手描きのスケッチ

2021-04-01 22:48:15 | 住宅の仕事


一軒の家ができあがるまでに数多くのプロセスがありますが、そのなかでもとりわけ好きなことのひとつが、スケッチパースを描くこと。
つくろうとする空間の概略の設計図をもとに、コンピューターで3次元の簡易的な線画を描き起こし、あとは、エンピツやペンで手描き。
フルCGでリアルに空間イメージを描くのも当たり前になった時代に、我ながらなんとアナログなことか、と思うのですが、手描きで紙に向き合っている時間が僕にとって大事なのだから仕方がない。
まあ、たいして上手いわけではないのですが(笑)

描きながら、いろいろな想いが頭のなかを去来します。

施主の言った何気ない一言。
最近気に入っている音楽。
昔に旅行で訪れた遠い街の記憶。
幼少期の思い出。
祖父の家でみた鈍く光る古いドアノブの手触り。
そしてまた施主の表情。

集中して描いているようでありながら、ふわりふわりといろいろなイメージが浮かんでは消えていきます。
ヴァルター・ベンヤミンの随想のように、脈略のないようなものがすぅっと合わさってきておぼろげながら図像を結び、あ、これでいいんだ、と思えるようになるまで描いては消し、消しては描いて、徐々に1枚のイメージ画ができあがっていきます。
そんな時間が好きなのです。

家の設計は、つくづく正解の無い世界。



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茶室の流儀

2021-02-09 23:23:34 | 住宅の仕事


最近、茶室のある住宅の設計のご依頼をいただき、茶室の事例を見返しながら、設計の準備をしています。

茶道には流派がありますから、流派ごとに茶室の造り方も特徴が表れます。
特に、細かな金物の取り付け方、向きや位置などに流派ごとの決まり事があって、それを間違えると大変です。
茶室は素材をそのまま現しにした仕上げ方が多いので、間違えるとやり直しが効かないのです。
だから資料を見ながら、よくよく確認をしながら進めていきます。

表千家と裏千家とでは、同じ金物でも上下がさかさまになる、というような。罠にはまったような気分ですね(笑)
でも、そんなふうにして細部によく目を凝らして見るようになるので、細かなものの存在に次第に愛着がわいてくるようになります。
襖の引手ひとつを選ぶことに、楽しみもでてきます。
上の写真は「東山の家」のもの。
抑制された光のなかで見る事物は、それだけで独特の存在感をもちます。

決まり事が多いようでいて、実は自由であるのも茶室の特徴。
何軒か茶室を設計してきましたが、裏千家 又隠席を参照した設計もあれば、コンクリート打放しの茶室もありました。
さて、今回はどんな茶室になっていくのか・・・。

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大ガラスの和室

2020-12-18 21:52:14 | 住宅の仕事


今日は荻窪のM邸へ。
ぼくが村田先生のもとで担当した住宅で、できあがってから20年近くになります。
師の亡き後、この住宅のメンテナンスは僕が担当しています。
今回は、西日の強い窓の遮熱を考慮したカーテン類の打ち合わせでした。

このようにして時々訪問すると、住宅が経年でどのように変化していくのかを感じ取ることにもなり、貴重な機会でもあります。
同時に、まだ担当スタッフだった当時のぼくの至らなさがじわじわと思い起こされ、気恥ずかしい気持ちにもなります(笑)

写真は、一番奥にある和室。坪庭に面して大きなガラス窓があり、障子には樹影が印象的に映り込みます。
造作の要素を抑えた和室で、ぐっと落ち着いた雰囲気。

先生のプロポーション感覚を見るたび、はっとさせられます。





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模型のスタディ

2020-10-09 21:57:19 | 住宅の仕事


住宅の設計が始まると、いくつもの模型を作りながら、あれこれとカタチを考えます。
屋根のかけ方や傾きが変わるだけでも、まったく違う雰囲気になるから不思議なものです。

模型用の白い厚紙を使って作るのですが、白いシンプルな表情を思い浮かべているわけではありません。
模型をいじりながら脳裏に明滅するのは、壁の素材感であったり、そこに映り込む樹木の影であったり、足元に咲く草花であったり。室内に入りこんでくる光であったり。
昨晩、「世界はほしいモノにあふれてる」で見たようなチーズをこのダイニングで食べたら美味しいだろうか、とか。

実のところ、家のデザインといいながら、独創的な姿カタチを追い求めているわけではありません。
模型を覗きながら、その場に求めたい風情を徐々にイメージの中でつかんでいきます。

そのようにしてできあがった家を写真に撮るときには、家全体の姿を雄々しく撮るのではなく、ついつい いま目の前にあるシーンを慈しむようにしながらファインダーを覗いてしまいます。

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受け継がれるもの

2020-06-29 21:53:14 | 住宅の仕事


ぼくが師・村田靖夫の設計アトリエで最初に担当した18年前の住宅。経年で劣化したところを直し、また元気な姿になりました。
家守りのお役目は、設計した村田さんからスタッフだった僕のところに。
施工は、当時の監督さんが引退し、その後輩監督へ引き継がれています。



テレビ台はもともと設計したものではなかったけれども、ナラの無垢材でできたしっかりした造り。
ただ精緻な造作のため、扉の開けたても硬くなっていました。
そこで現在の使い方に合わせて、スライド棚を増設し、動かなくなった引戸を撤去して開き戸をつけなおしました。
色合わせをして、また新たな家具として生まれ変わりました。



玄関ホールの写真。ここの眺めは、いつまで経っても古びることなく、いつ見ても静かな雰囲気です。
18年経って、変わるところがあり、変わらないところもあります。
そんなところが、家の「奥行き」というものになっていくのだと思います。
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