アルベール・ラモリス監督の映画「赤い風船」を観ました。
 1950年代のパリ。そのなかの一人の少年と、赤い風船をめぐる小さな物語。数世紀分の埃で真っ黒に汚れたパリの光景。暗く陰鬱でありながらなぜ、この街並みはたまらなく美しいのでしょう。そのなかを、赤色の風船が、ふわりふわりと舞っていきます。古く、動かないものの間を縫って、鮮やかで儚い風船が舞う様は、生けるものと死せるもの、というようなことについて、どこかしら暗示的であるようにも感じました。

 

この街のなかで物事を考える、物事をつくるというのは、独特の感情とともにあったのかもしれません。
 以前、古本屋でたまたま手に入れた哲学者・森有正の著作では、1950年代のパリに在住し、黒ずんだノートルダム寺院に思いをはせながら多くの死生観あふれる論考を残していました。
 僕のアトリエの室内に掛けてある岡本半三氏の1960年の「モンマルトル」と題された絵は、その筆遣いのなかにはっきりと、街が積み重ねてきた時間と陰鬱が塗り込められています。
よくは知らないのですが、その後、パリの街は大々的な「汚れ落とし」が行われたそうです。きれいさっぱり汚れを洗い流し、華やかさを取り戻したパリは、しかしながら、かけがえのない何かを失ってしまったのかもしれません。

091004


 映画「赤い風船」のラストでは、パリの空いっぱいに色とりどりの風船が飛び立ちます。それは「希望」のような感情として、観る僕たちの心にしっかりと届いてきます。日本でも見かける、風船のあの独特の色。なぜ風船がこのような色になったのか、この映画を観るとわかる気がします。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ペルセポリス

2008-02-04 15:12:36 | 映画

080204

やっと観に行きました!映画「ペルセポリス」。これはどうしても行きたかった。

物語の舞台は1970~90年代の混乱するイラン。パンフレットの言葉を借りると「ロックとユーモアとちょっぴりの反抗心を胸に少女から大人へ成長していく主人公マルジ。彼女の激動の半生と3代に渡る母娘の愛情」の物語。

全編を貫くモノクロームのアニメーション。実写ではなく、アニメーションだからこそ持ち得る強いメッセージ性に、心打たれました。

この物語は既に書籍としても発売され、世界中でベストセラーになっているそうです。原作のイラストは、どこかドイツ表現主義的な雰囲気をもっています。映画のアニメーションとは趣向が異なりますが、より彫刻的で重厚な感じ。

20世紀が終わる頃、終末的な気分でいろいろなことが語られ表現もされてきましたが、実質的には、新世紀が始まった現在の方が、より終末的な雰囲気に覆われつつあるように思います。未来に希望がもてるとは。自由。人間の尊厳。そんなことを、ペルセポリスを観ると考えさせられます。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

リスボン物語

2007-12-22 16:48:00 | 映画

友人から勧められて、ある映画を観ました。

リスボン物語。ヴィム・ヴェンダース監督による1995年の作品です。

主人公は、ドイツで活動する音楽技師。ポルトガル・リスボンにまで撮影に行った親友の映画監督から、仕事の手助けを求める便りが送られてきました。すぐには向かえなかったのですが、その間に親友は音信不通になってしまいます。主人公は彼を捜すべく、ひとり機材を車に積み込んで、遥か西のリスボンへ向かいます。西へ、西へ。ポルトガルに入る直前、彼の車は故障してしまいます。文明の利器を奪われたかのような象徴的なシーン。そうして未だ見ぬ西の世界へ主人公は入っていきます。その街、リスボンで彼が見たものとは・・・。

071222

ちょうど一年ほど前、僕がポルトガルを旅したときも、なにか特別の思い入れがありました。このブログでも旅行記を書きましたが、具体的に見たいものがあったわけではなく、ノスタルジーとして語られるその街の雰囲気に身をおいてみたかったのでした。この映画はそのときの気分を思い起こさせてくれました。映画というのは、具体的な映像を通して、何か別のことを暗示したりメッセージを残したり・・・。そうあるべきものだと僕は思っています。なにか失われたものの「気配」が満ちているリスボンという街は、巨匠ヴェンダースにもいろいろな想いをもたらしたでしょう。しかしポルトガルを舞台にした映画はこれまでほとんど見たことがないし、ポルトガルの映画作家も知りません。画家も知らないし、文筆家も詩人ペソアぐらいしか知りません。表現し難い街なのでしょうか。

年末年始にかけていろいろな映画が上映されますが、今、僕が観たいのは「ペルセポリス」。モノトーン基調のアニメーションだそうですが、独自の画風、時代性をはらんだストーリー、型にはまらない演出などと評されています。インターネットで紹介を見ると「オシャレ映画」なんていうコメント!がつけられちゃっていますが、ともかく、観てみよう。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする