古い木々と

2016-01-30 17:54:10 | 白楽の家


前回のブログの続きで、「白楽の家」のお話です。
「白楽の家」は古い既存家屋の建て替えでした。もともとは平屋で瓦屋根の載った家でした。こじんまりとしながらも風格のある、丁寧につくられたことのわかる家でした。
庭には古い木々が多く残り、それらをぜひ残そうということになったのです。

和風の木々。縁側に座って眺めるように植えられたそれらの木々も、いつしか目の前を洗濯物が遮るようになり・・・。生活との一体感は乏しくなっているように感じられました。
そこで、せっかく残すのだから、なるべく古い木々が存在感たっぷりになるようにしたいと思ったのです。

新しい住まいでの庭いじりをとても楽しみにされているお父様のために、庭いじりの合間に息をつける、心地よい場所をつくりたいと思いました。

土足のまま上がり、ゆっくり腰をおろして一服できる場所。
屋根がかかって雨や日差しをよけれる場所。

そんな場所があるから、ゆっくりと庭いじりが楽しめるのだと思います。



庭の風景をきれいに切り取り、また、木陰が暗示的に映り込むように、壁の配置の仕方には気を配りました。
この壁は、僕の亡師・村田靖夫が好んだ色。村田さんが長年の住宅設計のなかで見つけた、緑の背景としてもっとも似合う色。
一見どうということのない色なのですが、飽きることのない調和。 
これまで僕も、いくつかの住宅で採り入れてきましたが、この家でも古い庭木の背景として、居心地の良い場所を縁取ってくれています。

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コンクリートのWC

2016-01-18 23:47:05 | 白楽の家


前回のブログでトイレの話を取り上げましたが、ちょっとそのつながりで・・・。

上の写真は、昨年末に竣工した「白楽の家」のトイレ。その壁面は、なんとコンクリート打ち放し仕上げなのです。
この家は、鉄筋コンクリートと木造が、同じ階で混構造になっているという、実はとても特殊な工法で造られています。
ですので、木造の家の中を歩いているつもりが、コンクリートの壁に不意に出会う場面がいくつかあるのです。

トイレの壁面をコンクリート仕上げにしたい、というのは、もともとは施主の希望でした。
水回りでコンクリート仕上げというのも、僕自身もこれまで経験がなかったのですが、でもそれは面白そうだとやってみることになったのです。

「このトイレ、なんか落ち着くんですよね。」そんな風に最初に教えてくれたのは、工事監督からでした。
徐々に内装が仕上がってくるなかで、こじんまりとしつつも異彩を放つこのスペースは、扉を閉めると、たしかに、なんだか妙に落ち着きます。
一人きりの空間のなかで、コンクリートは存在感たっぷりです。
大学でコンクリートを専門に研究し、コンクリートと格闘してきた、施主であり友人のO君にとっては、一番、「自分の城」を感じる瞬間なのかもしれません。
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ふたつの窓

2016-01-10 23:05:27 | アート・デザイン・建築


明けましておめでとうございます。本年もこのブログによろしくお付き合いくださいますようお願いいたします。
さて、新年初のブログは、ふたつの窓のイメージカットから。
どちらも京都にある駒井家住宅の窓です。

上の窓は玄関ホールに開けられた窓。
下の窓は、新年早々なんですが・・・トイレの窓。なんだか、ロマネスクの礼拝堂のなかみたいに神々しいですね(笑)。


玄関ホールの窓は、濃い色の窓枠が額縁のようになって、向こう側に見える緑を鮮やかに切り取って見せる趣向。
不思議なもので、緑の気配は、目線をすっと引きつけます。
小ぶりな窓であるのがちょうどいいんです。

トイレの窓は、壁の色と合わせて窓枠は白く清潔に。擦りガラス越しに、外の緑がぼんやりと透けて見えます。葉が風に吹かれてさらさらと優しく鳴ります。
トイレの中の、静かな時間。
一見あっさりしたようなデザインなのだけれど、窓の大きさや色味、緑の位置関係などがうまく揃わないと、そんな静けさをもたらす効果は出ないのです。
実は、とても戦略的なデザイン!?

独立して設計事務所を構えてから10年を超えました。僕自身の心の奥底でいいなあと感じるものを、設計を通してお施主さまと共有しながら、ひとつひとつ丁寧に家をつくっていくことを、大切にしたいと思います。
もう何年も前に撮ったこの2枚の写真も、僕にとって心の奥底に大切にしまってあるシーンです。
そんなエッセンスを、仕事のなかにも取り入れていきたいと思います。



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