白い町で

2021-09-20 22:15:26 | 映画


ちょっと映画の話の続きを・・・
映画の楽しみ方は人それぞれですが、ぼくの場合は、ストーリーよりも映像の方に気持ちが向かいます。
ストーリーはなんだかそのうち忘れてしまうのだけれど(笑)、印象的な映像は、いつまでも記憶の奥底で明滅しているのです。

アラン・タネール監督「白い町で」は、ぼくにとってそんな作品でした。
なにかの本でたまたま知って、興味本位で観てみたマイナーな作品です。

ストーリーはもはや覚えていませんが(笑)、たしか、あてもなくリスボンの街にたどり着いた中年のオジサンが、8ミリカメラを片手にリスボンの街をさまよい歩くというもの。
その手ブレしながらの映像が、リスボンという街のもつメランコリックな雰囲気を引き出しているようでした。

リスボンの街を舞台にした映画はいろいろとあるのでしょうし、有名なところではヴィム・ベンダース監督「リスボン物語」など、キャストも豪華で映画としては上出来なのだと思います。
でも「白い町で」という映画のもつ寄る辺なさのような感覚は、不思議な余韻をもたらします。

象徴的であったり、暗示的であったり。
映像を見ながら、そんなことをふと感じさせる独特の映像美があります。

街を映し出した映像美という点では、ヴィム・ベンダース監督「ベルリン 天使の詩」は、統一前夜のベルリンの退廃的なムードを強烈に放っていて、これも記憶に残る映画です。
その主演はブルーノ・ガンツ。
この映画の何年も前に、「白い町で」で8ミリカメラを片手にリスボンをさまよい歩いた張本人です。

冒頭の写真は昔に、ガンツおじさんを見習ってリスボンの街を旅行しさまよい歩いたときのもの。
漠然と撮るだけでは、メランコリックにはならないものです。

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赤い風船

2009-10-04 20:03:12 | 映画

アルベール・ラモリス監督の映画「赤い風船」を観ました。
 1950年代のパリ。そのなかの一人の少年と、赤い風船をめぐる小さな物語。数世紀分の埃で真っ黒に汚れたパリの光景。暗く陰鬱でありながらなぜ、この街並みはたまらなく美しいのでしょう。そのなかを、赤色の風船が、ふわりふわりと舞っていきます。古く、動かないものの間を縫って、鮮やかで儚い風船が舞う様は、生けるものと死せるもの、というようなことについて、どこかしら暗示的であるようにも感じました。

 

この街のなかで物事を考える、物事をつくるというのは、独特の感情とともにあったのかもしれません。
 以前、古本屋でたまたま手に入れた哲学者・森有正の著作では、1950年代のパリに在住し、黒ずんだノートルダム寺院に思いをはせながら多くの死生観あふれる論考を残していました。
 僕のアトリエの室内に掛けてある岡本半三氏の1960年の「モンマルトル」と題された絵は、その筆遣いのなかにはっきりと、街が積み重ねてきた時間と陰鬱が塗り込められています。
よくは知らないのですが、その後、パリの街は大々的な「汚れ落とし」が行われたそうです。きれいさっぱり汚れを洗い流し、華やかさを取り戻したパリは、しかしながら、かけがえのない何かを失ってしまったのかもしれません。

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 映画「赤い風船」のラストでは、パリの空いっぱいに色とりどりの風船が飛び立ちます。それは「希望」のような感情として、観る僕たちの心にしっかりと届いてきます。日本でも見かける、風船のあの独特の色。なぜ風船がこのような色になったのか、この映画を観るとわかる気がします。

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ペルセポリス

2008-02-04 15:12:36 | 映画

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やっと観に行きました!映画「ペルセポリス」。これはどうしても行きたかった。

物語の舞台は1970~90年代の混乱するイラン。パンフレットの言葉を借りると「ロックとユーモアとちょっぴりの反抗心を胸に少女から大人へ成長していく主人公マルジ。彼女の激動の半生と3代に渡る母娘の愛情」の物語。

全編を貫くモノクロームのアニメーション。実写ではなく、アニメーションだからこそ持ち得る強いメッセージ性に、心打たれました。

この物語は既に書籍としても発売され、世界中でベストセラーになっているそうです。原作のイラストは、どこかドイツ表現主義的な雰囲気をもっています。映画のアニメーションとは趣向が異なりますが、より彫刻的で重厚な感じ。

20世紀が終わる頃、終末的な気分でいろいろなことが語られ表現もされてきましたが、実質的には、新世紀が始まった現在の方が、より終末的な雰囲気に覆われつつあるように思います。未来に希望がもてるとは。自由。人間の尊厳。そんなことを、ペルセポリスを観ると考えさせられます。

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リスボン物語

2007-12-22 16:48:00 | 映画

友人から勧められて、ある映画を観ました。

リスボン物語。ヴィム・ヴェンダース監督による1995年の作品です。

主人公は、ドイツで活動する音楽技師。ポルトガル・リスボンにまで撮影に行った親友の映画監督から、仕事の手助けを求める便りが送られてきました。すぐには向かえなかったのですが、その間に親友は音信不通になってしまいます。主人公は彼を捜すべく、ひとり機材を車に積み込んで、遥か西のリスボンへ向かいます。西へ、西へ。ポルトガルに入る直前、彼の車は故障してしまいます。文明の利器を奪われたかのような象徴的なシーン。そうして未だ見ぬ西の世界へ主人公は入っていきます。その街、リスボンで彼が見たものとは・・・。

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ちょうど一年ほど前、僕がポルトガルを旅したときも、なにか特別の思い入れがありました。このブログでも旅行記を書きましたが、具体的に見たいものがあったわけではなく、ノスタルジーとして語られるその街の雰囲気に身をおいてみたかったのでした。この映画はそのときの気分を思い起こさせてくれました。映画というのは、具体的な映像を通して、何か別のことを暗示したりメッセージを残したり・・・。そうあるべきものだと僕は思っています。なにか失われたものの「気配」が満ちているリスボンという街は、巨匠ヴェンダースにもいろいろな想いをもたらしたでしょう。しかしポルトガルを舞台にした映画はこれまでほとんど見たことがないし、ポルトガルの映画作家も知りません。画家も知らないし、文筆家も詩人ペソアぐらいしか知りません。表現し難い街なのでしょうか。

年末年始にかけていろいろな映画が上映されますが、今、僕が観たいのは「ペルセポリス」。モノトーン基調のアニメーションだそうですが、独自の画風、時代性をはらんだストーリー、型にはまらない演出などと評されています。インターネットで紹介を見ると「オシャレ映画」なんていうコメント!がつけられちゃっていますが、ともかく、観てみよう。

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アンドレイ・タルコフスキーの眼

2007-01-14 19:03:16 | 映画

旧ソ連の映画監督アンドレイ・タルコフスキーの映画を、たまに観ることがあります。難解で宗教色も濃い彼の作品には、宗教美術がいくつか登場します。「アンドレイ・ルブリョフ」に登場するロシア・イコンの数々。「ノスタルジア」に登場するピエロ・デラ・フランチェスカの「出産の聖母」など。

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映画にも登場するそれらの美術品は、現在は美術館のなかで管理されています。美術品の劣化を防ぐという点では、空調・照明管理の整った場所で保管されるのが筋ですが、本来それらは教会や礼拝堂のなかに置かれたものでした。ロシア・イコンにしても、イタリアの片田舎で生涯を過ごしたピエロにしても、その作品が豪奢に飾られることはなく、簡素な礼拝堂のなかにおさめられ、人々の日常のなかに生きていました。アンドレイ・タルコフスキーは映画のなかで、それらの美術を本来の場所に戻しました。ほの暗く、足音がひびく空間。列柱の中を歩み進み、その奥にある一枚の絵に対面する。簡素な窓から絵に静かに光がなげかけられている。

ロシア・イコンにしても、ピエロの聖母にしても、その顔立ちや色だけを観ていると、なにか無表情で宇宙人のような、変な(失礼!)姿をしています。白く塗りたくられた明るい美術館のなかでは、あまり美術品に思いを馳せることができないなあ、とよく思います。ですがこれらの美術品を本来の場所に帰してあげると、きっと慈悲・慈愛の心を静かに物語ってくれるのだろうと思います。

個性など必要とされず、様式が定められていた時代の美術。それらは人々の生活にとって必要な感情を素直に表現した造形だったのでしょう。アンドレイ・タルコフスキーは、そんな時代の造形に光をあてました。個性以前のもの、個性を越えたもの。いろいろな分野で同様の価値は語られますが、僕はそんな美術・造形に憧れをもっています。難解で意味がわからなくとも繰り返しアンドレイ・タルコフスキーの映画を観てしまうのは、そんな憧れもあってのことなのかもしれません。

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